揚げ物のコツ

 
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和食の揚げ物

揚げ物の種類

揚げ物は大きく分けて三種類
素揚げ 何もつけないでそのまま揚げる
から揚げ 粉をまぶして揚げる
衣揚げ 衣をつけて揚げる

基本の天ぷら衣

薄力粉200グラム  水360ml 卵黄1個
すべて冷蔵庫で冷やしておき、水に卵黄を入れ、振るった粉を加え荒く混ぜる。 薄い衣は粉を180グラムに減らす。

基本の天つゆ

出汁4 味醂1 濃口醤油1
熱すぎても冷たくても良くないので、人肌くらの温度で使用する。

揚げたての天ぷらは塩がよく合います。
塩3 旨味調味料1をすり鉢で当たり、振るった「旨塩」や、岩塩をおろし金ですりおろしたもの等を少量つけて食べます。

旨味塩に抹茶を加えた抹茶塩

揚げ方のコツ

揚げ方ポイント

衣を使わない「素揚げ」と、「衣揚げ」の二種がありますが、油で揚げるだけの単純な揚物料理を難しくする原因は次の三つ。

【1】 材料を知らず、適した下処理が出来ていない
【2】 衣の知識が十分でない
【3】 油の性質を理解していない

つまり、これが全部逆転すれば揚げ物は簡単になるという事です。

【1】ですが、それぞれの食材で仕方も多少違いますけれど、【余分な水分を抜いておく】【急激な温度変化で変形しない工夫をしておく】この二つが基本です。
(イカなら切り目を、エビなら伸ばしておく等)
(シシトウ等空気を含むものはパンクしますので串等で穴を)

【2】は天ぷらが代表ですが、空揚げ、変わり揚げなども衣を使用します。 天ぷらですと、衣を重くする原因は小麦粉のグルテンでして、これが少ない薄力粉を使いますけど、かき混ぜが過ぎたり、温度が高いと粘りがでて重くなる性質は同じで、粉も卵も水も冷やしておくとこれを回避できます。同じ理由で、揚げる直前に衣を作るのが理想です。

新鮮な材料(活エビや新鮮な白身)は短時間で揚げて火の通りを押さえたいので、衣を薄めに(粉を減らす)し、逆に冷凍品や鮮度が落ちているものは衣を厚くします。シソの葉やノリなど薄い材料は、片側だけに薄く衣をして揚げると曲がったりしません。

衣は小麦粉、片栗粉、葛、上新粉など色々ですが、さっくり揚がるけどコゲやすいのが小麦粉でして、長時間じっくり加熱するには片栗粉などを使用します。

【3】は油の温度を一定に保つのは意外と難しいという事です。
魚介類は火が通りやすいので、170~180度の温度で手早く揚げるのが基本ですが、冷凍したコロッケなどをパンクさせずに揚げるには160度くらいの低温でじっくり揚げないといけません。揚げ温度はその料理を左右する大事な要素だという事です。 厚い揚げ鍋で・たっぷりの油で・材料を油表面の三分の一以上入れたりしないで温度を一定に保つのが大事なポイントになります。

酸化した油は揚げ物にも適さなくなるし、身体にも良くありませんので、使用した油は熱いうちに漉して、光と空気を遮断して保存します。漉すときに鍋底に残る油は捨てましょう。数回使用した油は、光にかざして透明度を見るか、臭いをかいでみて、変質してる様なら処分しましょう。

油の種類は多数ありますが、動物系と植物系に分けられます。
こってりとした揚げ物は動物系が合うし、あっさり仕上げる場合は植物系。野菜なら植物系、肉なら動物系が相性が良いですが、それほど拘る必要はないでしょう。大事なのは新鮮さです。ちなみに天ぷら油の最高峰は太白の胡麻油だと考える職人が多い様です。

材料が新鮮なら短時間で仕上げる。
冷凍などは時間をかけて火を芯まで通す。

酒、味醂、醤油で下味をつけて揚げる【竜田揚げ】(たつたあげ・くずあげ)も、【唐揚げ】も、揚げる基本は同じ事です。注意点は、粉が散って油が汚れないように、また粉が焦げない様に、粉は薄くつけてしばらくなじませて、揚げる温度は低めの160度でじっくり揚げ、取り出す直前180度に上げてカラリとさせます。

揚げ物の粉と衣

小麦粉
揚げ物に適するのはグルテンの少ない薄力粉
片栗粉
唐揚げに。カタクリから作られる本物は稀。ほぼ馬鈴薯澱粉
上新粉
唐揚げに。うるち米の粉を粉砕・乾燥させたもの
新挽粉
新挽揚げに。蒸しもち米を乾燥して砕いたもの
道明寺粉
変わり衣に。蒸しもち米を干して挽いたもの

衣揚げの衣の種類

天ぷら衣
水・卵(又は卵黄)・小麦粉で作る
白扇衣
水溶き片栗粉と泡立て卵白を合わせる
うに衣
卵黄5個、塩ウニ大さじ5を当たって漉し、衣に
挽茶衣
天ぷら衣に挽き茶を混ぜたもの

●天ぷら衣以外の衣で揚げる揚げ物は【変わり揚げ】

揚げ物の油

材料のコクを出す場合、動物性のラード(豚脂)やヘット(牛脂)、あるいはギー(山羊乳又はパーム油)を料理に使うことがありますが、和食の場合はほぼ100%植物性の油を使用します。
(常温で固形のものが「脂」で液体のものが「油」)

食用油は大別すると三種。乾性油、半乾性油、不乾性油(※1)
このうち揚げ物に最適なのは半乾性油です。

★半乾性油

常温で流動性が低下するが固まることはない。オレイン酸、リノール酸が主体。サラダ油の原料でもある。

ごま油
醤油との相性が良い。中華で多用、和食にも使う。
コーン油
安定した風味で酸化が遅い。幅広く使う。
綿実油
風味が良く、高級なサラダ油やマヨネーズの原料になる。
大豆油
特有のコクと旨味がある。多くは他と調合される。

白絞油
昔から料理屋で愛用されているのが白絞油(しらしめゆ)。
「これが一番良い」という板前が多いです。
白絞油という名称は商品名で、菜種油を精製したもの。
加熱調理に良く天ぷら油にも使われますが、低温で濁る欠点が。これは菜種油特有の性質によるもの。今は半乾性油の大豆油や綿実油を使ったりもしているようです。

サラダ油
色々な植物油を調合し、精製度が高い。
それぞれの欠点を解消しているため万能に使える。
加熱から生食までオールマイティ。

天ぷら油
サラダ油とごま油をブレンドしてあるもの。
割合は5:5、6:4、7:3などが多い。

※太白胡麻油
生のゴマを搾っただけの油で、天ぷらにはこれだけ使うという職人も。焙煎した「純正ごま油」と違い、色も香りも薄い。しかし加熱すると香りが出てくるので天ぷらに良いとされます。

和食の揚げ物に向く性質は【淡泊】であること。
これに油切れがよい、酸化しにくいという条件が加わります。すると、【菜種油の白絞油】【太白のごま油】【精製度の高いサラダ油】 この三種が良いという事になります。

参考
★乾性油
リノレン酸、リノール酸が主体。
「脂」のように空気中で完全に固まる。
紅花油、向日葵油、亜麻仁油、芥子油、胡桃油、紫蘇油、カヤ油など
食用の他、工業用や油絵具などにも。

★不乾性油
オレイン酸が多い。常温で固まらない
オリーブ油、椿油、落花生油、椰子油、菜種油など

※1
乾性油、半乾性油、不乾性油の分類は不飽和脂肪酸のヨウ素価で決まります。ヨウ素価が100以下のものが不乾性油、100から130のものが半乾性油、130以上が乾性油