魚の皮を上手に引く(3)金目鯛と黒むつ

  

クロムツとキンメの銀皮を出す

きれいに皮が引けたキンメの刺身

魚の脂のノリ具合と皮引きには関係があります。

あぶらのノリきった旬の魚の皮は引きやすく、その逆は引きにくい。

難しい理屈はおいときまして、簡単にいえば「オイルがないと潤滑を失くす」です。

最近は養殖魚がメインになってまして、ハマチ・カンパチ・シマアジなどはいつが旬なのか分からないくらいの有様ですが、こうした魚は和食系飲食店には不可欠ですから、仕方がないのかも知れません。今は天然魚が枯渇・高騰しているので、メインのアジ系は年中安定価格で流通してないと、売る魚に困りますからね。

でも脂の加減が季節によってハッキリと違ってくるのはやはり天然魚。

なかでも触れる機会がわりと多いのは金目鯛と黒ムツ。

この二種は脂のない時期と、脂がのる時期がはっきりしています。で、脂がなくパサパサの時期は皮がうまく引けなくなります。

旬になると、皮と身の間に包丁を入れますと滑るように包丁が走るのですよ。

皮引きが簡単になるんですね。



クロムツの銀皮

ところが魚は「四季変化」、一筋縄じゃいきません。

個体によって皮の厚いのもいれば、薄いのもいるし、ちょっとした時期のズレで変化しちゃう。

こないだと同じってことにゃまずなりません。それが顕著なのが、この黒ムツ。

のどぐろ(赤ムツ)や、ムツ(睦)とは別の魚です。

同系の魚「アカムツ(のどぐろ)」の銀皮

冬になると脂がのって大変美味しくなる魚ですけどね、はしりの時期っていうか、秋口ですと、まだあまり脂がのってない。

なんとなく「脂がのる一歩手前」という雰囲気です

板前から見たこの魚の特徴は、皮が引き難いってことです。

いや、皮を引くのは造作ないんですが、「銀をつけて引く」のが難しいのですよ。

皮が弱くて薄い、だから途中で切れたりもします、そのうえ脂が充分のっていないとなると、包丁が走りません。「痩せた魚は皮が引けない」って言葉もあります。

まだ脂がのっていない黒ムツ

いかにも脂がないって感じですな。

これ以上ない、そんくらい注意を払って丁寧に引いても、

多少銀皮残ってますが、マダラができてしまう。

こいつは殊更おいらの腕がお粗末って事でもないんです(?)
まだ脂のないクロムツは、これが限界なんですわ。

これが真冬になると、同じやり方で、マダラなく引けます。包丁が脂に乗るように走り、マダラなくキレイに銀が出るんですよ。

『皮目に脂が宿る』その証左みたいな魚なんです。

脂がのると、クロムツの刺身はかなり旨いんですよ。

キンメダイの銀皮

クロムツほどじゃありませんが、同じく脂の加減で皮引きに差の出る魚が金目鯛。

キンメも旬から外れると脂がなくなるんです。一般的にはいつ食べても身の方には脂があると感じるかも知れませんが、皮目を見ると一目瞭然なんです。

ツヤがない。つまり脂がないんですね。旬になると銀皮も美しくなるんですよキンメは。

これは銀がまったく残っていない例。

これじゃもう刺身ではお客に出せません。最低です。

キンメの皮は薄く、クロムツ同様かなり注意が必要ですが、庖丁をきかせれば下の通りです。

銀を残して皮を引いたキンメの身

金目も他の魚と同じく皮とキワが旨い魚。

鯛と似た綺麗な皮なので、皮付きで刺身にするケースが多いですが、繊細な食感を味わえるのは、皮を引いた金目。

いくら皮霜にしてもゴワゴワ感は残りますが、銀皮だと「身と脂が口に中でとろけるような感じ」を堪能できるのです。

キンメの皮付き刺身

「冬のキンメはトウトウ目(銀皮)を食う」とも言いまして、トロリとした脂を堪能するなら皮付きは避けた方がよい場合があります。

銀皮を付けたキンメの刺身

銀皮を付けて引くには経験しかありませんが、コツは存在します。

銀を付けて皮を引くコツ

銀皮出しの成否は、最初に端を庖丁でめくる時に決まります。包丁を入れる層を間違えると銀など出ません。

これは銀を付けるのがかなり困難なキンメダイですが、こうして庖丁を入れる時点で最外側の薄皮(1層目)を庖丁の刃を立てて選り分けておくのです。

包丁の位置を決めたら、まな板を梳き切ってしまうくらいの力で包丁を押さえ、そのまま引き手をきかせて引き切ること。

成功すると綺麗に銀を残して引けますよ。

外皮は薄くて切れやすいですから注意しましよう。

かなりの力と集中が必要ですので気をつけて。

蛇足かも知れませんが、手入れのなっていない庖丁(切れない庖丁)と凹んだまな板ですと、まず絶対に失敗いたします。

引く手に意識を集中する
まな板を削ってしまう勢いの力と、つかんだ皮を万力で挟んだように固定する力。この二点に気を配れば必ず出来るになるでしょう。下の記事も読んでおいてください。

失敗しない魚の皮引き
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著者:手前板前 魚山人