カツオのさばき方、おろし方

  

鰹を捌いておろす

カツオのサバキ

カツオの特徴は、独特の硬いウロコ柔らかく割れやすい脆い身で、この特徴が同時にカツオをさばく時の注意点になります。

鰹ウロコの特徴

カツオの鱗は独特で、尾鰭を除く各鰭の周囲に付いています。
(カツオのウロコはここに集中しています)
頭側ほど堅くて分厚く、後方(尾の側)に行くにつれて薄くなり消える。そういう構造のウロコです。

カツオの鱗

大雑把に図形の中あたりが鰹の鱗がある箇所です。ここは色が暗色になっているため、体側の色彩濃淡で分かります。白銀の部分にはウロコはありません。

このウロコは非常に堅く、容易に包丁さえたちません。
また、強引に包丁を入れると柔らかい鰹の身をグズグズにしてしまいます。

鰹は最高速度時速100キロを超える高速で泳ぎますから、完璧に近い抵抗の少ない紡錘形の魚体です。潜水艦のモデルのような形ですね。

超高速で飛び、分厚い装甲を貫く完全被甲弾(フルメタルジャケット弾)は空気抵抗を低減させる流線型と丈夫な金属皮膜が特徴ですけども、カツオのウロコはこのフルメタルジャケットを連想させます。

水の抵抗をかわし砲弾のように前進するため、このように進行方向側が厚く後方が薄い頑丈なウロコに。

自ずとウロコも高速遊泳に最適化したのでしょう。
首の付根から胸鰭の周囲、いわゆる「カマ」の部分ですが、鰹の場合この箇所にウロコが集中し、まるで鎧のように硬くなっています。そのかわりここ以外の場所にウロコはありません。この部分とあとは背びれ付根、この二箇所だけです。

高速で泳ぎっぱなしのカツオならではの進化によって、このような独特の鱗になったのかも知れませんね。どちらかと言えば身の柔らかなカツオが「堅い魚」と漢字表記されるのは、このウロコが由来だと思われます。(※硬いカツオ節が作られるようになる前からカツオは堅魚と呼ばれています)

※ちなみに、科が同じであるマグロもやはり高速で泳ぐからか、同じ場所のウロコが堅くなっています(マグロの場合、ここだけではなく全面にウロコがありますが)
まぐろのウロコ
めじまぐろ

カツオのサバキは、まず堅牢なウロコを削り取る事から始めます。その堅牢さときたら、出刃包丁でも切れない程の硬さです。したがって、鰹サバキは包丁を寝かせウロコを避けるように頭を落とすことから始めます。

では鰹のさばき方を詳しく見てみましょう。



カツオのさばき方

まずは鰹を「水洗い」します。
※魚の「水洗い」は、ウロコ・頭・エラ・内蔵などを除去して血や汚れを洗い流すまでの作業を意味します

さばき方① ウロコと頭を除去

ウロコを削り外す

最初に鱗をすき取りましょう。
非常に堅い鱗であり、包丁が立ちませんので、包丁を寝かせて梳くように使い、巧くすき取ります。ちなみこれを「残り鱗」と呼ぶことがあります。

こうして包丁を倒し、ウロコの下に刃を入れて削ぐ

背ヒレ付け根周囲の特に硬い部分は、後ほど背ビレを外す時に除去しますので、残しておいてかまいません。

このとき尾を持ち上げて逆さ包丁で外引きにするとやりやすく、そうやっている人も多いのですが、身割れの原因になりますので、まな板に置いて包丁した方がよいです。

頭を何度も右や左に動かすことなく、頭の位置を左に向けたまま固定して行うやり方ですね。

頭を落とす

頭の付け根あたりにきたら包丁を立てて首を切断するようにします
(切れ込みを入れるだけで切り離さない)

胸ヒレの手前の硬いウロコを剥がし取る感じで包丁を梳き入れる

カマに達したら包丁を起こし、中骨まで切り込む

腹を上に向け、腹ヒレ下も上と同じようにして切り込む

そのまま向こうへ倒し、裏側も同様に

先ほど中央の太い骨まで達した部分とピタリ合う箇所を狙い、力を入れて骨を断ち切る

これで頭が取れました。

次はワタを出します。

内蔵を出す

腹の中央を直線に切り


内蔵を除去します

血合いを洗い流す

包丁先で血合いに切り込みを入れ


その切り込みに水道水を当てるようにして血合いを洗い流す


ササラが無い場合は上のように歯ブラシなどを使うといいでしょう

血合いの掃除は省略してかまいません
構いませんというか、この段階では血合いの掃除をしない方がよいでしょう。そもそも鰹の血合いはマグロと似ていて、身に深く食い込んでいるものです。したがって上のやり方で血合いを全て洗い流すことはできない。ここで紹介したのは、「基本」であり、「信じ難いほど新鮮な鰹」であれば、血合いを洗っても身割れはしないからです。
鮮度がイマイチの鰹をさばいた経験がある方は分かると思いますが、血合いに包丁目を入れただけで「身割れの危険性が高まる」のです(既に割れている場合もご同様)
これに水をかけつつ腹を開いてササラでゴシゴシやってますと、ほぼ確実に身が傷みます。それほどまでに鰹の身は脆く割れやすいということ。

マグロのように【節にしてから血合いを取ればいい】のですよ。
ですから、腹血合いに包丁を入れないで、内臓を出した際の血液・粘膜などを軽く洗い流すだけにしておきましょう(つまり血合いを残しておく)

水洗い終了です。
水気を拭きとってオロシにかかりましょう。

カツオのおろし方

鰹の節

カツオの五枚おろし(節おろし)

小さなカツオなら普通の三枚おろしでもいいんですが、基本的にカツオの身は大変脆くて「身割れ」しやすいので、できるだけ丁寧に「節おろし」にした方が良いでしょう。

「節おろし」とは五枚おろしのことで、ようするにマグロやヒラメのおろし方と同じですが、カツオの場合は片身の上下を「背節」「腹節」と呼びますので、「節おろし」とも言われるのです。

①まず背ヒレを外します

取り切れなかった背のウロコを削ぎ取る

イメージとしては「鉛筆削り」のような感じです。シャカシャカと残った硬いウロコを削いでやります。

これで包丁が入る場所が確保出来ました。邪魔な背びれを取りましょう。

ヒレの両側にV字になるよう切れ込みを入れます。ヒレ付け根に達するほど深く切り込まないとヒレが外れませんので注意。

 

 

ヒレを包丁で押さえ、カツオを動かすと背ヒレが外れます

※V字型に深く包丁が入っているのが分かりますでしょうか。このように深く切れ目をしておかないと、背びれは外せません。切り込みが浅いと「力ずく」になってしまい、すると柔い鰹の身が割れしまうのです。

この作業は、本来であれば上の「水洗い」の過程で行うのですが、上記にように身に達する深い切れ込みがは入りますので、水洗いの後が良いのです。この状態で洗うと切り目から水が入って身が濡れますので。

②五枚におろす

(1)

下身を上に向け(頭を右)、まず腹側に切り込みを入れる

(2)

中央に真っ直ぐ切り込みを入れる。骨に達するほど深く

※節を切り離しやすくする為、あらかじめ尾の方を切り込んでおいてもいいでしょう

(3)

腹を開き、(1)(2)の切り込みを包丁先で確認しながら腹の節を切り離しましょう


背と腹の中央線に垂直包丁を入れると節が取れます

(4)

そのまま背の節も切り出す
包丁先を使い、背の下の中骨に沿わせるようにしながら切り離す

(5)

片身がおろせました

(6)

反対側の身も同じ要領で2本の節にする

(7)

節にしたら腹節に残った腹骨をすき取ります。
(三枚の場合は片身の状態で腹骨を取る)

(8)

節の完成です。

これを刺身なりタタキにするのですが、カツオが非常に大きい場合は節も大きくなりすぎてそのまま切りつけると刺身がバカでかくなます。適度なサイズにするため大節を冊に切り分けましょう。
大きな節をサクにする

五枚おろしではなく、三枚おろしにする場合

おろし方は他の魚と基本的に同じです。

カツオの場合は身が弱いので、力加減に注意します。

三枚おろしの基本

漁師やカツオ節工場職人のマネをして、片手で尾を持ってぶら下げ、片手だけでさばいてしまうやり方もあります


が、これは慣れないと難しいですし、そもそも尾を持ってぶら下げるだけで板前失格です。こうした赤身魚は活でもない限り非常に身割れしやすいものです、尾を持ってぶら下げるなど、昔だったら築地の魚屋に叩き出されてしまうトウシロがやることです。
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築地で仕入れ


慎重に、身を傷つけないようにサバキましょう。
独特の『カツオ包丁』を使ってチャチャっとさばくカツブシ工場のやり方はね、熱加工するからアレでいいのであって(漁師包丁の場合は極めて鮮度が良いという事情も)、料理人が刺身やタタキを出すのとは意味が違うのです。基本を無視してはいけません。
カツオの卸し方も何通りかあり、背鰭際に切り込みを入れておいて肛門から包丁し、そのまま一気に「頭、内蔵、背ビレ」を同時に取ってしまうやり方や、最初のウロコ取りの段階で背ビレの際まで綺麗にすき取り、背ヒレを付けたままで「三枚おろし」にするやり方など、色々なさばき方があります。

その全部を紹介してもあまり意味はありませんので、ここでは最も基本にそったおろし方である「カツオの五枚おろし(節卸し)」を説明しています。

カツオのハラモ

カツオの腹は薄いのでネタになり難いものです。
忙しい店などでは、ここを捨てています。

しかし、使いようですよ。
おろしてからカットすると形にならず使い物になりませんが、最初の段階でここを切り取っておけば下のようになり、一品が作れます。焼き物、干し物にして美味いものです。

 



著者:手前板前 魚山人