笹切りと葉蘭切り

  

ササ切り

笹切り・葉蘭切りは主に鮨屋において発達しました。 笹は俗に殺菌作用があるとされ「飯」を包むに格好の形をしております。ですので、寿司が「なれ」の時代から使われて来ました。

その名残りは石川県、長野県、新潟県などの郷土料理である「笹ずし」に見る事ができます。 寿司が「早なれ」から「早鮨」に変化していく過程で、笹切りも多種多様なものへと発展を遂げたようですね。

ササ切りとハラン切りの違い

一般に「笹切り」とだけ認識されておりますが、笹と葉蘭は別のものです

ハランとバラン

「バラン」という語がありますが、この言葉は常緑多年草の「はらん」が変形したものです。飲食関係者が使用する【人造バラン】があらゆる方面で多用されるようになり、いつの間にかハランもバランも同義であるかのようになってしまった一例ですね。

はらん

ハラン(葉蘭/馬蘭)

ばらん

人造バラン

つまり、「バラン切り」という言葉は誤りで、「ハラン切り」が本来の呼び方です。

葉蘭を料理に用いる場合、のちほど説明しますが「仕切る・敷く・包む」というのが主用途になります。

ササ

笹の種類はかなり多いものですが、料理に使うササの殆どは「隈笹(クマザサ)」です。そして笹切りに使うのものやはり隈笹になります。

笹切りに使う隈笹



笹切りの用途と始まり

笹切り・葉蘭切りには「仕切る」「敷く」「飾る」の三種があります。 代表的な仕切りが「剣笹」と「せきしょ」。すしの上にのせるのが複雑な形に切った「化粧」です。

化粧を大型化・複雑化したものを「飾り物」と言いますが、これはもう切り絵と同じで一種の芸術作品ともいえますので鮨職人の仕事から離れた趣味の世界です。実用的な笹切りは「化粧」まででしょうな。

ハランは主に「敷き」に使います(鮨以外の料理全般では包む用途が多い)。広い意味での掻敷になりましょう。 昔の折は「木」そのものですからご飯粒がひっつく。 食べやすくする職人の配慮から始ったものでしょうね。

笹は時間経過でしなびる物。ですから「せきしょ」「化粧」は「鮨が新鮮な間に食べてください」という実用的なお客へのメッセージでもあったのですが(笹のツヤが新鮮なすしであることの証)、「敷きハラン」もやはり実用的な意味合いから始っているのです。

敷き葉蘭の最初はおそらく折箱などのサイズに合わせてカットする単純なものであったと思いますが、徐々に複雑な形になって行ったのでしょう。

折箱詰めの巻き物と笹切り→

笹切りの仕方

おいらの店は和食屋ですが、寿司も扱います。昔の話ですが、寿司の修行もしました。

【笹切り】も実用で使う事は少なくなりました。昔の先輩方は、こいつを切るのが上手だったもんです。感心した思い出がありますねぇ。時間などがありましたら、若い板前に笹切りを教えたりもしてます。

笹切りは特にコツとなどはなく、左右対称のバランスに気をつけるだけの事です。あとは練習するしかありません。

包丁の持ち方はこうです

切り絵と同じ要領でして、左右対称が基本。中心から折り曲げて、枠を切ります。細かい仕上げは広げてからの方がよいでしょう。

ハラン切り

葉蘭です

葉の下の部分をカットして、葉のみ使用します。

敷きハランは、すしを食べるにつれてその模様が現れてくる趣向。武家の時代ですから相手方の「家紋」などが多かったことでしょう。 今に残る敷き葉蘭の型で有名なもの。

丸十

これは幕末から明治にかけて薩摩藩が勢力を誇ったことの名残りでもあるでしょう。「丸十」は薩摩藩の家紋です。 (切り方はハランを四つ折りにし、中心を銀杏に切り抜く)

寿司だけではなく、和食の敷きものにも多用する切り方。


畳んで上下から山を切り抜きます。

笹切り・敷き葉蘭切り、ともに基本は左右対称であります。

しかしそれはそれとしましてね、どんな場合においても「あそび心」って奴はあってよいと思います。例えば下の様な敷き葉蘭が料理の下から現れたとしても、

意味が分かるのはこのブログの読者以外いない(笑)。つまりまったくの無意味。これを切るのに10分も時間を無駄にしたおいら。そういうことですかな。




笹巻・ちまき

著者:手前板前 魚山人