胃腸不良に効果のある栄養  

消化器の不調に効果のある栄養

胃痛、腹痛

下痢・便秘・痔


食べた物は、口腔・咽頭・食道を経由して胃に至り、胃で分解過程が始まり、小腸で栄養を吸収されて、大腸に到着する頃は粥状に。大腸内で残った水分などを吸収されながら直腸へと進み、便となって肛門から排泄されます。

肝臓、膵臓も消化の補助をしている器官ですし、水分を濾過して尿を生産している腎臓もやはり関連器官の一種でしょう。

こうしてみますと、「ヒトの体は食べ物を処理するために特化している」と、そういうふうに思わざるを得ません。まあ、ヒトだけではなく大概の生物もそうでしょうが。



現代人は、この「食物と消化器の重大さ」を、少し軽んじているのではないでしょうか。
ヒトの生命活動に直結している非常に大事なことなのに、食物と消化器の全容を簡素にまとめた「教育」というのが殆どみられないのです。

「脳の記憶領域」の教育に偏重するあまり、食べ物=消化器に関する知識・知恵は無視に近い状態。
こういうところが、虫歯になる人、暴飲暴食をする人、便秘や下痢になっても気にしない人、そういう人々が増加する要因かも知れませんね。「大事にしなきゃいけないもの」という意識が育っていないのは、そういう教育が無いからでしょう。

生き物の基本はヒトの基本。
そういう事柄には知識がなく、生命に関係のない、生活の役にも立たない、訳のわからぬ知識を膨大に詰め込まれる。
やはり現代は何かが歪んでいるような気がします。


胃のトラブル

胃痛・腹痛など

胃が不調の時は全般的に消化のよい食事が基本

・でんぷんの消化を助けるアミラーゼ
※主食を吸収されやすい糖に変えて胃腸の負担を減らす

・たんぱく質の分解酵素(果物類の酵素)
デザートにこのようなフルーツを
※生の状態でないと酵素は働きません。缶詰などは効果なし

・胃の粘膜を保護する作用があるムチンキャベジン

・胃酸を補ってくれるクエン酸
※古くから、吐き気や嘔吐、食欲不振、胃腸の不調に「梅干し」が良いとされてきました。しかし梅干し単体では酸や塩分が強く胃に刺激を与えすぎるので、おかゆに入れたり番茶と一緒に食べたりすると良いと云われます。

●控えたい飲食物
・熱すぎたり、冷たすぎるもの
(15℃前後が消化にも良く、食材の旨味を感じる)
・刺激性のある香辛料やハーブ、コーヒーなど
・塩辛いもの、甘いもの
・油っこいもの

ピロリ菌に対する抑制効果があるといわれる食品成分は、スルフォラファンイソチオシアネートなど

※いずれの成分も、胃腸に炎症や潰瘍などがある場合は逆効果になってしまうケースがあるため、そういう疾患の方は医師の指示に従って下さい。

胃の容量はおよそ1500ml(ビンビールの2本分) 対して胃液の分泌量は1日で約2000ml。

食物が胃に入ると、胃酸(塩酸)によって繊維がほぐされ、タンパク質を分解する酵素「ペプシン」と、脂肪を分解する「リパーゼ」が混ざり合い、胃粘膜下の筋肉が動いて撹拌されます。

撹拌されて粥状になり、十二指腸に送られるまでおよそ1~4時間。通常は1~2時間。食物が柔らかいもの、冷たいものですと早く、温かく固いものだと遅くなります。固いうえに脂のきつい肉の料理などは4時間もかかることがあります。

「胃もたれ」とは、このように油っこくて固いものを食べたとき、なかなか胃を通過しない状態のことです。ちなみに、「胸やけ」は食道の炎症が主な原因です。

胃や十二指腸の内容物を吐き出すのが「嘔吐」で、これは異物を外に追い出す反射的なものですが、「吐き気」は胃腸不良の他に様々な要因があるので、原因の特定が難しいものです。

胃酸によりほとんどの細菌は死滅してしまうのですが、赤痢菌のように胃酸で死なない菌もいれば、腸壁を食い破ろうとするアニサキスのような寄生虫もいます。
また、胃酸を中和する成分を出して胃の中に住みつき、胃ガンのリスクを高めるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)もよく知らるところです。

もし皮膚に付いたら、ただれてしまうほど強力な胃酸ですが、胃そのものが平気なのは胃粘膜で保護されているからです。

胃液全体をコントロールしているのは自律神経で、ストレスなどで自律神経が乱れてしまうと、胃酸から胃を保護する粘液の分泌量が減ったりすることがあり、これによって胃壁が溶かされ穴があいてしまうことがあります。「胃潰瘍」ですね。
消化器は重要な器官なので細胞の再生が早く、場合によっては一晩で潰瘍の穴を修復して塞いでしまうこともあります。

「胃痛」は、みぞおちの辺りに痛みを感じる症状で、潰瘍の前兆でもある炎症によるケースが多く、その他「寄生虫」「食中毒」「暴飲暴食」「ピロリ菌」などが原因の場合もあります。

「腹痛」とは、主にみぞおちより下の下腹部が全体的にあるいは特定部分が痛む症状で、大小腸、肝臓、すい臓、腎臓などに不調が起きていることが多く、虫垂炎などのように激しく痛むこともあれば、ちょっとした不快感程度の軽い腹痛もあります。誘発要因が多くて素人には判断できませんし、何か大きな病気のサインかも知れませんので、痛みが続くようなら医師の診断が必要です。

小腸

胃で撹拌され柔らかくなった食物は、小腸の入り口である十二指腸に送られてきます。
粘膜の表面が2500億個の上皮細胞で覆われ、1mm程度の毛が500万本ほどある小腸は、非常に複雑な仕事をしているといわれます。

食物はここでさらに消化されながら、栄養とそうでないものを仕分けされ、脂肪酸やグリセリンは毛の中にあるリンパ管から静脈に入って全身へ、ブドウ糖やアミノ酸は血管を介して肝臓へ運ばれます。栄養を吸収された食物は「水分の多い泥」のようになって大腸へ。

胃酸で死滅しなかった細菌を食い止める機能も小腸はもっています。バイエル板というリンパ節があり、腸内上皮内リンパ球とういう免疫細胞が有害な物質を撃退、細菌などが栄養にまぎれて血管に入らないようにしています。

ところで、胃から来た食物は胃酸にまみれてボロボロになってはいますが、まだまだ分解が足りない状態です。それで小腸も消化液を準備します。この消化液はすい臓と胆のうから供給される膵液と胆汁がメインなのですが、小腸の消化管ホルモン(インクレチン)は他にも色々と種類があります。

そのなかに、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)というものがあり、動物実験でGIPを抑制してみたところ高脂肪・高エネルギーの食物を与えても太らなかったという報告があります。
ということは、もしGIPの働きを抑える薬が開発されたら、「夢のような肥満防止薬」になる可能性があるでしょう。
しかしまぁ「夢」は夢であり、現実はそう簡単なものでないことは、これまでの歴史が証明しておりますが。人体はあまりにも複雑すぎて、なかなか思う通りにはならないものです。


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大腸の不調

下痢・便秘・痔

腸の不調を改善する食事

●食物繊維
穀物、豆、イモ、海藻などを食べましょう
特にサポニンを含む大豆はおすすめの食品

※一般の人は不溶性食物繊維
※老人や体力のない人は水溶性食物繊維
(腹圧が弱い人、胃腸が丈夫でない人、お年寄りなどは、蠕動運動が虚弱になっている場合があります。このようなケースでは不溶性だと逆に腸を詰まらせる可能性もありますので、水溶性食物繊維が良いですね)

※下痢の場合は食物繊維は控え、消化の良いものを柔らかに調理する。下痢が酷い時は食事を控える。いずれもミネラルと水分をしっかり補給

※薄味で数種類の野菜を煮ふくめた「和食の煮物」はとくにおすすめ

●胃腸トラブル時のたんぱく質補給は大豆、卵、牛乳から
(肉はアンモニアを生じやすく悪玉菌を増殖させる)

●発酵食品、特に乳酸菌を摂る
(加熱調理しないでそのまま食べる)

●水分を充分に補給する
ホットミルクもおすすめ

ビタミンB1β-カロテンカルコンパントテン酸なども有効

●避けたい食品
・油っこいもの
(脂肪は腸を荒らしやすい)
・辛い料理・刺激の強い香辛料など
・アルコールは控えめに
タンニンの多い食品は便秘になりやすい
※逆に下痢の時はタンニンが有効

小腸で栄養分と水分の八割を吸収された食物は、大腸に来たときには「やや固めの粥状」になっています。
大腸内で残りの水分を吸収されながら、腸の蠕動運動によって先に送られていき、直腸に至って便になるわけです。

無菌状態の十二指腸を除く腸内には、数千種類、総数100兆個にもおよぶ細菌が常在していて、これを【腸内細菌】といいます。

腸内細菌は大別して善玉菌と悪玉菌の二種類。
「ビフィズス菌」などが善玉菌の代表で、乳酸や酪酸などの有機酸を作るのが特徴です。
悪玉菌は、「ウェルシュ菌」「大腸菌」などが代表。

悪玉菌が増殖した状態になると「腸内環境」が悪化していると考えてよく、下痢や便秘になりやすくなり、腐敗物質が増えても便秘などで排泄され難くいので、再吸収されて体中に悪い影響が出るようになります。肌荒れ、高血圧から始まり、アレルギー、心臓病、ガン、さらに認知症まで招きやすくなるといわれています。

善玉菌が増殖すると、こうした腐敗物質が減ることが分かっています。乳酸や酪酸などの有機酸は悪玉菌の繁殖を抑制する作用があり、ニトロソアミンなどの発ガン性物質の生成を防止してくれるのです。

したがって、ヨーグルトなどプロバイオティクスやプレバイオティクスを積極的に摂ることが推奨されているのです。

 

便秘

便秘は腸の環境や機能の悪化が原因ですが、それを誘発する因子は複雑多岐であり、ストレスや自律神経失調など、精神的なものが引き金を引くケースも多いようです。

誘引は多くとも、便秘はやはり食べ物が大きな原因であることに違いはなく、食物繊維を摂取する量が少ないと便通や便の質が悪化するのは、長年にわたる多くの研究から確実なのです。

日本人は、長らく肉よりも植物食がメインだったため、欧米人よりも腸が長くなっており、穀物などの消化には適しているが肉や脂肪の消化には向いていないとされます。

つまり繊維の多い食べ物を摂るのは理にかなっており、昭和30年代までは一人あたり1日30グラム以上の食物繊維を摂取していたと推定されています。そして、排便量は日に約800グラム。

現在はといえば、国家が奨めている食物繊維量で20グラム前後、実際は平均10~15グラム程度でしょう。そして排便量は平均100グラム程度にすぎないとされています。

こうしたことから、潜在的な「便秘もち」が想像を超えるほど沢山いるのは間違いないでしょう。それは大腸ガンの増加率とも大きく関連している筈です。便秘が誘発する痔に悩む人もおそらく非常に多いでしょう。

便秘とは、排便が「3日以上ない」「週に3回以下しかない」状態で、あっても排便が困難だったり残便感がある状態です。

病院に行ったほうがよい「器質性便秘(続発性便秘)」と、自力で改善できるケースが多い「機能性便秘(特発性便秘)」の2つに大別できます。

病院に行ったほうがよい続発性の便秘は、排便時に痛みがあったり、血便などがみられることが多く、痔、腫瘍、甲状腺異常、腸癒着、大腸ガン、直腸ガン、薬の副作用などが原因で便秘になっている可能性があります。

そうではない常習性(慢性)の便秘は原因を特定するのが難しく、複数の要因が重なっていたり、何が原因か分からないケースが多いようです。
しかし、ほとんどは食物繊維の少ない食事と、精神的なストレスが主な原因で、女性や高齢者、肥満者などの場合は、これに加えて筋力不足、脂質過剰、ホルモンバランスの乱れ、生活習慣の乱れ等の因子が加わります。

「弛緩性便秘」と呼ばれる便秘が、食事や筋力低下(腹筋や大腰筋の衰え)によるもので、腸管への刺激不足で硬くて少量の便が特徴です。

「痙攣性便秘」というのが、ストレスなどで自律神経を失調して起きる便秘。「過敏性大腸炎症候群」などともいわれます。
これは下痢に似た仕組みで腸が異常な痙攣を起こし、便が詰まってしまう特徴があります。硬くてコロコロのウサギのような便が出ます。

これらの便秘は食事の改善やストレスの緩和策などで改善されることが多く、「水分を多くとる」「腹筋などを鍛える」「偏食しないで何でもよく食べる」「食物繊維や発酵食品を多く食べる」などの対処だけで、あっさりと治ることもあります。水は早朝に冷たい水を飲むのが良く、また牛乳なども効果があるようです。

便の状態は健康のバロメーター

・便の量
理想は1日500グラム。最低でも200グラム程が望ましい
サイズから重さを判断するには卵を目安にする
普通サイズの卵で重さはおよそ50グラムですので、卵のボリュームを参考に便の重さを目視で確認できます

・便の色
便を「着色」しているのは胆汁のビリルビン分解物
便の色は、通常「腸の通過時間」で決まります
通過時間が速いと黄色く、遅いと黒くなる
異常な黒さや血便→病院で検査を

・便のニオイ
食べたものによって異なります
腐敗したようなニオイ、吐瀉物のように酸味の混ざったようなニオイは危険信号です。異常がないか病院で検査を

・便のカタチ
便の形状は水分の含有量で決まります
ウサギの糞状→便秘
水便→下痢(腸の機能異常)
泥状→過敏性大腸炎症候群の可能性
バナナ状→やや健康(水分が少ないと便秘気味)
半練り状→健康です

つまり、黄土色で半練り状の便が沢山でたら健康状態は良好ということです

※ちなみに、便の通過時間が長いと発酵や腐敗が進行しやすくなり、腸内細菌がアミノ酸を分解してできるインドールやスカトールが増加しやすくなります。この2つは悪臭の原因。
ついでに炭酸ガスやメタンガスも発生し、「オナラ(屁)」に。 オナラの70%は食事と一緒に入ってきた空気ですが、残りはこうした「腐敗ガス」です。

よく「イモを食べるとオナラが出る」と云われますが、実はオナラを発生しやすくしているのは「肉類」です。欧米人よりも肉の腸内滞留時間が長いため腐敗しやすく、ニオイもひどく臭くなりやすい。「イモのオナラは良いオナラ、肉のオナラは悪いオナラ」と言えるかもしれません。

便秘もそうですが、オナラの一部も腸管から吸収されて血液の循環にのってしまいます。そのまま尿になってくれればよいのですが、一部は口から排出されることもあります。
便秘など、腸の不調が多い人は、口臭がヒドくなるのです。 これはいくら口臭予防グッズなどでデンタルケアをしても消えないニオイです。エチケットの為にも、腸の健康に気を使いたいものです。

 

下痢

下痢というのは、水分が80%以上の液状便を排泄する症状で、腹痛を伴う急性のものと、必ずしも腹痛を伴わない慢性のものがあります。

原因のほとんどは、「悪いものを飲食」したことによるもので、ウイルスや細菌によって起きます。これによって腸内に炎症ができると、「炎症や細菌への抵抗性発動」、「少しの刺激にも過敏な反応」、こうしたことで腸が痙攣・異常収縮するようになるのが下痢のメカニズム。

炎症にも度合いがあり、軽いものだと下痢が1~数回程度で治まるものもあれば(食べすぎ飲みすぎなどのケース)、炎症がおさまり病原菌が排泄されるまで何日もかかる場合もあります。

こういう時は食事を控え、水分とカリウム・ナトリウの補給だけにしておいたほうが良いでしょう。軽く食べる場合は、発酵食品や消化の良いものを少量だけ摂るようにしましょう。

腸内細菌のバランスは複雑なので、間違えて有用菌などを殺してしまいかねない下痢止め薬なども控えた方が賢明です。 カラダの治癒力を信じ、できるだけ自然回復を待ってみるべきです。

慢性の場合は腸になんらかの機能不全が起きていることもありますので、医師に相談してみるべきでしょう。また、血便の場合も診察が必要です。

 

痔の原因のほとんどは便秘と血行不良によるもの。これらはある意味で現代病のようなものですから、痔に悩んでいる人の数は、想像以上に多いはずです。他人に相談し難く、病院さえもなかなか行けない疾患ですから、こじらせてしまっている人も多いでしょう。

痔の種類は大別して3つ。
「いぼ痔(痔核)」「切れ痔(裂肛)」「穴痔(痔瘻)」

いぼ痔は、肛門周囲の静脈が鬱血して腫れるというもの。 長時間座っていたり立っていたりして、肛門付近に圧力が集中するのが主因です。

切れ痔は、頻繁な軟便が続いたり、便秘により水分のない硬い便を排出する際に肛門周辺の皮膚が切れたり裂けたりするもので、便秘や下痢が主因です。

痔瘻は、肛門周辺が細菌に感染して化膿したもの。
穴(肛門小窩)に下痢便などが入りこんで細菌感染するので「あな痔」といいます。

予防や改善は、とにかく便秘や下痢を防ぐことと、お尻に圧力をかけ過ぎないことです。座り続け・立ち続けが仕事でやむを得ない場合でも、ときどき圧を開放して血行に気をくばることです。

聞いた話によりますと、「シャワートイレ」を日常的に使用している人は非常に痔のリスクが減少するそうです。また、お風呂よりもシャワーを使う人の方が痔は少ないともいいます。

こうしたことから分かるのは、トイレットペーパーや「湯船につかる日本式の風呂」だけでは肛門の清潔が保てないということですね。

自宅にシャワートイレがない人は特に、お風呂のときにシャワーで肛門周辺を綺麗に洗う習慣をつけた方がよいです。 こうしたことを「恥」の感覚で避けていると、痔になって苦しむだけだし、そうなると恥も何もありませんよ。

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