食物繊維~機能性のある食品成分  

食物繊維



食物繊維とは

食物繊維とは、食品の中のヒトの体内で消化できない難消化成分のことです。

食物繊維のことを「NSP(非デンプン性多糖類)」いうこともありますように、ほとんどが多糖類であり、その大半はセルロースです。

イメージとしては食べ物の筋っぽい部分が思い浮かびますし、たしかに昔はそれが食物繊維の定義になっていました。
ようするに、大腸まで達しても多くが分解も吸収もされないままで便になって排泄されるだけの部分ですね。

現在はそれを『不溶性食物繊維』と呼んでいます。
その代表が「セルロース」「ヘミセルロース」「リグニン」です。

昔はこれだけが食物繊維だとされていたわけですが、これに加えて「小腸までは分解吸収されにくいが、大腸で分解吸収されるもの」も、食物繊維の仲間になりました。

それが『水溶性食物繊維』です。
その代表が「ペクチン」で、これは主に植物の細胞の中にあるものですから人間の目で見ることはできません。

多くの多糖類は消化されません。それを分解する酵素がヒトの体内にはないからです。大腸に生息する腸内細菌が働くことによって分解され、脂肪酸に変換されています。僅かですが(でんぷんの半分かそれ以下)エネルギーにもなっているわけです。

しかし食物繊維の重要さはそこではありません。
エネルギーなどは三大栄養素にまかせておけばよいことです。
(※とはいえエネルギー吸収が「ゆっくり」である点は、あらゆる面でカラダに良いですから、見逃せないところでもありますが)

食物繊維には以下の働きが確認されています。
・スムーズな消化を助ける
・便秘予防
・肥満予防
・動脈硬化の予防
・糖尿病予防
・大腸癌の予防
・脂質異常症予防
・体内にある悪い成分を追い出す効果

食物繊維の摂取量が多い人は、ビフィズス菌など腸内善玉菌が多くなり、有害なウエルシュ菌などが減少することも確認されていて、健康で長寿の方が多い地区は、ほぼ必ず食物繊維を沢山食べていることも分かっています。

厚労省は1日19gの食物繊維を摂ることをすすめていますが、こうした昔ながらの「和食中心」の食生活をしている地域の方々は、最低でも日に20g以上摂っているのは確実です。

食物繊維をとりすぎると、排出作用が逆に災いして、カルシウムまで追い出してしまう可能性が心配されますが、「足腰の弱い」つまり骨が軟弱な人は、食物繊維を沢山とる地域には少なく、食物繊維が足りない都会に多い事実があります。
これは単純な話で、ミネラルの豊富な野菜を食べているからですね。カルシウムの収支がプラスになっているのですよ。

以上のことから、食物繊維を積極的に摂らない理由は何もありません。むしろ、なんで子どもに食物繊維を与えないのか、それが問題なのだと思うところです。
都会では、頑健な高齢者の多い田舎に比べて、食物繊維の摂取量はおそらく半分以下というのが現実ですからね。



IDF (insoluble dietary fiber)

セルロース (cellulose)

代表的な不溶性食物繊維。
あらゆる植物性食品に含まれる多糖類で、「繊維素」ともいいます。植物の細胞壁と繊維に、リグニンやヘミセルロースとくっついた状態で存在しています。

人間は牛や羊のように直に草や紙を食べても栄養にすることができませんけども、それは彼らと違ってセルロースを消化できる酵素が体内にないからです。

分解が困難であるため逆に胃腸などの消化器に良い影響を与えていることが分かっており、生活習慣病全般の予防に役立ちます。また、その特性から増粘安定剤や結着剤などの食品添加物にも使われています。

多くの植物性食品に含まれていますが、とくに全粒穀物、小麦ふすま、大豆、きな粉、ごぼう、いも類、海藻類に多いです。精製、加工度合いが高ければ高いほど少なくなっていきます。

ヘミセルロース (hemicellulose)

植物細胞壁にあるセルロース以外の不溶性多糖類の総称で、「半繊維素」とも呼びます。リグニンやセルロースとくっついた状態で存在し、そのはたらきもセルロースに準じたもので、同じように体内を綺麗にする効果があります。
多く含まれる食品もほぼセルロースと同じです。

リグニン (lignin)

セルロースやヘミセルロースと結束して植物の細胞壁を構成している「木質素」の別名をもつ高分子化合物です。多糖類ではなくポリフェノールの一種です。体内ではやはり生活習慣病全般の予防に役立ちます。
セルロースと共に植物細胞に存在しているわけですから、含まれている食品もセルロースやヘミセルロースに準じますが、飛び抜けてリグニンが多いのはカカオマス(ココアやチョコレートの原料)です。

ぺントザン

ぺントザンは石細胞(stone cell)の一部です。 リグニンとぺントザン、あるいはリグニン、シリカ、結晶化したセルロースなどが固まって、細胞膜が白い石のようになったものが石細胞です。いわゆる厚壁細胞というものです。

植物の皮などに存在し、梨の表面のジャリジャリがその代表です。ほかには、マルメロ、釈迦頭、フェイジョアなどにも石細胞がみられます。ぺントザン自体はライ麦に多く含まれ、ライ麦粉独特の吸水力の元になっています。

胃腸で消化されず、大腸を刺激して便通をよくする点などから、不溶性食物繊維の一種とみなされます。

キチン (chitin)

主にカニやエビなど甲殻類の殻に存在するムコ多糖の一種。他には軟体動物の殻皮やキノコなどの菌類の細胞壁にもみられます。
胃腸への働き、免疫強化、高脂血症にも役立つとされる不溶性食物繊維の一種ですが、そのまま食用にされることは稀で普通は廃棄される部分。特殊な処理をして利用されています。

キチンを酸加水分解処理したものがグルコサミン。
キチンを脱アセチル化したものがキトサンで、キトサンは難溶性から一部水溶性に変化しますので、キチンは不溶性、キトサンは水溶性の食物繊維に分けます。


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SDF (insoluble dietary fiber)

ペクチン (Pectin)

植物の細胞に存在する複合多糖類で、代表的な水溶性食物繊維です。多くの植物に含まれますが、果物の柑橘類やリンゴに多いのが目立ちます。
コレステロール低下、血糖値の安定、整腸、などの作用があるといわれています。
ゲル化作用があり、増粘安定剤など食品添加物としてもよく使われています。

ムチン (mucin)

ムチンは動植物の粘性物質です。(粘液糖タンパク質) つまりネバネバの主成分ということです。
強い粘り気があり、保湿性も高いのが特徴で、ヤマイモ、オクラ、モロヘイヤなどの植物性食品、ウナギなどの魚介類、基本的にほとんどの動物の粘液に含まれています。
体内では他の食物繊維と同じような働きをし、胃を保護する効果も期待されています。

グルカン (glucan)

自然界に広く存在する多糖類で食物繊維の一種。
α型とβ型があり、機能性が注目されるのは植物、菌類などに存在する【βグルカン(β-glucan)】のほうになります。
ガンに何らかの効果があるといわれる霊芝やアガリクスの主成分がβグルカンで、マイタケなどのきのこ類、海藻などに含まれています。
抗がん、制がんの他、食物繊維独特の整腸作用や血流浄化にも役立つとされます。

グルコマンナン (glucomannan)

グルコマンナンはコンニャクの主成分で「コンニャクマンナン」と呼ばれることもある多糖類です。コンニャク以外では針葉樹の細胞壁などに存在します。
食物繊維としての働きのほか、胃の中で膨張するためダイエット食品としても利用されています。昔の人が言っていた「コンニャクは体内を掃除する」という民間伝承が、科学的にも証明された例ですね。

イヌリン (inulin)

植物に含まれる多糖類で水溶性食物繊維。
キクイモやゴボウなどに多く含まれています。
低カロリーの糖として注目されていて、砂糖、小麦粉、脂肪などの代用に使うことも多いようです。血糖値安定、カルシウムやマグネシウムの吸収を良くする作用や、整腸作用、腎機能を高める作用と利尿作用など優れた点があるからですね。(厚労省は認めていませんが)
体内でガス化しますが、サツマイモなどと同じようなものですから心配はいりませんけども、徐々に摂取量を多くしていく「慣らし」で解決します。

ラミナラン (laminaran)

海藻やキノコに含まれる多糖。β-グルカンですが、キノコのβ-グルカンとは違うもの。
アルギン酸、フコイダンと共に、コンブのぬめり成分として知られ、水溶性食物繊維の機能をもっています。

フコイダン (fucoidan)

コンブやワカメなどのぬめり成分に含まれる硫酸多糖。
デトックス効果、がん予防、高血圧・動脈硬化の予防、健胃作用などがあるとされますが、こうした効果が実際にヒトで確認されているかというと、食物繊維としての効果以外はよく分からないというのが現状です。期待が先走りしている訳ですけども、これからの研究が待たれます。

アルギン酸 (alginic acid)

フコイダン、ラミナランと共にコンブなど海藻に含まれる多糖類。 水溶性食物繊維としての効能ははっきりしており、トクホの健康食品などに使われているほか、ゲル化剤、安定剤、増粘剤などいろいろな添加物として広く利用されています。
通常は「アルギン酸」と呼んでいますけども、利用されているものの多くは「アルギン酸ナトリウム」であり、一般にアルギン酸はアルギン酸ナトリウムの略称のようになっています。

ポルフィラン (Porphyran)

ポルフィランは、スサビノリ、アサクサノリといった葉が赤みを帯びた海苔に含まれる硫酸多糖類。
海苔を紫外線や渇水から守る役目をしている保水性がある糖で、コレステロール低下や免疫活性の効果が認められており、健康食品として期待されています。

カラギーナン (carrageenan)

ツノマタなど海藻に含まれる多糖類。
ゲル化剤の「アガー」として知られていて、デザート作りなどでゼリー、寒天などと同じくよく使われます。増粘剤、安定剤としても利用されるほか、いろいろな分野で幅広く利用されています。 食物繊維としての効果が期待できます。

アガロース (agarose)

テングサなどから作る寒天の主成分である多糖。
寒天は昔から料理などに使われきましたが、今は質の高い水溶性食物繊維として周知され、健康目的の利用が増大しています。もちろん食物繊維の機能性を充分期待できます。

キトサン (chitosan)

エビやカニの甲羅の成分であるキチンを、脱アセチル化させて得る多糖類。キチンは不溶性ですが、キトサンは可溶であるため水溶性食物繊維に加える場合が多いです。
健康食品、増粘用の食品添加物の他、医療、工業分野でも幅広く利用されています。

ガラクタン (galactan)

寒天、サトイモのぬめり成分に含まれる多糖類。
食物繊維として体内で機能し、さまざまな効果があるとされていますけども、食物繊維機能以外のヒトへの効果は、まだ実証待ちという感じです。


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