まぐろ刺身(3) 悪いマグロ刺身と良いマグロ刺身  

まぐろ刺身 良いマグロとマグロ悪い

 


tuna① マグロの種類
tuna② 鮪の歴史とまぐろ漁
tuna③ マグロの解体と流通
tuna④ マグロ刺身の選び方
tuna⑤ カジキは梶木、マグロは鮪
tuna⑥ 大間の生マグロ
マグロのおろし方
マグロ刺身の切り方

良いマグロがどんなものかを、マグロ喰いの日本人にあえて説明する必要は無いと思います。強いて言うなら【人間(殊に日本人)の審美眼】にマッチするマグロが良いマグロです。そもそも値段を見れば一発で分かります。ですから、ここでは逆に悪いマグロを取り上げます。

(四)マグロの病変

江戸時代からマグロ関係者を悩ませてきた「使えないマグロ」の代表は四種類ほどあります。とろけ・やまい・うたれ・いたみ、の4種の変種です。


とろけ

これは廃棄されますので、普通は見る機会がありません。刺胞子虫類がマグロの身を侵食して、その部分がゼリー状に溶けてしまいます。水泡状になった身はズブズブになってしまい、まったく商品価値はありません。メバチやキハダに多くみられます。


いたみ

外見は普通なんですが、食べるとピリッとした刺激があり、「電気鮪」と言われていました。原因はよく分かっていません。輸入物に多いです。


やまい

マグロの病気です。おかれた環境や個体差で発現します。ひどいものは膿泡が出来て、そこが大きな穴になります。


うたれ

内出血の事で、【シミ】とも言います。
上の三種は冷凍輸送技術等の進化により、最近減少していますが、問題はこの「うたれ」です。先に紹介したマグロ漁船での漁獲時に発生します。マグロ漁師のスキルの低さが原因です。漁法、シメ、放血、格納、冷凍、この過程が悪いと発生すると考えられます。外国マグロ漁船が大きな割合を占めつつある現在、冷凍マグロの値の安い物はだいたいこれがあります。

我々職人は普通これを不良品として業者に返品してしまいますけども、この在庫を抱えた業者がどうするかといえば、大量にマグロを使う大衆向けの大型チェーン店に卸します。「抱き併せ」や「おっつけ」ですな。返品してこない可能性が高いんですよ。色々な事情がありますから。困るのはその店の職人ですな。無理に出したらお客に怒られる可能性が高いし、使えないからロスにもなります。加熱調理しかありませんが、そんなのを出してない回転寿司とかは、本当に困る事でしょう。

赤身のうたれ(血線/シミ)

中トロ部分の血線/シミ

この様に「血線」が入ります。

まともな寿司職人ならば、これを握って出すのは無理ってものです。

※どうしても使わざるを得ない場合の血線処理
下のように骨抜きを使い血管ごと抜き取ります

ブロックの切り出し方法(さくどり)

前回はマグロがブロックになるまでを紹介いたしましたが、そのブロックの切り分け方をサクドリと言います。普通、ブロックの長さは20センチ強ですので、下の様な刺身用短冊にします。あと手ザクもありますが、これは寿司種用。
手ザク

皆さんがスーパー等で購入する刺身用マグロは板状の長方形になっていると思いますが、あれがサク/短冊/長サクです。

これをブロックから切り出していくのを【サクドリ】と言います。

これがマグロブロックの各部位の名称

ブロックのカットは基本的に下図のようになります。

まずは血合いを包丁を沿わせる様に使って削ぎ取ります。
次にテンパと呼ぶ上部の赤身部分を、水平に切り取り、下部を「座布団」と呼ぶ状態にします。この座布団を今度は垂直に切り出すのです。

無駄を出さないサクにするにはね、下の画像を御覧下さい、

左端の部分手前に血の線がありますね、ここを上手に処理すると歩留まりが良くなります。血の手前あたりからす端を切り落として血合いを取りやすい形にします。血の部分をヘギますと、エンペラ・エンガワ・背トロ、ぎしトロ、なんでもかまいませんが、付加価値のある美味しい刺身サクになります。この部分の筋を避けて刺身を切り出すには平作りより削ぎ作りが良いでしょう。

詳しくは
マグロのサクドリ

(五)マグロ短冊を刺身に切る

まずおすすめのマグロ短冊なんですけど、冷凍マグロブロックの切り出しの所で紹介しましたけども、凍ったままのマグロを電気ノコでサクまでにカットしたのが良いです。つまり冷凍ショーケースのある鮮魚コーナで、一度も解凍されずに並んでいるのが良いんですよ。


こういうのが買えましたら、解凍方法が大切です。

冷凍鮪の解凍


お風呂くらいの湯を用意し、塩を一掴み入れまして、表面をゆるくしたらすぐ取り出し、布巾かキッチンペーパーで包んで冷蔵庫に入れて低温解凍すると、ほとんど生のマグロと遜色のない(場合によってはそれ以上)刺身ができます。

しかし多くの場合鮮魚店で解凍して並べてあるケースがほとんどです。マグロ刺身サクを買う時の注意点はまずドリップ(肉汁・赤い汁)の有無です。冷凍ケースで凍ったまま販売されていても、このドリップのあとがトレーの底に見えるものは買ってはいけません。解凍したのを再凍結させた可能性濃厚で問題外ですね。解凍してパックしてあるのもドリップはいけません。古い証拠です。

マグロの筋

そしてマグロ刺身を堪能できるかどうかの分かれ目はマグロの「筋」です。
買ってはいけないマグロサクはこんな筋目のやつです。

これはね、ブロックからサクにする時に間違えているんですよ。サクドリの経験が浅いか、やっつけ仕事なのか知りませんが、これはいけません。このサクを刺身にしますと、筋がビラビラと口の中に残って、せっかくの刺身が台無しになります。

では正しいサクをとった筋目はどんなのか。
これを御覧下さい。

トロと中トロの筋をよく見て下さい。
これが正しいサクです。
(画像右にある赤身はテンパ部分なのでスジはありません。こういった部分は問題なし)

このサクの上辺と底辺を表面に来るようにサクドリしてしまったのが、上の間違ったサクなんですね。材木の加工板年輪状の筋(フローリングの床模様を想い起されたし)が表面にきてしまう訳です。

そういったメチャクチャなマグロサクをスーパー等で見かける事もありますが、そんな物は買ってはいけません。

正しい筋目とは、刺身を切る時に包丁が筋に対して垂直に入るもので、そのとき包丁がスジに平行になってしまうサクが間違ったサクです。

正しいサクを刺身にしたらこんな風にスジが垂直に切れます。

刺身の切り方ですが、 サクの芯に硬さが無いほどの半解凍くらいが刺身には良いので*、完全に解凍する前に取り出して刺身を切りましょう。ここまでくれば、刺身の切り方はね、端的に言って「とても簡単」です。切り方は二種、平作りと、そぎ作りで充分です。こちらを御覧下さい。
刺身の切り方

*プロは「水抜き」と言って中心まで完全解凍させてから徹底してドリップを拭き取って使うケースがありますが、これはプロの仕事ですので気にする必要はありません。

冷凍マグロの縮れ

マグロを解凍したとき、たまに身がチリチリに縮んでしまう事があります。これは悪い現象ではありません。マグロ漁獲時に迅速に処理して、マグロの死後硬直が始まる前に冷凍されたのが原因です。要するに新鮮だってことですね。マグロは熟成など色々ありますから、一概に言えませんけど、プリプリした新鮮な刺身がお好きな方には最高でしょう。コリコリした食感があります。見た目の問題がありますから、商売ではちょいと困りますけどね。

「縮れ」のマグロ

ビントロ

スジの話が出ましたので、ついでにビントロの事も書いておきましょう。ビンナガと言いまして、ビンチョウマグロなどとも呼びます。下のようになかなか美味そうですよね。

しかしこのビンナガ、普通は回転寿司くらいでしか食べる機会はないと思います。ビンナガは昔から寿司屋や和食屋で刺身として出すことは無いんですよ。その理由ですけども、マグロの赤色が無いってのもありますが、最大の理由は身質の柔らかさです。すぐに身割れして使い物にならんのですよ。

今は冷凍の技術が発達しましたので、こうやってスキンされたコロで納入されますから使いやすくなり、回転などで握りにされていますね。

このビンコロの切りつけは、半分凍ったまま切ります。
完全に解凍すると値打ちが半減すると言ってもいいですからね。お客の口に入る時にもまだ少し硬いくらいが良いのです。しかし先に書いたように極端に身がもろいので、スジに垂直に包丁を入れると握り寿司になりません。そこでスジに平行に包丁を入れて切りつけます。これを順目切りと言っています。

長々とマグロを書いてきましたが、やはり特別ですねぇマグロは。


tuna① マグロの種類
tuna② 鮪の歴史とまぐろ漁
tuna③ マグロの解体と流通
tuna④ マグロ刺身の選び方
tuna⑤ カジキは梶木、マグロは鮪
tuna⑥ 大間の生マグロ
マグロのおろし方
マグロ刺身の切り方


※記事内のマグロ画像
画像元詳細は下記のページにございます。
おすすめのマグロ専門店一覧
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