先に案内したページでサクを取る方向や包丁の入れ方などは理解なさったものとして話を進めます。
使う包丁ですが、生は片刃の長い包丁なら何でもかまいませんけども、冷凍の場合は片刃は向きません。両刃の牛刀か冷凍包丁が適しています。
さらに、ある程度の厚みがある包丁でないと危険でもあります。包丁がサクサク入る状態では遅いって事が冷凍鮪さばきの特徴ですから、包丁にかかる抵抗を念頭に入れておくという事。片刃じゃ「流れる」し、薄物では刃がたちません。
この用途や冷凍魚をカットするのに適した厚み・重量・安全性のある『冷凍庖丁』
上部に飛び出たストッパーは左手で押さえます。
これが無い場合は大きめの牛刀を使いましょう。
赤身の血合い
最大の問題は、深く入り込んだこの血合いです。
一般的にはここを曲面に削る様に取るのが普通です。
ここを大きく取るとロスが出るといいう考え方でして、なるべく身に食い込まず、曲面にうまく血合い部分だけ切り取るのがウデの見せ所って感じで板前さん等は上手に削りますし、そのやり方が当たり前だと思われています。生鮪はそれでよいでしょう。
しかし、冷凍でもこの常識がまかり通っている様ですが、おいらの考え方は少し違います。せっかく苦労して血合いを外してもですな、刺身を切る段階ではその部分はどうせ役に立たないでしょうってなもんですよ。
魚は重量で原価計算しますが、切り数(刺身など商品としての個数)も大事で、実際はこのほうがより正確ですよね。つまり切り数をより多く出した方がロスは下がる訳ですな。しかしデコボコでイビツなサクから切り数が出ますかな?
この様な考えですので、サクは直線にキレイに出すのが結局は原価を低くする結果になるという視点でサクドリします。
背上の天端
まず背上の赤身(テンパ)から説明していきましょう。
とにかく最終段階(刺身を切る時)をイメージしながら切り出すのが大切です。
少々身に食い込んでも構いませんので
怖れずに、大胆に血合い部分を曲線ではなく直線に落とします。
冷凍マグロは絶対に血を残してはいけません。
サクにした後の水抜き解凍や、その後冷蔵保存する過程で血が身に侵食し、そこから黒く変色し、それが広がってしまいます。残った血は丁寧におとしておきます。
少しも血合いを残さぬようにするのがポイントです
テンパは普通横から包丁を入れて切り取るものですが、冷凍の場合は「安定させてまな板に向かい刃を入れる」のが肝心になります。このへんが生のマグロと違うところです。
下の様に立てて安定させ
包丁を上から下へ向けテンパを落とします。
背の上は終わりました。
次は腹上の赤身。
腹上の天端
少し面倒なのが腹上のブロック部分。
ここは骨が付いていますので、先に骨を外さないと血合いを上手く落とせません、骨を処理してしまいましょう。
まず大きく取ります。
残りを削る様にして取りましょう。
ここは一番血合いが深い部分です。
大胆に大きくカット(直線に)
この様に身が沢山付きますが
気にする必要はありません。
デコボコになるよりマシですし、この部分は別の用途に使用すればよいだけの話ですから。
今カットした血合い部分を
まな板に向けて立てます。
(こうした場合でも冷凍は直線に落とす事が大事になるわけです。底面を水平にして安定させるのが最も肝心ですからね)
上から下へ包丁を入れ3等分か4等分にします。
残った血合い部分。
ここも血合いだけを取ろうとするのはやめて、直線にカットします。
「もったいないから」という感覚で、血合いにそって曲線にしたりすればサクはどうなります? デコボコの変な形になってしまい、そこから刺身の切り数が出るかどうかです。
血合いに食い込んだ赤身は捨てるわけではなく、ちゃんと使うのですから、遠慮せずにキレイな直線にしましょう。真っ直ぐなサクの方が最終的に原価を下げるという暗算ができるようになって下さい。
反対側の腹上の赤身
骨の外し方は上と同じ
ここはテンパですが、包丁の入れ方が変則的
とにかく「直線に包丁して真っ直ぐなサクを出す」のを優先させているわけです。
冷凍の場合こういう変則的な赤身処理もあり、こちらの方が歩留まりが良いと思います。テンパをハネルのでなく、側面にしてしまう方法です。赤身は筋がありませんので向きを気にする必要はありません。ですからこういう方法も可能なんです。
このサクドリに関しては下の記事も参考にしてください
→テンパを出さない柵取り方法
下のテンパ
シモもやり方は同じです。
尾に向けて形がイビツですので、「キレイにサクを出せる中心面を大きく取り、形が決め難い端の方は思い切って小さくする」方が最終的に歩留まりを良くする結果になります。
少しの血合いでも残さないように
サクの厚みは基本的に同じにしますが、迷った時は「良い部分を大きく取る」と良いでしょう。ペラペラしてしまえば使い途がなくなりますのであまり薄くしてはいけません。薄くするとすれば用途の無いテンパの先とか縁側を薄くすればいいのです。また刺身用のサクは厚め、寿司サクは薄めに取ります。