マグロのおろし方  

マグロのおろし方(冷凍鮪)


マグロのおろし方(1)(めじ)
マグロのおろし方(2)サク
③ 冷凍マグロのサク取り(1)赤身
冷凍マグロのサク取り(2)トロ
オチとネギトロ
マグロ刺身の切り方

生のマグロの解体・柵取りは『①マグロの解体』を御覧下さい。 実際に使われるマグロの大半は冷凍鮪だと思います。冷凍と生は扱い方が少々異なりますので、冷凍まぐろの切り出し方も書いておくことにします。サクの取り方一つでロスが出たりしてしまいますので、調理従事者は覚えておくと役に立つかもしれません。

マグロのサクを取る前段階として、まず「マグロのおろし身」を頭に入れ、「マグロブロックの切り方」も理解しておいて下さい。ロイン(一丁/シブイチ)がよく分かるかと思います。

マグロのロインとブロック
マグロブロックの切り方

河岸の仲買は、このロイン状態のまま海水を濾過した塩水で解凍してしまう事も多いのですが、小売店では最近ロインのまま買う事はほとんど無くなりました。解凍に時間もかかるし、色々と作業効率が悪いからでして、仕入先のマグロ商でブロックにした状態で納入される方が良いからです。

それでブロックにカットされたマグロが届く訳ですが、このブロックを横からカットして上の赤身(テンパ)と下の中トロ側に分けられたものが多く、この方が便利です。これを【コロ】と言っています。

芯まで凍結した冷凍マグロは巨大な氷の塊と言ってよく、そんなモノを包丁が入るまで解凍するのは時間の無駄でして、また、半分凍った状態でカットしなければいけませんので非常に危険でもあります(強い力を包丁にかける作業はよくありません)
それらの理由で、ロインのままの冷凍は避けて、今はブロックを二等分にしたコロ状態の冷凍鮪が主流になっています。

本マグロとインド(南マグロ)の皮側の身は、腹は勿論背でも中トロとして使えます。腹上のブロックからは大トロが取れます。冷凍鮪はこの部分をすでにカットした状態で納品されるのが普通です。つまりすでにサクになっています。 値段も赤身側より高く設定されています(カットされてると言っても皮や骨や血合いは付いたままです。そこまでスキンするのは大変な手間になりますので、普通の問屋ではやりません)従って形の整った部分のサクは皮を取り除くだけですので説明を省略します。



冷凍まぐろサクドリの注意点

冷凍マグロをさばく時の注意点は、【なるべく硬い状態のうちにサクを切り出す】です。完全に柔らかくなってからサクドリしたりすれば、サクになる頃はもうグズグズ状態になり色も飛んで焼けてしまいます。

かといって、ガチガチのうちに無理やり力で切ろうとすれば身割れしますし、大怪我をするでしょう。断面の中心の方を指で押さえてみて柔らかさを感じるくらいで切り出しを始めます。

もうひとつは血合いの処理です。
生のマグロはブロック状態のまま最初に血合いを削るのですが、冷凍は無理です。ここが生と冷凍のサクドリの違いになります。
生のマグロと同じ手順で冷凍マグロをさばく方を見ますが、同じマグロでも生と冷凍はまったく別の物ですので、同じやり方をしてはいけません。
使う包丁、切る位置や力の向き、すべて違います。生と冷凍品を同じに考えるのは誤りです。同じなのは筋の向きだけと言ってよいでしょう。

冷凍マグロのサクドリ(赤身)

先に案内したページでサクを取る方向や包丁の入れ方などは理解なさったものとして話を進めます。
使う包丁ですが、生は片刃の長い包丁なら何でもかまいませんけども、冷凍の場合は片刃は向きません。両刃の牛刀か冷凍包丁が適しています。
さらに、ある程度の厚みがある包丁でないと危険でもあります。包丁がサクサク入る状態では遅いって事が冷凍鮪さばきの特徴ですから、包丁にかかる抵抗を念頭に入れておくという事。片刃じゃ「流れる」し、薄物では刃がたちません。

この用途や冷凍魚をカットするのに適した厚み・重量・安全性のある『冷凍庖丁』

上部に飛び出たストッパーは左手で押さえます。
これが無い場合は大きめの牛刀を使いましょう。


赤身の血合い

最大の問題は、深く入り込んだこの血合いです。

一般的にはここを曲面に削る様に取るのが普通です。

ここを大きく取るとロスが出るといいう考え方でして、なるべく身に食い込まず、曲面にうまく血合い部分だけ切り取るのがウデの見せ所って感じで板前さん等は上手に削りますし、そのやり方が当たり前だと思われています。生鮪はそれでよいでしょう。

しかし、冷凍でもこの常識がまかり通っている様ですが、おいらの考え方は少し違います。せっかく苦労して血合いを外してもですな、刺身を切る段階ではその部分はどうせ役に立たないでしょうってなもんですよ。

魚は重量で原価計算しますが、切り数(刺身など商品としての個数)も大事で、実際はこのほうがより正確ですよね。つまり切り数をより多く出した方がロスは下がる訳ですな。しかしデコボコでイビツなサクから切り数が出ますかな?

この様な考えですので、サクは直線にキレイに出すのが結局は原価を低くする結果になるという視点でサクドリします。


背上の天端

まず背上の赤身(テンパ)から説明していきましょう。
とにかく最終段階(刺身を切る時)をイメージしながら切り出すのが大切です。

少々身に食い込んでも構いませんので

怖れずに、大胆に血合い部分を曲線ではなく直線に落とします。

冷凍マグロは絶対に血を残してはいけません。
サクにした後の水抜き解凍や、その後冷蔵保存する過程で血が身に侵食し、そこから黒く変色し、それが広がってしまいます。残った血は丁寧におとしておきます。

少しも血合いを残さぬようにするのがポイントです

テンパは普通横から包丁を入れて切り取るものですが、冷凍の場合は「安定させてまな板に向かい刃を入れる」のが肝心になります。このへんが生のマグロと違うところです。

下の様に立てて安定させ

包丁を上から下へ向けテンパを落とします。

背の上は終わりました。

次は腹上の赤身。


腹上の天端

少し面倒なのが腹上のブロック部分。

ここは骨が付いていますので、先に骨を外さないと血合いを上手く落とせません、骨を処理してしまいましょう。

まず大きく取ります。

残りを削る様にして取りましょう。

ここは一番血合いが深い部分です。

大胆に大きくカット(直線に)

この様に身が沢山付きますが

気にする必要はありません。
デコボコになるよりマシですし、この部分は別の用途に使用すればよいだけの話ですから。

 

今カットした血合い部分を

まな板に向けて立てます。

(こうした場合でも冷凍は直線に落とす事が大事になるわけです。底面を水平にして安定させるのが最も肝心ですからね)

上から下へ包丁を入れ3等分か4等分にします。

残った血合い部分。

ここも血合いだけを取ろうとするのはやめて、直線にカットします。

「もったいないから」という感覚で、血合いにそって曲線にしたりすればサクはどうなります? デコボコの変な形になってしまい、そこから刺身の切り数が出るかどうかです。
血合いに食い込んだ赤身は捨てるわけではなく、ちゃんと使うのですから、遠慮せずにキレイな直線にしましょう。真っ直ぐなサクの方が最終的に原価を下げるという暗算ができるようになって下さい。


反対側の腹上の赤身

骨の外し方は上と同じ

ここはテンパですが、包丁の入れ方が変則的

とにかく「直線に包丁して真っ直ぐなサクを出す」のを優先させているわけです。

冷凍の場合こういう変則的な赤身処理もあり、こちらの方が歩留まりが良いと思います。テンパをハネルのでなく、側面にしてしまう方法です。赤身は筋がありませんので向きを気にする必要はありません。ですからこういう方法も可能なんです。

このサクドリに関しては下の記事も参考にしてください
テンパを出さない柵取り方法


下のテンパ

シモもやり方は同じです。

尾に向けて形がイビツですので、「キレイにサクを出せる中心面を大きく取り、形が決め難い端の方は思い切って小さくする」方が最終的に歩留まりを良くする結果になります。

少しの血合いでも残さないように

サクの厚みは基本的に同じにしますが、迷った時は「良い部分を大きく取る」と良いでしょう。ペラペラしてしまえば使い途がなくなりますのであまり薄くしてはいけません。薄くするとすれば用途の無いテンパの先とか縁側を薄くすればいいのです。また刺身用のサクは厚め、寿司サクは薄めに取ります。

サク取り後のマグロ解凍

サクにした後のまぐろ短冊は、まだ解凍しきっていない状態のはずです。すぐに刺身にするのならこのまま冷蔵庫にしまっても構いません。その方が旨いからです。
しかし、それは素人のやり方です。本職はきちんと「水抜き」をして使うといいでしょう。


まぐろの水抜き

大概の場合はすぐに全部を使いきるというケースは無いと思います。そこで色飛びや変色などを避けて保存できる「水抜き」をしておくのです。

サクにした冷凍マグロは芯が無くなるまで、さらに解凍します。そしたらドリップ(汁)が表面にたくさん出ているはずですので、これをしつこいくらい丁寧に拭き取りましょう。

この時サクの表面に氷が張っている場合はその氷を溶かしてから拭き取ります。氷が張ったのをそのまま「放置」「冷蔵庫に仕舞う」などは絶対にいけません。

そんな事をすれば、すぐに黒く変色し、それが広がっていきます。
特に蓄養などは真っ黒になり使い物にならなくなります。

【氷焼け】というものがあるからですよ。
氷が張った部分とそうでない部分に温度差が生じ、氷がある下の肉だけ黒く焼けてしまうのです。それも短時間で。さらに血合いなどが残っていたりすればもっと黒くなります。

サクにした冷凍マグロの表面にはすぐに薄氷が張ります。この氷をケアしてやるのが大事なんですね。これを除去しつつ、出てくる余分な水分も拭きとってやる。拭き取れないような厚い氷ならば、思い切って流水で溶かします。すぐに拭きあげれば問題ありません。

内部まで溶けて余分な水分が完全に抜けて出てこなくなる加減で、サクを一本ずつキッチンタオルなどで包み、さらにそれをラップします。大きめにバットに新聞紙などを敷いて並べてから冷蔵庫へ。


マグロのおろし方(1)(めじ)
マグロのおろし方(2)サク
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