ヒウチダイの姿焼
先日所用があり伊豆まで出かけてまいりました。
特にアチラがそうだというわけではないですが、ありし日の賑わいを記憶してるおいらとしちゃ、火の消えた様になっている地方の深刻さをひしひしと感じざるを得ません。いったい日本はどうなるんでしょうか。
しかしまあなる様にしかなりませんし、虚煩いより静かな方が良い。
地方へ出たら毎回そうしてますように、この時も近隣の魚市場を覘いて、魚君たちが元気かどうか見て、元気ならば買って帰ったり、イマイチならばその理由を魚に問い質し、「なるほど、おまえさん達もいろいろ大変なんだなぁ。おいらっちも最近はどうもいけねぇや」なんて、ともに世を嘆いてみたり。(笑)
魚というのは大別して三種に分類できる人類とはワケってもんが違います。なにしろ歴史からして陸上動物の新参者ヒトとは桁違いの「億」ですんでね。目や亜目、いや科や属にしたところで魚の種類は厖大で、とても憶えられるものではありません。
料理人は魚類学者ではありませんので、そんなものを憶えている必要はないと思います。まあ食用魚として流通するものだけでもかなりの数ですし、それらの学習で目一杯というところじゃないでしょうか。流通魚の主たるものを把握できればそれで充分です。
スズキ目もそうですが、キンメダイ目ってのも裾野の広さはかなりのもんです。見た感じでキンメダイの縁者とはとても思えない変な形と色した魚ばかり。
今回駿河湾に臨む三箇所ほどの漁港と河岸を見てきたのですが、このキンメダイ目の魚があったので買ってきました。マツカサウオや疣鯛系の魚体で色合いは金時鯛みたいな【ヒウチダイ】です。

「うーい、こんなの買ってきたよ。焼いて食おうや」
「え~なんすかこの変な魚。食えるんすか、これ」
「このトウヘンボク!こりゃあぶらごそって高級魚だよ」
「へぇ、金魚にしか見えませけど、そんな大層なオサカナなんですね」
「おめえのツラが金魚だよ。とっとと捌けって」
「は~い」

新鮮なら刺身や鮨ネタに良いんですが、それほどでもなかったんで加熱調理にすることにしました。深場の魚なんで煮付が旨いんですけどね、なにしろ小せぇ。それに煮付けると残った場合ツブシがききませんけど、焼いておけば後で色々な料理に変身させる事ができますんで。
串打ちして焼きます

焼き魚ってのは保存を含めた下拵えの意味もあります。

皆で少しつまんでみましたけども、クセが無く淡白で上品な味。恐る恐る箸を付けた初めて食べる連中は意外そうな顔をしてました。見た感じでは下魚だと思ったのが、食べてみて考えを変えたんでしょう。

【食わず嫌い】【先入観】そうしたモンは自らが経験していく事でしか払拭できません。人はいつでも自分が妙な殻に閉じこもっていないかどうか確認しながら生きる必要があるんじゃないでしょうか。
一番若い奴に「ひとつあげるから、好きな料理にしてごらん」
すると蒸し器で蒸しあげてから野菜と器に盛り、上から高温の油を回しかけて餡でとじるってな事をしてました(笑)
2009年10月29日
Comment
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お疲れ様です 実家が伊豆ですんで 静かさはひしひしと感じています
元気な所は元気なんですけど…ひと昔前に比べると淋しいですねぇ
ヒウチダイは刺身が良いですね鮮度が良ければきっと刺身だったと思われます。魚山人さんのお弟子さんも目を丸くされたかもしれませんね(^O^)
こっちでは「ごそ」です 干物でもなかなかのもので最近駿河湾の深海魚は注目されています
沼津で修行してたときにはあまり入ってこなかったんですが(親父がいれなかったのかな?)よく市場でみかけます マルヒウチダイってのもいまして ヒウチダイと味はあまりかわりませんが、身付きがマルのほうがいいですね 見た目も少し良いですし(笑)
話しが変わりますが今年は鯔子が高いです 去年より時期が遅れてますし 桁が倍です もうすこし早いと良いカラスミを天日にあてれるんですけど…困ったもんです
昨日はお客様が松茸を一キロ持ち込み(笑)キロ三十万の広島産 そんなもん店じゃなかなか仕入れられないです 店の者にご厚意で松ご飯を分けましたが 自分とこの子供は松より滑子がどうやら美味いらしい(笑)当たり前ですね
寄り道して連れの店で一杯引っ掛けて松ご飯をお裾分け どうなってんだ日本の食材はって二人でゴチてました 聞くところによるとちょい前は産地によってはキロ八十万なんてのをみた連れは てめぇんとこの輸入松茸がえのきに感じたよって 笑ってましたが(笑) 手のとどかない食材より手元にある新鮮な食材を一生懸命料理しようやって気持ちでがんばります(^O^)
Posted by たいら at 2009年10月29日 20:56
おつかれ様ですたいらさん。
松茸は本当に歯がゆいですね(~_~;)
モノが違うのは事実ですが、あの値段では提供するのが難しい。値段までモノが違うってわけでどうにもなんない(笑)。景気が悪くなってもこういうところにバブルグセが抜けない日本を感じます。徹底的に落ちるとこまで落ちた方がよいかも知れませんな。
ごそは昔沼津の人から教えてもらいました。築地には入らなかったので、向こうに行かなきゃ縁が無かったでしょう。最近は築地にもチラホラ入ったりしてるようです。背景には魚そのものと漁師の切迫した問題があると考えています。家庭の魚離れも常態化してますし、「幻の天然○○を追え」って感じのテレビ番組に夢中な国民は深刻さを把握しておらず、政府も真剣にこの問題に取り組む気はなさそうなので、先行きは暗いでしょう。
これは尾の先が黒いのでアブラゴソでしょう。マルは尾先まで赤い奴ですよね。おっしゃる通り干物にしたらかなり美味そうな身質です。
高級魚ばかりが魚じゃない。
そこらへんにある食材を巧く利用して一品を作る。それが本来の料理仕事だと思います。材料そのものに頼りすぎてはいけないものを、熱に浮かされ続けてもしょうがない。目をさまさないとね、我々も。
反省しつつ頑張りましょう。
Posted by 魚山人 at 2009年10月30日 00:20
金魚でしょこれ…
『唐変木』代表 鯔次郎です(笑)
見たことも聞いたこともネェ
また爺blogで頭が一つ良くなりました。
お疲れッス!
焼かれた姿の写真見て ガキん頃に『釣り禁止』の公園でダチが釣り上げた30㎝の
ブルーギルを思い出しました。ちなみに焚火で焼いて喰いました(忌ま忌ましい糞マズサな記憶が…)
んな話よかさ!
景気だよ…
爺が営む場所がどこかゎ
知ったこっちゃネェが 爺が強いて『地方』←と称するあたり かなりの都会派なのね(-.-;)
横浜くんだりゎ ここに来てボディブロウだゎ…
シルバーウイークとやら?の後…凍てついてるよ
爺ゎ落ち込むだけ落ち込んだら本来の姿に近づけるってな発想をしてんだろ 俺も そう考えるんだがね…
異常事態です!
そろそろ就職活動しネェと
家計が成り立たネェくらいの危機感を感じてます。
御用達の妻屋サンゎわざわざ千葉県から来てくれるんだが 隅田川が境界線みてぇだな 隅田川を越えっと 所謂『地方』になるんだろ
仲買サンが赤裸々にこぼしてます。市場内がシャッター通りになっちまう
休日が多過ぎだろよ?
伊豆紀行もお疲れッス!
1番若い見習いチャンて 中華上がりなの?(笑)
オヤスミ
Posted by 鯔次郎† at 2009年10月30日 01:50
こんちは鯔さん。
あんた妙に絡むね(笑)
でも確かに東京も「東京地方」って地方なんだし・・・
おいらの書き方、もの言いには傲慢さみたいのがあるかも。反省しますスンマセン。笑
知り合いの調理士会の番頭の話じゃ深刻だね業界は。
板にメシ食わすのがこんなに大変な時代はなかったって言ってる。
手を広げすぎてる会社はほとんど危ないね。地道にやってお客と従業員を大事にするって発想が無いから。馬鹿みたいに店を大きくするから忙しい時は人が足りないし、暇になれば人減らすから店がまわらない。結局苦しい思いするのは従業員だ。くだらない事に経費が掛かりすぎてしまうからね。どうあってもハゲタカみたいな世の中は終わりそうもないですなこりゃ。
ともかくキツイ時代です。
でも子供達もいるし頑張らないとね。
夢を持ち続けるには何か方法論みたいなのがあると思います。
若い衆たちにはそいつを見つけて欲しいですなあ。
Posted by 魚山人 at 2009年10月30日 06:26