七夕そうめん 


そうめん~七夕と振袖火事・悲恋噺

明日は7月7日。七夕ですね。
七夕(しちせき/たなばた)は、人日(1月7日・七草)、上巳(3月3日・桃の節句)、端午(5月5日・菖蒲の節句)、重陽(9月9日、菊の節句)の一角を占める五節句のうちの1つです。

お盆と同様に旧暦の7月7日ですから、今の新暦でいいますと7月末から8月末の範囲の二十四節気の処暑(約7日間)になるという事ですけども、暦はヤヤコシイんで分かりやすく7月7日でもかまわんでしょう。

七夕の色々な行事はおいときまして、
興味深いのはギリシャ神話を彷彿させる『七夕伝説』

  • 夜空に輝く天の川
  • そのほとりに天の川の妖しい煌きにも負けないほど美しい天女がいました
  • 天女の名は『織女』
  • 天界を支配する『天帝』の娘ですから『織姫』です

  • 織姫は働き者で機織の名手
  • 彼女が織る布は五色に輝き季節が変わると彩りが変化
  • 父の天帝さえも感動させるすばらしい布を織りました

  • しかし
  • 年頃の美しい娘なのに織姫はくる日くる日も機織り
  • 仕事に明け暮れ美しく着飾ることもなく化粧もしない

  • 憐れを感じた天帝は織姫を結婚させことにしました
  • 相手は天の川の西に住む働き者の牛飼い青年『夏彦』

  • めでたく二人は結婚
  • 楽しい新婚生活が始まりました
  • 夫婦は深く愛し合います

  • だけど結婚生活は楽しすぎたのです
  • 二人は享楽に傾き仕事を放棄
  • 織姫は機織りをせず、夏彦は牛追いをしなくなりました

  • この様子を知った天帝は一過性のものではないと判断
  • 放置しては怠け癖が夫婦を堕落させると考えました
  • 怒りの形相で二人の前に現れ「別離」を命令します

  • 「機を織ることを忘れた織姫よ
  • 夏彦と別れ元の場所に戻り
  • 機織りが天職だった事を思い出すがいい」

  • しかし天帝といえど娘の親
  • 愛し合っている二人を完全に引き裂くのは不憫
  • 「二人が真面目に働くなら年に一度だけ会ってもいいだろう」
  • 「7月7日の夜だけは会うことを許す」

  • 天の支配者天帝の命令に逆らうことは出来ません
  • 織姫は涙で夏彦に別れをつげて愛の巣を去りました
  • 天の川の東へ戻り孤独な機織りの生活に戻るのです

  • 織姫と夏彦は心を入れ替えて仕事に精を出しました
  • 年に1度の再会が二人の励みです
  • 7月7日の夜が来ることだけが二人の支えだったのです

  • 指折り数えて待ち続けた7月7日
  • けれど、もし雨が降ったら天の川が氾濫し対岸に渡れません
  • 2人は天の川の東と西の岸辺にたたずみ涙を流すことになります
  • 二人が流す涙は『催涙雨』となり地上へ

以上が『七夕伝説』の骨子です。
こと座の1等星べガ(織女星)が織姫、わし座の1等星アルタイル(牽牛星・彦星)が夏彦という訳で、天体の動きを仔細に観察して紡がれた物語はギリシャ神話などと非常に近しいですね。

この話で即感じるのは封建的親子関係。娘が親の意向に逆らうなどあり得ず、親の所有物に等しい。現代の日本等からは想像も出来ないことですけども、アジアを中心として世界中にこの感覚が根強く残っているのが現実の世界です。この事を理解した上でないと諸外国の本当の姿は理解できません。ウーマンリブの欧米だけが世界ではなく、インドのように親が娘の結婚相手を決めるのが当たり前の国も多いし、今をもってしても夜這いが許容され略奪(誘拐)婚がある国すら存在します。と、まあロマンぶち壊しですなこんな話は。やめときましょう。

悲恋を描く美しくも悲しいこの物語。
ふと連想するのはお江戸の大火事『明暦の大火』です。
1657年3月(明暦3年1月)に発生。10万人近い死者を出し江戸城下の大半を焼き尽くし江戸城天守閣までも消失した日本最大級の大火事ですな。

本郷丸山の本妙寺が火元だったとされるこの火事、真の原因は諸説ありまして、火元は実は本妙寺の隣にあった老中・阿部邸だったが本妙寺が泥をかぶったという説とか、実は幕府隠密による放火であり、目的は「都市計画」だったという説(この説はお上というのがいかにドラスティックな事をやるかという点、人民の生命財産を無視できる点など今日の原発事故騒動に通じるところがありますな)、いずれも色々な証拠が出ておるみたいで満更ガセと断言できないようです。

この大火事は別名『振袖火事』とも呼ばれます。
というか、江戸の人間はほぼこの呼び方をします。
なぜ振袖火事なのか、それがもうひとつの出火説に起因するのです。

  • 江戸の町で質屋を営む家に「うめの」なる娘がおりました
  • 金持ちの娘なので深窓の令嬢といったところでしょうか

  • ある日「うめの」は本妙寺へ墓参り
  • その帰り道の上野で寺小姓に出会い一目惚れ
  • 二人は夫婦に

  • 「うめの」はこの青年にぞっこん
  • 彼が着ていた《桔梗紋、荒磯の波模様と菊の柄行》の着物
  • それと同じ振袖を誂えて彼との楽しい生活をエンジョイ

  • しかしこの寺小姓は異界の者か
  • あわれ「うめの」は病に臥せって明暦元年1月8日に亡くなります

  • 「うめの」を葬った寺はこの振袖を供養せず質屋へ売却
  • この振袖は「きの」という娘が購入
  • しかし「きの」も翌明暦2年の同日に「うめの」と同じく17歳で病死

  • 振袖は質屋を経て「いく」という娘へ
  • だが何ということか「いく」も17歳で死亡
  • 明暦3年の1月8日でした

  • あまりの出来事に遺族たちは振袖を供養する事にしました
  • 明暦3年1月18日
  • 本妙寺の和尚が読経しつつ振袖を火に投げ込んだ瞬間
  • 燃える振袖が突風で本堂へ飛ばされ出火
  • 炎は魔性の様に江戸の町を焼く尽くしました

この話は出火説とするには現実離れしており「伝説」としか言いようがありませんけども、背景には江戸のお嬢様たちがおかれた悲哀なる現実がある気がします。端的に言えば自分が好いた男とは夫婦になることが出来ない現実ですな。伝説や神話はいつでも悲しい事実が下敷きになっているものです。

因みに「江戸前の握り鮨」はこの振袖火事がきっかけで発生したという話もあります。

自由自在に恋愛相手を変え、同時に複数と付き合ったりもする現在の恋事情。昔の娘たちからすれば夢の様な話でしょう。

けどね、その「自由」と引き換えに失ったものがあるんじゃないでしょうか。際限のない自由は無いのと同じく、代償のない自由も存在しないからです。

  • よいのまや 都の空に住みせん 心つくしに ありあけの月

明日7月7日も暑い夜になるでしょう。
清涼このうえないのはキンキンに冷えた「冷やしそうめん」

ただ食べるだけじゃアレなんで織姫と彦星を会わせてやりましょうかね^_^

天の川を挟んで西と東に離れ離れになった二つのお星様。
ひょいと持ち上げてくっ付けたりして。

ついでに報われぬ恋をした娘たちへも願いを込めるとしましょう。
せめて次の世では永遠に仲良く一緒に居られたらいいね。


七夕そうめん作り方

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