イカナゴで気の毒な事になった北茨城の漁師たち。
いまでも『穴子の醤油飯』を食べているんでしょうかねぇ。
釣れたての穴子を裂いて船上で数時間干し、そいつを切って米と炊く。炊いてる途中で味付けにしょう油。これが旨い。典型的な漁師料理/沖料理ですな。
今は何でも「生」がもてはやされる時代で、「おしゃれ」な板前達は、穴子でも鱧でも刺身にしようとします。
別にそいつを否定する気はありませんが、
本当に旨い魚の食べ方は刺身にかぎったもんじゃございません。
魚介は適度に水分が抜けた頃に旨さのピークが来ます。
それを一番よく知っているのはおそらく漁師でしょう。
ピエール・ガニェールや「エル・ブジ」のフェラン・アドリア達の
「分子ガストロノミー」
ネイサン・ミアボルドに関しては記事で紹介したこともあります。彼等のやっている事は気になってましたのでそれとなく注目してました。だが「世界一予約がとれない店」であるアドリアのEl Bulliも閉店が決まった様です。
彼等と分子料理についてはいずれあらためて記事を書くとしまして、彼等の「液体窒素料理法」などよりも遙かに優れた『調理道具』が存在するのです。
それは「漁船の物干し」ですよ。
沿岸海上の潮風、太陽光線、漁船のスピード、釣りたての魚介を開いて吊るしておくだけでそれらが完璧な味に調理してしまうのです。味付けは魚を洗う海水のみ。
この調理法で異様なほどに美味しくなってしまうのがイカです。
新鮮なイカ刺はこたえられません。
だがそう量は食べられないもんです。飽きますからね。
干したイカは飽きることがありません。
限りなく旨味が湧き出して来るからです。
これはプロリン、グリシン、アラニンなどのアミノ酸が凝縮するからでしょう。
完全に乾燥したスルメよりも、数時間船上で干した生干しが旨い。
しかし残念ながらこれが販売ルートにのる事ほとんどありません。
(傷みが早いので地産地消。流通させるにしても「科学的保存処理」必須)
鹿児島奄美地方の粒味噌漬けも、長崎壱岐の剣先イカ料理「いかよごし」も、本当はこの半生のイカを使って作ると美味いが、生イカをボイルして作っているようです。