「真円・亀甲・五角」剥き
和食の飾り切りの素材はほぼ野菜でして、したがいまして飾り切りの基本は野菜を「剥く」事から始ります。切る前にまず剥かなきゃいけませんからね大概の野菜ってのは。
普通皆様がピーラーを使って薄くス~っと皮を剥くのを、庖丁でやるのが皮むきの基本です。この基本の向こう側に飾り切りがあるのだと知ってください。

※いつもこのケースですが、片手のみ写ってる画像はもう片方の手にカメラがあります。ですので極めて不自然。したがって手の位置は参考にしないで下さい。
そして飾りの初歩であり、基礎でもある剥き方は。
『亀甲(六方)』、『正五角形』
その前にとても重要なのが『正円形』に剥くこと。
これが意外に難しいのですよ。
試しに大根や人参を真ん丸に剥いてみて下さい。
庖丁で正円に剥けたらあなたは生まれつきの料理人です。
他に『四角形』も重要なのですが、これは難しくありません。
野菜の形に合わせ角をとる単純さですからね。
以上にあげた円と円からから派生する3種類、プラス四角・長角から、ありとあらゆる飾り切りに発展します。
難しいけど避けて通れない『円を含む3種』
これをまず上手にこなす必要があります。
正円に剥く
正円形が何故そんなに重要かといえば、これが出来なければ、基本であり、派生する飾りも多い「かつら剥き」が出来ないからです。
それに、正円でなければ、単純な「半月」やら「銀杏」、「分銅」なども出来ません。
デコボコを均して、できるだけ真円に。
ここから桂を剥いたり、円ベースの飾り切りに進みます。

なぜうまく円にできないのか。
簡単に言いますと、野菜がデコボコしてるからです。
円形を狙って剥いても、あちらが出っ張りこちらが凹み、なかなか円にはならぬもの。まして正円というのは普通コンパスが必要になるほど。しかし庖丁事にコンパスを持ち出してはいけません。「あたり」を身につけなきゃいつまでも上達しないからです。
ではどうすれば良いのか。
「センター(中心)」を決め、見失わないようにすればいいのです。
簡単な方法として、庖丁で十文字の切れ目を入れます。

十文字が交差する中心に楊枝を打ち込んでおいて下さい。

この楊枝から目を離さずに練習してますと、そのうち円が剥けるようになってまいります。感覚を覚えてしまうんですね。
六方に剥く
六方剥きは「亀甲」といい、名の通り亀の甲羅のような六角形。

他に八方剥きというのもありますが、八方は偶数ですので、先の十字を描くからわりと簡単に覚えられます。十字の一辺を二等分にするだけですからね。なので八方は割愛するとしまして、同じ偶数でも亀甲は慣れるまで少々手間がかかります。そこで、同じように墨を打っておきます。切れ目ですね。
両端に


そして中心点にそって真ん中に

あとは分かりますね。おおまかに亀甲が浮かびます。

こうしてその野菜の感覚がつかめれば、すぐに「あたり」がついてきます。
小芋などをよく六方に剥きます。
両端を落とし、「あたり」をつけて剥きます。
里芋六方



こうして亀甲剥きにすれば、煮込んでも煮崩れしないんですよ。
(煮方が悪ければ六方でも崩れます)

正五角形に剥く
正五角形は、最もよく使う「梅花」・「桜花」を剥くときのベースです。


「ねじり梅」を剥いている場面
ところが正五角形は、レオナルド・ダ・ヴィンチとか黄金比とかペンタグラムとか、なにやら複雑でやっかいな形であり、これを描くにはコンパスと定規が必要です。折り紙で作るのもやや複雑。
慣れた人は簡単に剥いてしまいますが、最初からこんなのできるわけないですな。やはり初めは「基準」が必要です。急がば回れで、初めから見当でやってたんじゃ「あたり」などいつになってもつかめません。
正五角形の作り方
コンパスと定規を持ち出さす、そこらにある物で五角形を作りましょう。
割り箸の紙です。

これを千代に折り


はみ出た部分をカット。これで五角形になります。

これを野菜にあてがって五角形の基準にします。

とりあえずこれで五角の感じをつかんでみましょう。
これが剥けますと、次の段階に進めますよ。

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お疲れさまです
天気もよくテクテク図書館まで散歩です(笑)ムキ物仕事の記事を拝見していましたら 今日は暇なんで 魚山人さんのホームページにも本の紹介のカテゴリー
がありますが、そこでも取り上げている本を見つけ 自分も芸術家になれるかなって馬鹿な思いを胸にみてますと…… 教わったのも多々ありましたが 店じゃ
バタバタ こりゃ暇なときしかできないなぁ(笑)大根、蕪や南瓜なんかでしか使わなくなった丸のみ 三角 切り出しで 来月から息子が社会にでるので
(笑)(弁当持参の預け)
可愛く細工して持たせたいと目論見を抱いています(笑)
記事にございますように 板前は円柱 四角が基本にありますし、これから興味を持たれてやってみよう!って気持ちの方には分かりやすく、本なんかより魚山
人さんの伝え方のほうがみなさん分かりやすいと感じます 自分らは出来なきゃ罵られ馬鹿にされ 出来て喜べば 当たり前だとまたなじられ(笑) そんな環
境だと負けず嫌いは見てないとこでコンチキショウめって練習(^-^)そんな環境はなかなかないですから皆さん楽しく挑戦されてほしいです。
慣れてくると楽しくなるんじゃないでしょうかね 五角形に木取る事が慣れるまで難しいんでしょうが若ければ利き目のズレもないですが 利き目じゃない目も鍛えて バランスを磨きたいとこですね(^-^)
因みに残った野菜の手クズは細かくして炊き込みご飯なんかにすればまた旨いでしょうね(^-^)
2010/03/11
たいら
こんばんは、たいらさん。
まさに【弁当】!
飾り切りは家庭における弁当作りに使って欲しい。
まるで型で打ち抜いたみたいにしか見えない隙の無い板前流細工は、味気ない。それは「既製品」みたいな雰囲気を醸し出す。
食べる時にね、
庖丁跡やら「ズレ」があってこそ、作った人の顔が浮かぶ。
食べるのが本人であっても見て微笑が出ます。
料理が温いという記憶が残るのです。
だからこそヘタクソでも「庖丁」でむいてもらいたい。
そうでなければ、丸だの角だの、こんな記事は書きません。
誰も剥けない細工など載せても意味はないと思いますので。
たいらさんもね、息子の弁当にわざと利き目をずらしたヤツを入れるといい。
「なんだよ、お父さん。板前のくせにヘタクソじゃん 笑」
そう思いながら、父親が庖丁で野菜を切ってるシーンを想像するでしょう。
そうした時の感情は「芸術品」みたいな食べ物よりも長く記憶に残ります。温かな記憶としてね。(^_^)
2010/03/11
魚山人