ツボ抜きは、魚の腹を切り開きたくない場合に使うワタとエラの抜き方です。
例えば、カサゴは煮付けが大変美味い魚で、武家の祝い膳に使われた魚ですから、姿を生かして煮付けにしたい。鎧兜の荒武者を思わせる笠子の頭は付いていた方がいいですからね。できるだけ形をそのままに、腹も切り開かずに料理したいもの。
ところが普通のさばき方ですと、どうしても腹を切って内蔵を出します。『隠し包丁で』見えない部分を切り開く方法もありますが、武士の家では「腹切り」は縁起が悪い。どうにか腹を切らずに捌けないものか?そのへんからでしょうね。
他にも、アユの姿焼きやマス系の川魚の甘露煮など、腹を裂く事で形が崩れるのを避けたい料理に使います。まぁ鮎の場合はサンマ同様内臓を賞味できる焼き方をしますのですが、料理によっては抜いたほうが良いケースもあるのです。
※アユの塩焼きは通常ワタを出しません。
釣りなどで姿の良い魚を入手した場合などに、姿の煮付けを作ってボロボロにしてしまった経験がある方も少なくはないでしょう。アレは単純なように見えて非常に難しい料理ですからね。
細かい神経を配って小さなテクニックを駆使しないと、どうしても身が割れたり皮が弾けたりするのですよ。そうなる原因の一つが「さばいた時に切った腹」ですね。煮崩れの要因は他にもたくさんありますが、魚に切り目がないことは姿を保つ条件の一つにはなります。
その他、「腹に切り目がなくワタもない」という状態でしか作れない料理は沢山ありますよ。覚えておいても損はないさばき方です。