ハモを捌いて造りに
今では関東でもハモが珍しくなくなりました。ひと昔前まで関東の板前には珍魚の部類だったんですけどねぇ。
ハモといいますと、もともと関西系の魚でして、関東ではあまりなじみの無いモンでした。大阪の天神祭、京の祇園祭で欠かせない魚です。今では東京でも定番メニューになり、おいら達もよく使います。
ハモって言葉は「食む」から来てまして、なんでも食べる生命力豊かな魚って意味です。だから漢字では、『鱧』
そんな魚ですから、その歯はまるでサメのように鋭い。おろす時は注意が必要です。 おろし方も難しく、骨だらけなんで、『骨切り』も必要です。
ハモを卸す事自体は鰻や穴子と変わりませんのですが、ハモ調理の要は『骨切り』にあります。関東型の鰻裂き庖丁に似た専用の『骨切り・ハモ切り』包丁というのもあります。
ハモのさばき方
暴れるうえに、ぬるぬるして掴み難いのは鰻と同じですが、ハモはそれに加えて危険な鋭い歯があるからやっかいです。活きハモを〆る時はくれぐれも注意して下さい。噛まれたら大怪我します。〆て下アゴをぶった切っておくと安全です。
活鱧を〆て下あごを切り落とす
〆たら庖丁でぬるぬるをしごき取り、さらに水洗いしてよく落とします。粘液が残ってると後の作業がうまくいきますん。
(1)鱧の水洗い
目打ちをして
腹を肛門まで裂き
ワタを出します。
(2)鱧をおろす(開く)
背の皮一枚を残し、骨にそって切り開きます
一気に尾まで切り込み、開く。このへんは穴子・鰻と同じ。
中骨を外します。
穴子と同じように外すか、
穴子のさばき方→
または、ここで頭を落とし、そのまま返して背を上に向け、一般の魚を三枚におろす要領で中骨を下から切り取る方法があります。自分がやりやすい方でかまいません。
腹骨をすき取ります。
邪魔になる背びれを取りましょう。
尾先の背ヒレに斜めに庖丁を入れて、
そこからヒレを頭側に引っ張ります。
(鱧の背びれは付け根が堅牢なため、手で握って強く引っ張ります)
背鰭が取れました。
次は骨切りです。
(3)ハモの骨切り
下の様なハモ専用の骨切り包丁がありますが、
ハモを常時扱う板前ならともかく普通は持ってないと思います。実は骨切りは薄物の庖丁であれば何でもいいんですよ。なけれは他の庖丁でも可能です。牛刀すら可です。(ただし、専用の鱧切りを使う方をおすすめしますが)
頭側から背の皮を残して庖丁していきます。
皮を切り離さない様にしますが、庖丁は皮までしっかり達するようにしないと骨切りの意味がありませんので、その辺が難しいところです。
「ジャリジャリ」という骨を切る音をさせながら尾まで骨切りします。
骨切りの間隔は一寸(3㎝)幅に24~25本の切り目を入れるのが理想ですけども、慣れないと難しいです。21本くらい入れればよいでしょう。
骨切りした身は右に倒しておきます。
一口大のサイズにカットしましょう。
※上の画像のように、先に尾まで骨切りしてからカットするか、骨切しながらカットしていく方法があります。「落とし」にするなら骨切りしつつカットしたほうがよく、その他の料理にするのならば前者がよいでしょう。
ハモの落とし ぼたん鱧
先ほど切り落としたハモの身を霜ふりにします。
沸騰した湯に15秒くらい入れ
冷水に取ってしめます。
骨切り部分が開き、花のようになります。ですからこれを「ぼたんはも」と呼びます。お造り、椀種、握りなどに。
通常はこのように梅肉で食べます
ハモの料理 その他
皮を取り生刺身にして山葵醤油とか、牡丹をスライス胡瓜と合わせた酢の物「はもきゅう」などもあります。
はも寿司
照り焼きよりやや薄い地でつけ焼きに
これを押しずしに
押し寿司→
はも笛
これはハモの浮袋。通称「笛」
こうして見ますと「笛」に似ていますね
鰻の肝吸いのように椀種などに使えます。
ほか、工夫して色々な料理にしてみましょう。
ハモは「梅雨の水を飲んで旨くなる」と言いまして5~8月が旬で、祇園祭が終わったらハモの値段が半分になるってくらい。
しかし9月頃に明石で獲れたハモは『金バモ』と言いまして、絶品です。

淡路島の沼島あたりのハモが最高なんですが、最初は「骨切り」をなかなかやらせてもらえませんでした。包丁で一寸の間に24回の切れ目を入れる練習を、野菜のクズでしたもんです。ちなみにハモは大体1キロ以上が普通なんですけども、「落とし」にするなら「つ」の字(500グラム前後)が最良です。
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