包丁の価値が無限大に【主婦の文化包丁】



読者投稿の包丁画像〔#47〕

投稿者:すみれ(女性)
職業:和裁士兼主婦

手前板前様 鰯さばき方でお勉強させていただきました。

昨夜 鰯を調理し あまりの下手さに情けなく…次こそは上手にさばきたいものです。

包丁のとぎかたも参考にしたいです。切れなくなると実家の父に研いでもらっていましたが、先日 息子が修学旅行先の奈良で私の名前入りの包丁を買ってきてくれました。

前に 鋼の包丁を錆で駄目にしてしまった経験があるので、息子には勿体無くて使えない…大事にしまっておけな~と言ったら

使わないと意味無い!!

と言うもので自分でお手入れし永く使いたいと思っています。

研ぐのは大変不安ですが頑張ってみます♪


魚山人より
(※この投稿はこちらからお願いして掲載したものです)

8Aゴールドという鋼をステンレスで挟み込んで作った文化包丁ですね。奈良の『菊一文珠四郎包永』の包丁です。

ステン単体、鋼単体で造られた物ではなく、研ぐ部分のみが鋼になっている「割り込み包丁」なので、とても研ぎやすいですよ。

新品のうちは切れる筈なので当面は必要ありませんが、しばらく使用して切れなくなってきたら自分で研いでみましょう。

砥石はそこら辺にある普通の中砥(赤色の奴です)で大丈夫です。荒砥も仕上げ砥石も当面必要ないと思います。

まず砥石に十分水を吸わせ(水を入れた容器に30分沈めておけばいいです)、水平な場所に濡れ布巾を敷いてその上に置きます。

次に古い包丁で仮研ぎしてやります。
刃を研ぎ出す為ではなく、砥石の粒子(トクソ)を表面に出すためですので、デタラメな研ぎ方でもかまいません。少しだけ水をかけてやると早くトクソが出てきます。

トクソが出てきたら本番です。
この包丁を研いでみましょう。

これは文化包丁なので「両刃」です。
包丁を普通に持った時に「右側」になる側の刃を先に研ぎましょう。
十円玉3個(割り箸の厚みと同じくらい)の角度をつけて石の表面に刃先をあて、押すようにして研ぎます。

これを20~30回繰り返し、今度は裏側を研ぎます。十円玉1個分の角度で5~10回。

これで何かを試しに切ってみてください。
切れないようでしたら、上記を繰り返します。

使い終えたら少量の洗剤をつけたスポンジで刃と柄を洗ってすすぎ、乾いた布巾で水気を拭き取って仕舞うようにしてください。
それだけで10年単位の年数を経てもまったく変化しませんし、錆びることもありません。

手入れの際は、柄が盲点になってきます。長く使っていると柄のほうが先にダメになりがちだからです。

汚れは柄に集中しますが、刃と違って汚れが見えにくく、刃は洗っても柄は洗わずに放置しまうのが通常で、だからこそ柄が先に腐ってしまうことが多いのです。

洗う癖をつけていると、まず腐ることはありませんが、もし汚れが落ちないような状態になった場合(早くても数年後かと)、タワシやスコッチブライト、金たわしなどでゴシゴシ洗わずに、こちらのページを参考にしてください。
包丁柄の汚れを落とす

この包丁は「赤柄」ですので、上記のやり方ですと「まだら」になってしまいますけども、原液を使ってやれば朴の地肌が真っ白に出てきます。
まぁこれは予備知識に留めておいて下さい。
実際にそこまで柄が汚れることはないでしょう。
先に書いたように柄も洗っていれば、まず必要のない事です。

修学旅行で母親のために包丁を買う。
その気持が嬉しいじゃありませんか。

見てくれは普通の文化包丁でも、その値打ちは文化財クラスの日本刀よりも上だと思います。

人間の「心」に勝る宝はありません。
息子さんの気持ちがこもったこの包丁は、すみれさんの一生の宝になるでしょう。

2013-12-15