グルメ本などを読んでいますってぇと、「本物志向」で溢れてますが
こんな言葉が流行ってるって事はつまり「偽物の時代」だって事でしょ?
スーパーとか特に最近増えた生鮮から何から100円だの99円だので売ってる店なんか回ってみますと、これが感心しますわ。
かゆい所に手が届くって感じで、こうあって欲しいという消費者の気持ちをよく分かってる。ネギを刻んだものまで冷凍やドライで売られてる。
この店に来れば家庭生活のすべてが賄える、って商品開発してる人たちの気持ちが伝わってます。
ふと、ある事に気がついたんです。
見てくれの悪い物は誰も買わないから、姿を消してる。
売る側は規格が統一してるから利益が出やすい
買う側はサイズが同じで型が一定の方が使い易い
余計なあまりが出ないコンパクトさが良いわけですな。
ここで考えたのが、おいら達料理人の責任でして、見てくれの良さばかり求め過ぎてねえか?って事。例えば最近は昔と比べて鮮魚の色つやがやたら良いと思いませんか?ありゃですね、色だしの技術が進んでるんですよ。
色粉でマグロを染めたり、ミョウバンで魚のツヤを出したりってのは昔からありましたが、最近はサバ、サンマ、イワシ、ブリ、カンパチ、タイ、ともかくよく使う魚はほとんど色だし加工されてますね。当然人体に害はありませんけどね。おいらが小僧んときゃ河岸で魚のエラぶたを開けてエラの色を見たらイチコロで鮮度の良し悪しが分かったもんです。今じゃそいつも怪しいもんだ。
なんで業者がそんな事するかって考えますと
結局おいら達が見てくれの良いものにしか手を出さねえからで
それは当たり前の話なんで
でも、その繰り返しが「見てくれだけ良ければ多少は目をつぶってもいい」
になってる気がするんですわ。
もちろん保存・輸送の進化はあるにせよです。
関のサバだ
明石のタイだ
何処そこの何某だって名乗りを上げてるモノが受けるってのは
他のモノは正体不明で何か分かんねえって事で
何食わされてるか知れたモンじゃねえって話じゃねえのかな。
(これを書いてから二年以上が経過しました。
その間起きたあらゆる食品騒動を思い起こされたし)
何を食ってるか分からない不安
だから本物を求める
本物志向を逆手にとって売る業者
そんな業者に高い金を払い「虚栄舌」を満足させるニワカ食通
それが今のグルメブームでしょう。
それのどこが「本物」なんですかね。
本物は追っても追っても手が届かず遠のくばかり
そんな毎日の板前がここにいます。
Posted by 魚山人 2006年09月
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