学校出たばかりの板前見習いを事情で預かっております。
線が細く、あまり声も出ないタイプ。変な臭いがするんで聞いてみますと、なんと香水をつけてやがる。汗を押さえるのからコロンまで何種類もあるってぬかし、「今時はみんな使ってますよ男でも」。ブチ切れそうになりましたけども、短気は体によくありません(笑)
それでもコイツは素質があると内心思っております。何故かと言いますと、返事です。使い物になるかならないかを見る第一のポイントは返事なんですね。
長年若いのを沢山見てますと、とても良い子もいますし、頭の切れるのもいます。トロイのもいますし、ハキハキしたのもいます。速攻で使えないのも多いです(笑)でもね、返事ができない子はどんなタイプにしろ結局は育たないんですよ。
接客商売は「想像力」です。
他人の心を読まなきゃいけない。お客が、そして料理人達が何かを言いおうとしたらそれを瞬間的に理解できなきゃ「回らない」んです。でもそんな事ができる様になるのは簡単なことじゃありません。そこに到る第一歩が「返事」です。
何かを言われて「ハイッ」と返事するのはチーム作業の基本と言うよりも、むしろ人間としての基本です。が、これが出来ない人間が最近はやたらと多いんで驚きですよ。たまに外食店を覘いて周りますと、お客さんにさえ返事できないのがやたら目に付きます。接客業ですよ、問答無用ですなこんなのは。
戦場の様な忙しさになった時などは、料理人もホール係も同じように気が立ってくるものです。両方とも追いまくられて「今自分がやってる作業」から手が離せなくなります。この時に分かるんですよ。素質が。
この状態になると普通の人は何か言われても返事をしません。聞こえてはいるが、今は違う事してるので返事する必要がないと思うし、出来ない。
ところがね、何よりもどんな事よりも仕事中は「返事をするのが最優先である」事を直感的に悟り、いつどんな場合でも必ず「ハイ」と元気良く返事できる人間がたまにいます。
教えるまでもなく、店内はチーム同士の「返事」により仕事が流れる事をみてとってる訳です。「本質的な頭の良さ」とあとは躾の良さでしょうな。この様な人間は将来間違いなく伸びて行きます。
鮑を剥こうとしたら傷が入ってました。
左下のあたりに白い線が見えますでしょうか。これが傷。これがあると身が弱ってまして、放置すればいずれ「あがり」ます。(死にます)
そこで見習い君に、
「これ好きな様にしてごらん、まかないで食べよう」
庖丁の使い方は習って来てますので、鮑くらいは料理できます。
「刺身にしてもいいんですか」
勿論異存はありません。
「出来ました」
刺身の切り方自体はまだまだ及第点をやるわけにはいきません。
でも良く分かりました。
こいつは「料理で人様を楽しませよう」の心を持っています。
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Posted by 魚山人 at 2008年
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