春野菜を煮る 


春野菜を煮る

奈良の伝統料理に飛鳥鍋というものがあります。
鳥の出汁に牛乳を加えて仕上げるのが特徴ですが、まろやかさとコクを加えるのが目的で、牛乳自体が珍しかった時代には高貴な料理だったのかも知れません。


洋食でクリーム・ソース系の料理を作る場合、野菜は水ではなく牛乳で煮込みます。そこにシックニイングを加えて煮汁を濃厚にします。
和食の煮方は水から煮ていくケースが多いですね。
炊き合わせでも、複数の野菜を一緒に煮るって事はしません。
これは野菜は各種で特徴が違いますから、同時に煮て仕上がりにムラが出来ない様にする為ですが、それぞれの野菜の持ち味を失いたく無いって日本料理伝統の考え方からです。

しかし栄養面では問題があると思いますね。
栄養と素材の色や持ち味を失わない野菜の煮方は、牛乳で煮る方法です。飛鳥鍋の様にコクを出す為というよりも、栄養の観点からその方が良いからです。
しょう油味の煮物には適しませんけど、これから新鮮な春野菜を入手出来る時期になって来ます。野菜自体の味と栄養をそのまま味わってみたいなら、牛乳煮がおすすめですね。


沸かした牛乳に野菜を入れかき混ぜると、牛乳の蛋白質が野菜表面に膜を張り、栄養と色を保持します。酸とアルカリが中和するからですね。
大事な点は煮る温度。野菜を入れた後に沸かしてはいけません。沸騰寸前の状態を保ちます。これで温度は90度くらいになってまして、何度か書いた「酵素を壊す」温度ですね。これが肝心になります。沸騰させたり、煮過ぎてしまえばすべてぶち壊しで、なんの意味も無い料理になってしまいます。
春野菜は火が通りやすいのが特徴です、野菜を入れたら鍋の前を離れてはいけません。

こうする事で春野菜に限らず、野菜の甘みを保持した煮物になりますので、味付けは少量の塩だけで美味しく食べる事が出来ます。非常に健康的であるし、家庭ならではの料理ですね。
煮汁も美味しくなりますので残さず飲めます。

Posted by 魚山人 2007年01月06日

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