ズレた感覚



ズレた感覚と包丁傷

寒くなりましたねえ。
早朝の築地市場を歩いている連中の吐く息なんぞはアナタ、まるでゴジラが放射能光線を発射してるようなアリサマになっておりますよ(笑)

2013年も残すところ僅か数日。皆様は今年なにか良い事がありましたでしょうか。

こんな生き辛い日本の社会ですから、ほんの僅かでもアナタに幸せな瞬間があったとしたら、同胞としてとても嬉しく思います。

本当に日本は情があって根の優しい人が多い珍しい国なんです。残念ながら今はそれが全部裏目裏目に出ちゃうし、良さが「悪いこと」だとさえ思われてしまう時代になっちまった。

ですから傷ついていると思うんです。根の優しい人達の心がね。
「そうじゃない」と思っては泥をかぶり、「今度こそ」はと信じては裏切られ、優しさがアダになって返ってくる現実にいつしか心がカサブタになっている。

そんな日本人達にね、少しだけでもいいから「心の呪縛が溶けてしまう瞬間」が訪れてくれたなら、同じ日本人としてやっぱり嬉しいもんなんです。

ついこないだね、料理の仲間と久しぶりに明け方まで飲み交わしました。相手が発したふとした質問で話が長くなってしまったのです。

「鳴り物入りで再出発したアノ”料理の鉄人”が、あっという間に終了した原因は何だと思いますか?」

これはね、もちろんテレビ局がアホだからなんですが、彼が知りたいのはもっと本質的な原因だとすぐに分かったんです。

そこでおいらも「本質的な答」を返したんです。

「20世紀の終わり頃にさ、日本に天才たちが続出したのを憶えているかい?」

「安室奈美恵、宇多田ヒカル、これは真性の天才だね」「ミスチル、浜崎あゆみ、持田香織、カリスマ達が一杯出た」

「特に宇多田、浜崎、安室は凄いんだが、面白いのは21世紀の日本が彼女たちを受け入れられなかった事だよ」

「はっきり言えるのは彼女たちの才能は”摘み取られてしまった”ということだろう」

「彼女たちが”最後の昭和世代”なのも面白い」
「ピークが2001年頃なのも興味深い」

「皆が”新しい才能”を待ち焦がれている」
「でも飛び抜けたモノはすぐにスポイルしてしまう」
「スポイルというか、平準化してしまうんだね」

「言っている意味が分かる?」
「道場六三郎は育たないってことさ」
「特に平成時代には育たないんだよ」

「底の知れないバカと言うか、道場先生に水戸黄門の格好をさせてしまうマスコミ人」

「無理やりにでも偉人を”普通の人”にしようとする」
「誰もが本音では普通の人など観たくないのに」
「普通のマネが出来ない人は自動的に排除する」
「そこまでして安心感を得ようとする平成時代」

「演出ではない、昭和の修羅場で鍛えられた筋金入りの本物の道場六三郎が観たいのであって、ドギツイみえみえの演出など誰も観たくはない」

「だからといって、バラエティ慣れした脳は自分たちと違いすぎる本物への受容体が喪失しているので、真面目な事象は受け入れることができない」

「終了するのが当然ということなのさ」
「幸いだったよ。アレが続いていれば才能のある料理人が何名も犠牲になっていた筈だからね」

「祭りあげて、引きずり下ろす、だ」

「まぁ安室や宇多田の歌声よりもね、AKBのミニスカの方が好きなんだなこの国は」

こんな事を書きながら、つくづくおいらは今の時代から浮いているなぁと思います。もう完全にズレてますな(笑)

おいらにゃね、さっぱり分からんのですよ、昨今の「流行」やらいうモンが。

「アマちゃん」ですか、あまりにも周囲がウワサしてるんで数回観てみたんですが、何がどう面白いのかゼンゼン分かりませんでした。あの女の子は目がキラキラして可愛いですけどね、ドラマとしては意味不明。

「半沢・・」なんぞも問題外。役者には悪いがどう見ても「普通の男」でしかなく、感情移入はムリ。

「いつやるの 今でしょ」
いつになっても誰も何もやらないくせに、アホか(笑)

「お・も・て・な・し」
はいはい、そうでしょうとも(笑)

笑ってる場合ではなく、身体機能まで少しズレて来たようです。先だって腕を包丁でバッサリやってしまいました。

久々に「みせ包丁」をやり、尺二(36cm刃)の包丁をクルクルと振り回したところ、小指が絡んで受け損ね二の腕に刃先がズブリ。

こんな怪我をしたのは生まれて初めてです。
仕事中に包丁で指や掌を切るのは若い時の日常でしたが、腕を切るなんてヘマはあり得ない。

「そろそろ完全に引いて、指導に専念するか」
今年はずっとそれを考え続けました。

それでね、やっぱ死ぬまで現役を続けることにしました。包丁修行をやり直し、死ぬまで練習します(笑)

ともかく、今年も終わりです。
来年こそは「ギラギラ光る真っ直ぐな目」を持った日本の若い衆が出てくることを願って、年を越したいと思っております。出てこなかったら、海外で探すとします。

どうぞ良いお年を。

2013年12月




手前板前.魚山人:The person who wrote this page筆者:文責=手前板前.魚山人