失くしてはいけないもの



冷故痴沁

「温故知新」
板前ブログの初期から、この言葉をサイトの端に貼り付け続けています(今はHP)。おいらが書き続けて来たものを、もし残らず読んでいて下さる人がおりましたら、なぜ「温故知新」に拘るのか何となく理解して頂けるのではないでしょうか。

下手糞で稚拙な文章ではありますが、全編に流れているテーマは、「失くしてはいけないものがある」って事です。

『失くしてはいけないもの』です。

何故だと思いますか?
簡単ですよ。「過去を失えば未来が来ない」からです。

おいらが書いてきたもの。
今の世を辛辣に描写する記事は多いです。
しかし微かでも希望に期待。

「ひでぇ社会だが、まだ望みはありますよ」
「心ある人々はまだまだ大勢いる」
「心確かに生きて行きましょうや、頑張って」

言外にではあってもそこに落とさなきゃ書いてる意味は無い。
たんに文句だけをたれてる様な文章に存在意義はないからです。

人ってのは、勝ち続ける事はできません。
だからと言って敗北と仲良くなっては人間がいじける。

どうやって『眼力』を保って生きるか。
魚の腐ったメンタマの様にだけはなっちゃいけない。

「書きたい事」はおそらくその辺だったと思います。
形而下的日常である『食』からでも形而上的に語れるはず。
実際はそんな大層なモンじゃなく、子供に近い文章ですが。

【全てが足元からガラガラと崩れてしまう】
今回の高齢者所在不明問題で、そんな衝撃を受けています。

ここまで深く腐蝕してるとは流石に考えていませんでした。
日本という国と日本人がです。

「茶寿」(108歳)をも超え「珍寿」に達しようとしている御老人の住所がね、「公園」とはいったいどういう事なのか。

情け無いにも程ってもんがありましょう。

戦後65年という事もあり、国営放送では連日のように先の大戦に関する番組が放送されております。
主旨は概ね「風化させてはいけない」で、それはよく分かります。

ところがこの高齢者所在不明問題は、
「風化させてはいけない」どころの騒ぎじゃないでしょう。
それ以前に「今現在が風化してる」って事がはっきりした訳ですよ。

今週は盆で、ついでに終戦記念日。ようは敗戦が決定した節目。
だが盆ってのは、もともと「夏休み」ではない。

祖先を供養する期間なんです。
おまけに翌月は「敬老の日」がある。
政府の方針で「シルバーウィーク」などと称して休みを増やし「休んで遊ぶ週」のごとき愚かさですが、本来の意味は違うでしょう。

この時期に高齢者所在不明問題が表面化した意味。
このタイミングを「何かの警告」だと受け止める感受性を持つ日本人はいないのか。

どうも「いない」らしいのが、「衝撃」なんですよ、おいらは。

気になるのは「日本の平均寿命が下がるかも」って事くらい。
涙が出ますね、ここまで心が殺伐としているとは。

「繊細な思いやりの心を持つ、律儀で慎み深く、謹な日本人」
こりゃもう、現実とかけ離れた「妄想」の域だというのか。

その「答」が一連の高齢者所在不明でしょうな。

戦後の焼け野原から高度成長、バブル期、バブル崩壊後の空白期間を経て輸出型経済成長は他国(中国等)へシフト。
その間一貫して日本人は「日本の文化」を捨て続けてきました。

結果として今、我々は「何を得たのか」
そして「何を失ったのか」

この夏、そこをじっくり考えてみたいものです。

不寛容な国へ

禁煙ファシズムが定着しつつある様です。
4月1日から神奈川県は全面禁煙に踏み切りました。
飲食店や旅館も小規模店などを除き、禁煙か、禁煙エリアに煙が流れない設備をつける完全分煙かの選択が義務化。
完全分煙には費用がかかるので、全面禁煙にする店も出ます。

そして予想の通り「深刻な客離れ」を招いていますな。

ヒステリーでは済みませんなこうなると。
なにせ国(厚労省)や自治体(神奈川県など)が、「強制的」にすすめている動きですからね。「全体主義」へ踏み出してる。

それほど国民の健康が心配なら法律でタバコを禁止するのが筋道

植民地時代の西洋、そして戦国以降の日本で、為政者が民を支配するための常套手段は、「民同士に内部分裂を起させ、対立させる」です。
その手にのった衆愚は、互いに争いを始め民族差別や階級差別に夢中になり、為政者の権力には目を向けません。
これほど効果的な「支配」は他になく、他は「戦争」くらいでしょう。

マトモな政治や行政が出来ぬ自分達を攻撃するエネルギーを、煙草を吸う「悪い連中」に向けなさい。そういう結果になるでしょうね。

ついこの間まで、お客同士が煙草を理由に争う事などなかった。
それが今じゃどうです。二派に分かれて見苦しい対立。

料理人に喫煙は薦められないが、それでも吸う人は仕方ない。
無理にやめさせる気もない。それがその人の精神の安定を保っているかも知れないじゃないですか。嗜好品ってなそんな存在なんです。
副流煙は毒って言いますけどね、それをお上が規制対象にするには少なくとも50年分くらいのデーターを出して完全に証明すべきでしょう。(※煙草を肯定しているわけではありません。喫煙が血管や肺にダメージを与えるのは確実なワケで、健康の為には吸わない方が賢明です)

80歳を超えてなお元気な煙草好きの存在をどう説明するのか

国が本気なら、煙草などより食品添加物や精神・肉体を病むほどストレスを発生させる労働環境などに目を向けるでしょうが、それはしない。

神経質に煙草の煙を避けて、仮にそれで長生きしたとしましょう。
そして100歳を超えるとする。
高齢になったあなたを待っているのは何でしょうかね。

所在不明になった老人達は他人事?
その心の狭さと想像力の無さに、慄然としたものを感じるしかなく、この国の先行きに暗雲を見ます。

厚労省がすべき仕事、国営放送が訴えるべきテーマー、そして国民全員が向き合うべき問題。そこに至らぬ心の雑さ。

我が国はどこまで狭くなって行くんでしょうか。

「高齢者所在不明」、つまり御年寄りが消えている問題のメタファーであるとも言えましょう。

さて、ここ暫くは人手が足りませんので、自ら数人分の仕事をこなす必要があります。おいらにとっては何より顧客が優先しますので、休む気はありません。

相棒の鯔次郎氏も色々心配をしてくれてますが、頑張るしかない。
鯔さんには申し訳ないが、おいらは頑丈なんで(笑)

倉本聰脚本でビートたけしや長渕剛が出演する8月14日放送のTVドラマ「歸國」。こいつを楽しみにしております。
この国が戦後失い続けて来たもの、それを倉本聰がどう表現してるか、ビートたけしがどういう風に抉り出す演技をするのか。興味がありますね。録画して後日じっくり観るとしましょう。

2010年08月12日 魚山人


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