酔いどれ街  

酔いどれ街

「お疲れ様!」
元気良く板前達が、
そしてホール係の者達が店を出て行きます。

家に直行する者もいるが、
縛られた一日を解放された想いが強い。
だから街へ出る奴等もいます。
癒しと、そして出会いを求めて街に出る。

若い時にゃね、
仕事の腕も身につけたいが、恋も手に入れたい。
欲張りだが仕方がない。それが若さって奴です。

おいらだってそうでした。両方とも欲しい。
寝る暇なんぞありゃしません。
深夜の板場でひとり、大量の仕込みを黙々とやる。
その隣に何故かつきあってくれてるホールの女の子。
ぶっちゃけ
そういう感じでもって板の女房になった方も多い(笑)

でもまぁ大半は飲みに出る。
仕事で疲れれば疲れるほど人は飲みたくなる。

人生ってのはね
勝とうともがけばもがく程勝てない時期があります。
マイナスの連鎖、平たく言えば「ドツボ」ですな。
何をどうしようが裏にハマってしまう。

それを「緩く」してくれるのが酒です。
負の連鎖を正面からマトモに受けてりゃ気がおかしくなる。
普通の人間は睡眠だってとれなくなります。
酒に手を出す。
人ってのは弱いもんなんです。

一時的にでも逃れたい。それを可能にするのが酒。
こりゃ麻薬と同じような原理ですので、
惨い中毒症状もそれに等しいのですが。
意志の弱い方は酒と縁を断つべきだとも思う。

しかしまぁ経験上アル中ってのにはそう簡単になりはしません。
だいたいの人間は「自己防衛機能」が勝りますんで。


街に散った者達は異性を物色する。
もしくはやりきれない毎日を酒で癒す。

この世で自分が一番最低の状況にいる気がする。
世を、周囲を恨みたいが、
恨んでも無意味なのを知っている。
だからせめて酒でも飲まなきゃやってらんない。

「日本人は損してるって言うがなぁ」
「確かに損はしてる。はっきりと物が言えないからな」
「だけど損を呑むのが日本人の世界に類のない美しさなんだよ」
「それがなんだってんだよ、今のツンツク欲の皮の張った日本人は」 「損して得取れって精神はどうしたってんだバカヤロウ」

こんなふうにクダまいてる魚板さんもいたりしますがね(笑)

まあどんな理由があるにせよ人は飲む。
幸せを実感するためにだって飲む。だから祝酒もある。

徘徊、付き合いの「なんとなく酒」
恨みつらみの「グチ酒」
虚勢を張る為に呑んだ「勢い酒」
どちらにしても自分の中にある「毒」を消すか
はたまた悪化させるか。

そいつはサイコロのメみたいなもんでしかありません。

徘徊してた街の夜闇もやがて白む。
夜明けの街でカラスがゴミ箱に集っている。
大都会で見れる鳥類が真っ黒なカラスとは
似合いすぎて皮肉。

光が差す無人の街を見て思います。
いくら飲んでもね、
この檻からは出られないんだと。

「プリズナー」柳ジョージ

ジョーちゃんの声で聴いて欲しい
「娘よ・・・」柳ジョージ

2009年09月16日

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