楽な方がいいに決まってる  

蝉時雨のあしおと

そろそろ紫陽花も色気を放つ時候になってまいりました。
ここのところ週末は必ず雨ですが、それも紫陽花の開花に勢いを与えているんでしょうかねぇ。雨がよく似合う花です。

その時の心持次第ではカコフォニーの様に不快な音の弾幕にしか聴こえない蝉の鳴き声(正確には鳴き声ではありませんが)、暑さで湧き出す玉汗を拭い、天を仰いだりします。

〈余計に暑くなるから静かにしておくれ〉声に出さず文句を言ってみますが、そうするとなお一層五月蝿くなるばかり。

蝉時雨(せみしぐれ)とはよくいったものです。

もう少しでそんな季節に入ります。
硝子鉢に盛った蓴菜に青梅の生姜酢を張る。
夏ですな。

昨年末から本年前半にかけて世の中は本当に色々ありました。良い話は少なく、翳りの濃い空気の充満。生きる勇気とかヤル気とかを削がれてしまう現象ばかり。

仁王に構えて前進する気持ちを失い、気が縮小された方も多いでしょう。財布が軽くなる傾向は人の精神を内向きにさせるものです。

俯瞰して考える心のゆとりは無いとは思いますが、少し引いて思考を巡らせる事も大切ではないでしょうか。これまでが異常だっただけで、今は正常に戻りつつある。
おいらはそう思っております。

『楽をして億万長者になる』
端的に言えばこれが日本人の思考を染めている。
これ一色だと言ってもよい。

そんな事が可能なのは千万人に一人しかいない。
冷静に考えればそう分かるのに、線が引けない。
TV番組が扇動するにしても妄想と現実の区別くらいつくはず。

結果として苦労を買って出る日本人が消えて行く。
「そんなのは馬鹿みたい」
「楽な方がいいに決まってる」

子供も大人も老人も、例外なく感染している。
貴重期間の20代の若者達も、より楽な道を選択する。

楽をして成功した者が偉いという空気がこの国を覆っているのです。
日本人の持つ美徳はどこに消えてしまったのか。

この流れの先にあるものはいったい何か。
それは推して計るべし。

楽をして実になるものなどこの世には無いのです。

精神の中にある階段を着実に一歩ずつ進み、堅牢な人生観を構築していかぬ限り、例え「玉の輿」の様な幸運に恵まれようとも真の幸福と充実感を得る事はできす、いずれ不毛な心に荒廃の風が吹くだけでしょう。

やがて訪れる荒廃の雨と風
その跫音が聴こえる人であってほしいものです。

2009年06月06日

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