マグロと『海の犬(シー・シェパード)』 


マグロと『海の犬(シー・シェパード)』

シー・シェパード(SS)のワトソン代表が、地中海でクロマグロ漁の妨害を行うと宣言したのは2月9日。

おいらは今年1月4日にUPした記事でこう書いております。

日本古来の「捕鯨」が瞬く間に消えてしまった様に、マグロだって完全に排斥される可能性が充分にあり得るのですよ。それこそ「あっという間」に。先の「馬鹿野郎達」は鯨船からマグロ船へと標的を変えてくるでしょう。
初食いは鮪握鮨 マグロ排斥

何気なく一行で流してますけども、確信はありました。
耳にした情報と、あの団体の性質を思えば、そう推測するしかない。

翌2月10日には日本の「日新丸」に、ロケットランチャーで酪酸弾を打ち込んで負傷者を出し、12日にも「昭南丸」に酪酸ロケットを発射、乗組員を負傷させています。

15日にはとうとう水上オートバイを使い昭南丸に浸入。
これは「不法入国」と同じですから、弱腰の日本側もさすがに身柄を拘束。海上保安庁に身柄を引き渡しました。国が国であれば、その場で射殺される可能性だってあるし、長期間刑務所にブチ込まれるはずの行為です。

しかしシー・シェパードはさらにエスカレート。
19日に、「日新丸」対して今度はレーザー光線を照射。

こりゃ一体全体何事なのか。

とうとう第3管区が動き、「アディ・ギル号」の船長を『逮捕』したのが3月12日。

しかしシー・シェパードにしてみりゃ「任務完了」ですな。
2月末に南極海での調査捕鯨への「活動」(今年の)を終了すると宣言してます。もう鯨には興味がなくなっしまったんでしょう。

一連のエスカレートした行動は、「目を引くため」です。
3月13日からカタールで開かれる「ワシントン条約締結国際会議」に向けての「日程調整」ですよ。

この会議では、大西洋・地中海のクロマグロの国際取引を全面禁止しようといういう「モナコ提案」が議論される予定。

しかし、大西洋と地中海でクロマグロ漁をしてるのはヨーロッパの漁船。従ってEUは「モナコ提案」に反対する意向でした。

ですから「暴れる」必要があったのですよ、彼等は。
シー・シェパードの勝利です。EUは手のひらを返しました。

EU、クロマグロの国際取引禁止支持で合意
【3月11日 AFP】欧州連合(EU)は10日、モナコが提案している地中海・大西洋産クロマグロの国際取引の禁止を支持することを決定した。米国も支持を表明しており、クロマグロの最大消費国の日本は厳しい状……2010年03月11日 10:30AFPBB News


なぜ「エコテロリスト」に対し、欧米はユルユルした態度なのか。

シー・シェパードには欧米の著名人達の支持と「寄付金」があります。
そして一般の欧米人たちの「シンパシー」も得ています。

もともと陸上動物を歴史的に食糧とする肉食人種の彼等にとって、「魚食い」ってのは思い入れるものなど何も無いですからね。
つまり興味がない。それが本心です。

ですから「スシ」や「サシミ」がブームになっても、それに「執着」を持つほどではないのですよ。べつに無くてもよいものでしかありません。なくなっても困るものじゃないんです。

それに“クロマグロ保護”に関しては「まともな団体」であるグリーンピース他も、すでに行動に出ております。日本食レストラン等はもうクロマグロを置けない状況に追い込まれている。まるで70年以上前に米国で起きた「日本人排斥」を臭わす様な嫌な雰囲気になっております。


「鯨類は動物界で最大の「脳」を持っているので知能が高く、殺戮すべきではない」

しかし日本は殺戮などしてはおりませんし、鯨類が犬猫以上の知性を持っていると科学的に証明された事実もありません。

第一に「知性が低い動物なら殺してもいいのか」ってことになる。

たしかにイルカを始め鯨類は可愛らしい。
ウオッチなどしてみますと、情が移ります。
シー・シェパードの「攻撃船」には日本人女性がいたと聞きます。

しかしね、では牛や豚など陸上哺乳類は全然可愛くないのか。

おいらは何年も前に書いた鮪の記事でも鯨の記事でも、保護をしなくて良いなどとは全然書いていません。むしろ保護すべきだと主張しています。
マグロを知る

どんなに考えてみても、現在の流れは「まっとう」だと思えません。「保護団体」にも政治臭が濃すぎます。


「本物のネゴシエイター」がいないのが日本の不幸です。
下手をすれば日本は世界から袋叩きにあうでしょう。

「トヨタ叩き」など目じゃありません。もっとひどい目にあう可能性がある。かばってくれる国は、アメリカ?、中国・韓国・アジア諸国? それはありえない話としか言えないでしょうな。


※今回のクロマグロ規制で「まぐろが食卓から消える」などの意見があちこちで見られますが、大西洋・地中海のクロマグロはもともと「高級品」。なにせ「本マグロ」ですから。普通に「ホンマ」を食卓で食べてる家庭など、そんなにあるとは思えない。安くはないのですよクロマグロって奴は。「マグロを知る」にも書いてますが、バチやキハダはいまだ資源豊富です。オースト産のミナミマグロもあります。「まぐろが食卓から消える」は少々オーバーというものでしょう。 ただし、「今のところは」ですが




追記:後日談

今回は反対多数で全面禁輸は回避されました。 【幾多の野生動物を絶滅に追いやり、飽食の限りを尽くし肥満に悩む、資源を独占すべく世界中の自然を破壊しまくったあげく、「ゆとり」ができたら今度は自分達の行いを忘れ、「動物愛護・菜食主義」や「環境保護」をごり押しする「豊かな国々」。世界の中ではこのような「肥満国家」は少数派であった】という事なんでしょう。アフリカ諸国の反対票が効いた様です。

大多数の国々はまだまだ貧しいのです。
景気が世界的に悪いという側面も見逃せません。

アフリカ諸国の反対票を集票できたのは事実上「中国」の影響力であり、もし中国が賛成の立場を取っていれば採決は微妙な事になっていたでしょう。勿論中国が日本を助けたなど甘い受け止め方はできません。自国の都合により反対に回っただけです。

「豊かな国々」も内憂を抱えて足元が怪しく、「ゆとり」が消えつつある状況であり、欧米から新興国に富がシフトしている現状も無縁ではない。

記事にも書いていますが、欧米一般の人々は、マグロそのものに「興味がない」のです。TVニュースのインタヴューに「クロマグロは保護すべき」と答える「マグロ通の一般人」など現実には殆どおりません。「TVスタッフの努力」ですなあれは。メディアの報道で初めて知ったというのが大多数。そんなことに関心を寄せているヒマなどないのが事実でしょう。

つまり今回のクロマグロ禁輸否決は、政治的思惑(主に自国の経済事情による)ばかりで、日本の食文化に理解をしめしたからとは、とても言えません。

「豊かな国々」の一員でありながら世界のマグロの8割を消費する日本は、これからさらに責任が重くのしかかるでしょう。非難の声も消える事はない。SSはさらに過激な行動に出る可能性もあります。

小さな個体を根こそぎに獲る「蓄養」は、問題ありです。
味の面でも昔から料理人達には評判が悪い。

これまでの消費システムを抜本的に変えていく必要があるのは事実。稚魚放流など色々な枯渇対策に全力で取り組むべきでしょう。近大マグロのコストを下げるのも緊急課題です。

食文化を守るべく努力し、その努力を【世界に伝え】続けるのです。

2010年03月14日

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