師走夜咄
倉庫には重箱が積み上がり、板場では丸十(薩摩芋)がやたら目に付つくようになってきますと、「暮れが迫ってきたなあ」と感じます。

師走の献立というものはありますが、うちは予約されたお客様によって内容を変更する事がしょっちゅうありますので、仕込みのやり方もかなり変則的です。

器を眺める
そのまま鼈鍋会席に変えてしまうこともあれば、懐石の内容を精進にしてしまうこともあります。お客さんと必ず事前に相談し、また良い材料があればこちらから電話して内容を変えてしまう時もございます。
そして何の宴会なのかその目的で変えてしまうこともあります。
板場を一巡して洗い場へ行き、乾燥中の器を引っ張りだす。

眺めて頭の中で料理を盛ってみます。

盆を広げ、自分がお客になったつもりで配置等を頭に描く。

和食は器を眺めることで料理がきまってくれる事が多いんです。
懐石の場合も同様で、まず折敷を出して眺め、主菓子までの流れを頭に作り上げます。本格茶のお客さんには干菓子でしめる場合もある。それらすべてをまず頭の中で組み立てるのです。
先達の御言葉を拝借しますと、「着物を選び」、さらには「化粧をさせて」いるわけですね。自分の中で。
こうして器を眺めて料理をきめる作業をしてる時がある意味でもっとも楽しい時間なんです。料理人の仕事でよかったと思えるんです。
和食は海外料理のような「王様」の料理ではありません。
地域や「家」の料理です。
なのでお客さんの事を知っている必要があると思います。
無駄口は嫌いですが、予約を下さるお客さんにはこちらから色々な事を話しかけます。少しでも情報を知りたいからです。できれば育った地域と家庭の事情を知っておきたい。
その人に「感情移入」できるまでになっておきたいのです。
そうしますとね、器を眺める自分がその方と重なる。
その人になった気持ちで料理を想像できるんです。
嬉しい気持にさせてあげる。
それが和食料理じゃないかなと思うんですよ。
人様の喜ぶ顔を想像しますと楽しい気持になれます。
なので器を眺める時間がおいらは好きなんです。
和食の昼と歩み来る宵
料理の工程は地味な作業の連続です。
庖丁を使い火の前に立つ。その連続。
それを繰り返して漸く仕上げが近づいてきます。

このような料理作業というのは他の職業の方から見れば、「楽な仕事」なのかもしれません。
建設関係のように肉体を酷使するわけではない。
その他の仕事のように単調な作業をずっと繰り返すわけでもない。
しかしね、「身体の芯」が疲労する仕事なのですよ、板前は。
肉体の奥から噛む様に疲れが蓄積していくのです。
周囲の者に心配かけてはいけないので、まったく表には出しませんけども、一人帳場に引っ込み椅子にかけた途端に身体が「ギシギシ」と音をたてるようで思わず硬直する事があります。まぁ年齢のせいでもあるでしょうけどね。
「もう少し」
「もう少しだけ耐えてくれよ」
しかし願いだけではなかなか言う事を聞いてくれないもの。
食事内容をさらに検討し直し、薬膳粥なども加えたりします。
枸杞子/くこし(クコの実)などを粥に入れてみましょうかね。

時間を止めることはできませんので、儚さを思うのは時間の無駄というものです。元気なうちに自分にできることをしておく。それだけでしょうね。
2010年12月11日
Comment
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お疲れ様です。
俺が爺blogを見っけてからどれ位 経つんダロか…
今日ゎそれこそ 体の芯から疲労してる。
精一杯許される範囲内で
『若くいよう』と努力してんが 正直 この所 疲れが抜けネェようになった。
カミサンも同じ台詞を吐きやがる。曲がり角かもね。
爺blogと出会い とにかく勉強になっている。
単純に知識だったり
考え方だったり。
そしてコメされる方々の価値観だったり 意識やら意気込みなり。
ありがてぇよマヂ。
そんな有り難さを 超える
『有り難さ』に 本当に何回かだが 爺記事から得られることがある。そのヒトツが今日の記事。
俺自身に全く皆無だったモンを 携帯電話の小さな画面から得る。←こりゃ病気だね。もう
モールス信号にでも変換してもらうかね…
今日の記事からゎ俺
『器を眺めて料理を決める』←ってこと。 爺ゎ前から書いていた。 が ここまで俺の心ん中に ピン!とくることゎ無かったんだよ。
いろんな器が 店にあるが
だいたいパターン化してる。
ま 鮨屋だから 基本ゎしっかりとした鮨を提供すんのが俺の使命なんだが 俺にだって夢ゎある。
将来 自身が自由に商いさせて頂ける機会に恵まれたとしたなら 俺ゎ爺のおっしゃる『器から始まる』を実践したい。
センスゎネェけど イタヅラ書き程度の遊びある一つの品。
鮨屋なんてのゎ かしこまって喰う場所ジャネェ。
常にほころんだ顔を お客様に維持させんのが仕事。
そんための対面商売なんで余計なウンチクゎ言わネェが
『山椒ゎ…ピリリと』位ゎ
助太刀出来ネェとな。
もう手遅れだが
和食が うらやましいッス。
俺ね 時間が許されんなら
英会話と茶道を学びたい。
死ぬまでにゎ…
死んだらコメするゎ俺。
和食板前が 俺と違って どんだけ神経擦り減らしてっか。
鮨板で この疲労。
和食様にゎ申し訳ネェ。自分ゎ単にヘタレですから!
明日も出前注文が シコタマ入っちゃるけん もう寝かして貰うぜよ。
爺
あんがと。
Posted by 鯔次郎 at 2010年12月12日 01:52
鯔さん。
こちらの方こそ感謝してます。
正直言って最初の頃は扱いに困った。
おいらは昔かたぎの人間でね、
「人に文句たれてるヒマがあれば自分でやれ」
そういう考えを持っています。
初期の鯔さんの書き込みを見て、その手の人が来たと思っていた。
つまり掲示板あたりから流れてきたとみていた。
こりゃレスどころか削除しかねぇな、とね(笑)
いったい何が言いたくてコメしてくるのか理解できなかった。
おいらはブログはまだ5年になるかならねぇかだけど、ネット閲覧はもっと昔からやってます。自店のHPとかあったからね。パソコンはいじれないけど閲覧だけはできた。けっこう色々なサイトさんを見て回ったもんですよ。
意見を書き込みたくなるサイトもありました。
けどね、ヨソに書き込んだ経験はほとんど無い。
理由は簡単なことですよ。
「言いたい事があれば自分でサイトを作って書けばいい」
おいらはそれが常識だと思うんです。
「自分でやる」。そいつがおいら達の「習い性」なんです。
そうやって板前の仕事を憶えてきたし、それが修行だと思う。
それが身についちゃってるんですよ。しみついている。
そんなおいらから見ればヨソ様であれこれ書くのは恥ずかしい行為でしかない。「こうした方がいい」とか「俺はそう思う」という気持は自分で責任を持てる場所から発信するのが正当だと感じる。
多分そういう気持がどこかに出ているからこのブログは非常にコメが少ないのかもしれない(ソレハソレでサビシイガ笑)
自分自身では「一期一会」のつもりなんだが、そっけないヘンクツジジイと思われても仕方がないからね。
しかしアンタはおいらがどうしようが絶対に書き込みをやめない。
「なんだこりゃ」ですよ(笑)
雲かと思ったが霧消はしない。
「もしかしたらこの男ってのは・・・!?」
そう思い始めた。
おいらはね、「モノになる板前」って奴の性質を知っています。
頭が良いとか腕が良いとか、まして妙な板用語を振り回すハンチクでもない。たった一つだけですよ。【継続の力】です。
何かをねばり強く続ける根性です。それを持った人間。
「ハレ」に走らず、足腰(ケ)を地味に鍛えぬく姿勢。
地味ってやつは将来必ず「滋味」に変化します。
上っ面だけの「派手」ではなく、「地の力」とは何か。
アンタは「庖丁投稿」でおいらがなんで「錆びた家庭庖丁」を募集してるのか、それを理解してくれている。
おいらが魚山人だからって訳じゃねえだろうが、
鯔さんにその力があるから今じゃ「水魚之交」だ。
ネット上とはいえ鯔さんに出会えた「一期一会」に感謝したい。
本当に有り難う御座います。
Posted by 魚山人 at 2010年12月12日 06:04
父ちゃんにネットやBlogの事を説明してる時にワシが言った言葉
「読解力のないヒトに礼儀を求めるのはオレオレ詐欺師に福祉募金をしてくれと言うのと同じです」
思い出しちゃったけん。。。。
Blogは疲れまするよ~ ちったりしたっけ。。
でも鯔さんは違うね(*⌒ェ⌒*)
「・・・・・でも・・・なんかいい奴っぽいんだよなぁ」
そう言ってた父ちゃんとおんなじように、、、
ワシもいつの間にか鯔さんコメが楽しみになってた。。。
イイヒトでするよね
ちゅかさ。。。。。
父ちゃんも鯔さんも無理しちゃダメでしょ~( `ロ´)≪タクモ~
和食器ってすごく良いと思います
ここへ来てなおさらそう感じるんでするよ
あのね、、、
お濃茶を頂く前の懐石料理は禅宗からでしょ?
ワシの習った流派ではあまり懐石が出なくて残念じゃった
じゃさ、、、
普通の会席はいつ頃どんな場所で始ったの?
なんで懐石と反対にご飯が後から出るの?
?(*⌒∇⌒*)オシエテ
Posted by まる子 at 2010年12月12日 12:00
マルちゃんがそんな事を知らない筈はなく(笑)
なぜそういう質問をするのか意味はよくつかめてないんだが、
(というか質問を受け付けない事を承知のはずだし)
(っていうかなんで最近顔文字を使うのかそれも怪しいし 笑)
マルちゃんの事だ、無意味なことはしないはずです。
一応おこたえしましょう。
会席とは俳席から来ています。
俳人や歌人の集まりのことですね。
この言葉が用いられた時期は江戸初期。
料理自体はもっと以前からある。
ご飯が後から出るのは酒宴だからです。
なぁに~鯔ちゃんもおいらもまだまだハナタレ小僧だよ。
身体はピンピンしてる。ただ愚痴ってるだけですよ(笑)
でも心配してくれてありがうとう(^^
Posted by 魚山人 at 2010年12月12日 22:04
お疲れ様です
師走は休日無しで御客様と店につくしております
肉体的な疲れより精神的な疲れが感じられます しかしまぁ 先読みして頭で段取りするほど、からっぽ頭が弾けそうですよ(笑)この師走独特の逃場のないシビレる場面が たまらなく好きなんですが(^O^)
旅館仕事より、晒し仕事のほうが長くなってきまして、御客さんの顔を拝見し お声や表情、会話、人柄 嗜好 そして 喜んでくださる心に触れることが 晒し仕事で得た財産であり 日々の仕事も御客さんを想い どんなに辛かろうが 心が躍る瞬間でもあり 永く包丁を持っていたいと思えます 勿論旅館仕事でも沢山の板前が 同じ気持ちだと思っています。やっぱり料理が大好きで 器を眺めては顔が緩む瞬間を 食材と食べてくださる人から貰える 贅沢な仕事ですよ 辛い修行は涙を1人で流し 悔しさを力に変えれたから今家族を守れるのであり人に生かされているとこの歳で理解できました きっと遅いくらいでしょうか。
一期一会 この本質は魚山人さんに教わりました。鯔さんも言われておりますが ありがとうございます この言葉につきます。
自分は30真ん中。 自分勝手ではありますが 40歳からが 楽しみであります 自分に足りないものをもっと見付けたいし どんな出会いがあるのかとか、どんな気持ちで五十代を見据えるか ただ口をポカンとあけて明後日の方向いて生きてたら 味わえないような人生を生きたいですね(^O^)
魚山人さんが書かれた 人に文句たれてるひまがあるなら自分でやれ これは社会人になるまえからずっと思ってました 随分とこの感情が邪魔なのかと 悩んだ時期もありましたが 相手に悪気があろうとなかろうと この感情はコントロールできるようになりました それも晒し仕事になってからかな… 人間と接し 色んな人間を知ることが出来たからかもしれません。
本音だけで生きると 誤解や行き違いもあるんだと思いますが 相手への優しさがあればこそ その本音が魅力になるのかもしれません 誤魔化し流される生き方はしたくない そんな板前たちが昔も今もいます 魚山人さんや鯔さんも自分にとってはそういう板前だと思っています
かなり記事へのコメントから離れてしまいましたが 生意気な言い方になってしまうかもしれませんけど 鯔さんの二ヶ月後に見付けた、てまえ板前男前。細かいレシピブログなら同業の自分はコメントをしなかったでしょう。 今そんなことを思っています 糧になり 成長でき 勉強させていただけるこのブログは 好きですね(^O^)
皆様お身体御自愛しつつ 御活躍なされますようにm(__)m
Posted by たいら at 2010年12月12日 23:49
たいらさん、お疲れ様です。
庖丁の手入れ、磨き抜いた輝き。
物事の考え方。
たいらさんのような若手板前がまだ存在するって事実。
これをネットで見つけることが出来たのは最高の幸せです。
料理って奴はね、20歳から30歳の十年で全てできる様になります。
できて当たり前なんですよ。
ではその先は何か。
自分の「人間力」を磨く。真っ直ぐにする。
それしかありません。
度々書いていますように、
お客様は料理だけを食べに来ているのではありません。
料理は家で食べれば済むものでしかない。
家では食べれない「何か」を求めています。
人間は十人十色、みんな違います。
けどね、どんな人でも共通点があります。
人生の色々が染み付いた今の自分ではない「あの頃」
その時期への思い出が心の奥にあり、それを宝箱にしまっている。
「素」の自分を感じれる事象がなによりも心を打つんです。
それを「提供」してあげるにはどうすればよいか。
それは提供者が「真っ直ぐな考え方」を持ってるかどうかで決まる。
歪んで世間ズレした会話をシャレているなどと思う感覚では、まともな客はみな去っていくでしょう。
年末の張り詰めた板場の空気をたいらさんと語るのも、これで何度目でしょうか(^_^)。今年も頑張って年末年始を乗り切りましょう。
Posted by 魚山人 at 2010年12月13日 00:56
お疲れ様です。
魚山人様ならびに
まる子チャン。
すんげぇつまんネェだろうコメを今から入れます。
まずね
俺ゎ爺blogにコメするのが好きで好きで!だから もう病気(笑)
無理なんてしちょりませんわい!←まるチャン用語
とりあえず まるチャンへ。
ありがとうね!
『茶』の世界なんざ まるで訳わからん俺への 引き出しをくれて。
若いのに あんまり気を使い過ぎっと 嫁に行けなくなんぞ(笑)とてつもなくスゴイ『茶』の先生が 俺を可愛がって下さってますもんで時が来たら世話になろうかと考えてますよ。 なにやら『灰型』?←これが大変らしいじゃん?
まるチャンの健康を祈る次第ですが ホウケたコメほど馬鹿馬鹿しいもんだ!とにかく
若い女らしく←(意味ゎまるチャン次第どす)今を精一杯やってくだされな。
ありがとう(v^-゚)
魚山人様。
俺な 心地がイイんだ。
爺にいろいろな指摘されたり たまにゃダメ出しくらったり 下手すりゃ削除ダシ。
『好きこそものの上手なれ』
こんだけだ。
俺が爺んとこにコメ続ける話ゎ別として
【継続ゎ力なり】←これゎマヂに必然だぞ!
20年前に仮に俺が 独立するに当たり完璧に近い計画を立て実行した所で 現平成22年まで その店ゎ持たなかった筈。 何故かゎね
俺みてぇなヤツゎ 計画した時点で いかに楽するか企てんだよ。計画を実行する際にね。 だから今だに雇われの身。
自店なんて恐らくツブれてた筈。
だいたいバブルの申し子だもの
が
そこに爺【魚山人】の存在を見つけた。離す訳ネェダロ。
いないんだよ!
爺みてぇな糞ジジイが 俺のまわりに!
俺ゎ爺の言う通りハナタレ小僧だが 爺ゎ違う!
ハナタレジジイですから まるチャン(笑)
タチ悪いのゎ しこたま元気らしいから 心配なんて失礼にあたいするべ。
俺ゎ 爺があたりまえに言うセリフを自然体で言ってみたいし 言えるようになりてぇから 爺の世話にしばらくなるだろな。
マネ でゎなく 盗んでヤル。
そんために恥ずかしさも
覚悟したんだから 爺blogにおいてな
Posted by 鯔次郎 at 2010年12月13日 01:46