顔にある器官で、食べ物と関係が深いのが目と鼻と口です。
「和食はまず目で食べる」ではありませんが、食欲をそそる料理の色彩と形状をまず認識するのは目です。
目というのは2個ありますけども、左右両眼は別々のものを見ていて、右目に写った像は左脳に、左目に写った像は右脳に、それぞれの脳の視覚野に送られ、そこで合体して1つの像になります。
視野と奥行きを補正するためにそういう仕組になっていて、だからこそ見たものを写真のような2次元ではなく、3次元の立体として認識できるのです。3Dの映画やテレビは、この「視神経の視交叉」を巧みに利用しています。
日本料理の盛り付けは、この視交叉を納得させるとまずまずの美しさに見せることができ、さらに「騙す」ように盛れば、芸術的な最上級の盛りに見せることが出来ます。
鼻の、ニオイを感じる箇所は、鼻孔の上にある嗅覚器。 ここにある嗅粘膜の中には受容細胞があり、この細胞が最大で1万種類のニオイの分子を識別しています(普通の人は3千種類くらい。犬などは億の単位)
それが「どんなタイプのニオイか」を判断するのは脳の仕事で、大脳はその人の記憶からそれを判断します。
舌が5つの味覚を基準にして味を感じているように、ニオイにも【原臭】というのがあり、受容細胞はこの原臭を基準にニオイを識別しています。
原臭は、【ハッカ、エーテル、ジャコウ、ショウノウ、芳香、刺激臭、腐敗臭】の7種類です。
さて、味覚を感じる舌ですが、味蕾というツブツブが、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の基本味を受け、脳に伝達します。
脳は「美味しい」か「まずい」か決めるのですが、ニオイと同じように、やはり判断の材料にするのは記憶です。
意外と味覚障害の人が多いのだと聞きますが、その大きな理由は「亜鉛不足」です。亜鉛というのは通常の食事をしていれば不足などしませんので、多分薬などによるキレート作用で亜鉛が流出しているのでしょう。
「味覚がおかしいな」と感じたら、まず亜鉛不足を疑ってみること。そして亜鉛の多い食品を意識して摂るようにしましょう。
近年、6番目の味覚というべき「カルシウム味」というのが見つかったという話もありますが、ヒトがその受容体を持っているかどうかは不明です。
仮に新たな味覚が見つかったとしても、重要なのは「記憶」のほうでして、視覚、嗅覚、味覚という生理的なものより、知覚や心理的なものが料理では大きいのではないでしょうか。 他の動物とヒトの差は、そのへんなのですから。