高脂血症と低脂血症
望ましい血中総コレステロールの値は、180~200mg/dLであり、200mg/dL を超えると【高コレステロール血症(高脂血症)】、180mg/dL を下回ると【低コレステロール血症(低脂血症)】の可能性が高まります。
以前は高コレステロール血症だけが問題視されていましたので、「高脂血症」という言葉が一般的になっているのですが、脂質(コレステロール、中性脂肪、リン脂質など)が少すぎることに因る障害も多く、近年は高脂血症ではなく、低脂血症も併せて【脂質異常症】と呼ばれています。
高脂血症(高コレステロール血症)は、動脈硬化などの血管障害を招くとして知られています。心筋梗塞や脳梗塞のもとですね。
低脂血症(低コレステロール血症)は、肝機能障害、甲状腺機能障害、消化吸収不良症候群、などのリスク要因になり、血管が弱くなって脳出血などを招きやすくなることも。また、細胞膜が脆弱になりガンの発症リスクを高めることになります。ビタミンEを欠損させてしまうことが問題を発生させてしまうのでしょう。
要するに、コレステロールは多くても少なくても駄目だということです。ある程度の脂質は、必ず摂取しなければいけないのです。
望ましいコレステロール摂取量は、成人で、1日に300mg程度とされ、上限値は男性で750mg未満、女性で600mg未満です。
厚生労働省は1日200mg未満を勧告しており、健康のためにはその方が良いかもしれません。しかし、食品には意外なほどコレステロールが多いもので、200mg未満というのは少々オーバーな数字でもあります。健康な人ならあまり神経質にならず、偏食を避けてバランスのよい食事をしていれば、数字など気にする必要はないでしょう。
コレステロールが100gあたり200mg以上含まれる食品
※()内の数字はmg
卵黄(1400)、干しスルメ(980)、たたみいわし(710)、ピータン(680)、あんきも(560)、すじこ(510)、うずら卵(490)、鶏全卵(420)、豚レバー(250)、バター(210)
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※最も多い鶏卵ですが、M玉(60g)で252mgくらいで、その殆どは黄身に含まれます。
つまりMサイズ卵1個で200mgを超えるわけで、このことからも「200mg未満勧告」は【現実を無視した数字上・机上のお話】だと考えます。
※タラコ、イカ、ウニ、シシャモ、しらす、ウナギなどにも多く含まれています。
脂質異常症になっても自覚症状がありませんので、飲み過ぎ食べ過ぎ、運動不足が気になる人は、時々医師のもとで検査をしておいたほうが良いでしょう。
検査をしないと、自分が、コレステロール値が上がりやすい【体質】なのか、そうでないのか分からないし、気になる人はやはり検診してもらうことです。
いずれにせよ、寿司屋などで「このネタはコレステロールが多いから・・・」などと心配しているのは、少々ピントがずれております。コレステロールの大半は肝臓が合成しているのであり、魚介類程度のコレステロールなどは殆ど無関係です。
問題は【血液内のコレステロール値】であって、食品に含まれるコレステロールを神経質に心配しても意味はありません。先ほど書きましたように、大半のコレステロールは肝臓が生産しているのです。コレステロールがどうこういうよりも、暴飲暴食を避けて、肝臓を労るようにした方がよいのです。
血液内のコレステロール値というのは、結局、リポタンパク等脂質間のバランスの問題になり、何か1種類の「悪玉」を毛嫌いする感覚は間違いです。
バランスが壊れることが根本的な因子であり、LDLが悪いということではないのです。このバランスを壊す最大の要因は、「動物性脂肪ばかりを食べるヒトの過剰食欲」なんですよ。
脂質異常症予防対策としては、食べすぎ飲みすぎを改め、運動不足を解消することです。
とくに、外食での油っこい料理や、ファストフードや菓子類・清涼飲料水などには注意が必要です。
アブラものと糖分のミックスは最悪なのですが、ファストフードとか加工食品は、この両方とも必ず含まれていますので、できるだけ避けたいものです。
脂肪(特に動物性脂肪)、糖質の多い食品を控え、魚介や野菜などを多くしたバランスの良い食事を心がけます。
動物性食品であっても、鶏のささ身、豚フイレ肉、魚介類には脂肪が少ないし、魚介の脂は積極的に摂るべきアブラです。
コレステロール値を低下させる、お茶、DHA・EPA、乳酸菌、食物繊維なども、意識してとるようにしましょう。白ワインには善玉コレステロールを増加させる作用があります。
また、脂質を代謝するビタミンB2が多い食品や、ビタミンCも効果的です。
タウリンの多い魚介類もおすすめ。魚介類には血中のコレステロールを制御するタウリンが豊富だし、晩酌の適度なアルコールは血流を良くし、HDLを増加させます。
低脂血症のほうは、偏食が続いたり、栄養バランスが悪かったり、「オイルカット・ダイエット」などをしたり、拒食症気味であったりすると、招きやすくなり、ある意味では高脂血症よりも重篤で危険な疾患になってしまいます。
適度に脂質を食べて、ビタミンEもしっかり摂取しなければいけません。
脂質異常症、高血糖、高血圧などが、2つ以上重なる状態がメタボリックシンドロームです。
中性脂肪は肥満の原因ですが、コレステロール自体は肥満と直接関係ありません。しかし、肥満と高コレステロールが重なると、動脈硬化症のリスクが高くなります。ですから、肥満を解消できるまでは、コレステロールの摂取を抑制することが望まれます。