上の章で紹介した「1日にとるべきエネルギー量」さえ把握すれば、あとはいちいち細かなカロリー計算をする必要はありません。
そういう計算が日常である栄養士などの仕事をしているなら別ですけども、そうでない普通の人が、「毎食ごと、料理別」のカロリー計算などしていると、それだけで挫折の可能性を高くするだけです。
神経質に厳しく数字を管理すればするほど、いったん「間違い」が生じると、破綻しやすいものです。
わずか100kcalをオーバーしたからといって、「もう駄目だ」「もういいや面倒くさい」という事になってしまうでしょう。
計算など大雑把でよいのです。
さらに、「この食べ物は良く」「この食べ物はダメ」という区別も、あまり意味がありません。
もう一つおまけに、その日にとるべきエネルギー量を、必ず厳守する必要もありません。
1日の目標が1400kcalだとして、「今日は2000kcal超える食事をしてしまった。もうダメ」とか、そんなことはないのです。
翌日から毎日200kcalを抑えれば、3日で問題解決。
そのくらいアバウトに臨んだほうが長続きします。
自分がやっているダイエットの全体像さえちゃんと把握していれば、それでいいのですよ。
全体像とは【自分の運動量と食事量の収支】です。
ダイエットと食事
ダイエット効果をあげるには、糖質の多い食品に気をつけること。そしてなによりも、グリセミック指数が低い食品を選ぶ習慣を身につけることです。
主食で例えると、食パン1枚と茶碗1杯のごはんは、ほぼ同じカロリーです。これだけを比べると、「パンの方がご飯より痩せそう」という勘違いをしてしまいます。
食パンとご飯を100グラムベースで比べると、ご飯の方が100kcalも少なく、GI値も明らかにご飯の方が低い。つまり、【ご飯は腹持ちが良く、しかもパンよりも太らない】のです。
1日目標1400kcalの人の場合、摂るべき炭水化物はおよそ770kcalくらいになり、それはご飯でいえば5~6杯、食パンで5切れほど、ショートケーキで三個ほど。
この中で腹持ちが一番悪いのはケーキであり、ご飯とは比べ物にならないくらい、「ペロリと食べられて、すぐにお腹がへる」のです。これはつまり、それだけ血糖値が急上昇しているということなのですよ。腹持ちが良いのは上昇がゆっくりだからです。
グリセミック指数はそれだけ重要だということです。主食はともかく、菜(おかず)の方は、主菜副菜ともに、できるだけ「GI値が50以下」の食材で献立するようにしましょう。
★ダイエットの敵は「アブラと砂糖の組み合わせ」
脂肪とタンパク質はダイエット中でも欠かせない栄養素であり、「アブラは避けなきゃ」という考えは間違いです。総摂取カロリーのうち、タンパク質25%、脂肪20%、これくらいは確保しないと健康によくありません。
これは簡単にいうと、「なんでも食べていい」ということです。制限・選択しなければいけないのは、あくまでも炭水化物。それ以外の食品は、むしろ選り好みせずに何でも食べた方がいいのですよ。
ただ、外食での「揚げ物料理」には気をつけなきゃいけません。なぜかというと、「アブラの質がメチャクチャ悪い」からです。
食品工場や大手外食などのフライヤーに入っているアブラというのは「カラダをサビさせるシロモノ」なんです。
この「黒いアブラ」で揚げたものを、甘い味にしている料理は避けたほうが賢明です。そのようなモノを好んで食べていては、ダイエットなど出来るわけがありません。
はっきり言えば、「発がん性物質と悪玉脂肪細胞、悪玉コレステロール」を食べているようなものです。
「あ、美味いから全部食っちゃった」その場合15品、20品にしてみましょう。【自分を満足させる食事】「自分の好きな品を沢山」、「だが全部少量」
大人のドカ食い「中年過食物語」
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カツ丼などは、いくら好きであっても週に1~2回ていどにしておきましょう。ラーメンもそのくらいのペースで。
外食で揚げ物を食べる場合は、信頼できる料理人がいる店がよいですね。「真っ黒な揚げ油を使い続ける」かどうかは、調理人次第なのですから。
いずれにしろ、揚げ物はできるだけ自宅で作るようにし、できたてをすぐに食べるようにしましょう。
アブラはできるだけ不飽和脂肪酸を使うようにするのがベストです。理想はしそ油やアマニ油ですが、これはあまりにも高価ですので、比較的安価なオリーブ油を使うようにすれば良いでしょう。
良い油と悪い油
1食のカロリーを低く抑えるコツは、「できるだけ多種類の料理」を食卓に並べることです。ヒマな時に野菜をたくさん使った料理を大量に作り、1食ぶんを小分けにして冷凍しておくといいでしょう。
最初に味噌汁やスープを「七分目ほど」飲んで、次に野菜の料理、それからタンパク質と脂質からなる主菜を食べる、炭水化物の主食はいちばん最後に。
菜(おかず)が多いほどに汁物とご飯を残しやすくなります。
汁物とご飯が残っても「もったいない」と思わないことです。昭和初期以前の「道徳教育」ではありませんので、むりやり食べる必要はありません。自分の健康のほうが大事です。
ちなみに、少量のお酒は善玉コレステロールを増加させ、交感神経を安定させる効果もあるので、食事と合わせるのに何の問題もありません。そして、研究によってアルコールと肥満との因果関係はないと結論されています。
ビールなどは量を飲みやすいため、他の酒は「つまみ」の食べ過ぎで、太るというイメージが定着しているだけです。
もちろん、飲み過ぎは禁物ですが。
コップ1杯程度の酒はむしろ健康増進になり、ダイエット中であっても控える必要はありません。とくに白ワインなどがおすすめです。(白ワインは、余分な塩分を排泄させる役にたつほか、フリーラジカルに等しい有害物質であるAGEsを抑制します)
■血糖値を急上昇させない食べ方
食前酒
(善玉コレステロールが増える)
↓
汁物
(胃を落ち着かせクッション役と代謝促進に)
↓
野菜
(ビタミン・ミネラル、食物繊維でスタンバイ状態に)
↓
主菜
(まずは魚を食べてDHA、EPAを取り込む)
(次に良質のタンパク源である大豆、卵料理など)
(その後、動物性のたんぱく質と脂質)
↓
主食
(最後にすると自然に糖質量を抑制できる)
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※ゆっくりと、よく噛んで食べるとさらに効果的です
※食物は食べた順に吸収されます。先に好ましい成分が吸収されると、後から来る好ましくない成分をある程度無効化してくれます
★ダイエットでどのくらい痩せられるのか(痩せればいいのか)
以前、アメリカでかなり大規模なダイエットの実験がありました。専門の研究者と栄養士がグループを組み、たくさんの被験者を募って三ヶ月間の厳格なダイエットをしてもらい、その過程を精密に分析したものです。
BMIに関係なく、食事を果物、野菜、乳製品、パン、脂肪製品、たんぱく質の六種に限定、他に100kcal以内であればなんでも好きなもの食べてよいことにし、1日の総カロリーを1200~1300kcalに制限して、それを3ヶ月続けたのです。
これは相当きびしいダイエット方法だといえますし、また、平均値を得るのに適した実験でもあります。要するに、あるていど正確なダイエット効果が分かる優れた実験だということですね。
結果は、誤差を修正した平均が「マイナス9%」
BMIやBMIに比例する体脂肪率を含めてマイナス9~10%。
体重60㎏の人は54~55㎏にまでダイエットできたということです。もちろんこれは平均値であり、その人によってタイプが異なりますから15~20㎏減量できた人もいれば2㎏しか減量できなかった人もいるはずです。
しかし、このマイナス9%くらいが健康を維持したまま痩せられる限度でしょう。
「まずは5㎏やせる」というのは、正しいダイエット目標だと裏付けられたといえるかも知れません。3ヶ月でマイナス10%減量できたら、成功したといえるでしょう。
総合的に考えて、一般の方が無理のないダイエットを実行するとしたら、【1ヶ月に1㎏の減量】という設定がベストでしょう。
脂肪1㎏に相当するエネルギーはおよそ9000kcal。これを1ヶ月で消去するとしたら、1日に300kcalのエネルギーをカットしなければいけません。
これは簡単なようでいて、現実にはそう簡単ではないでしょう。しかし、「絶対にムリ」という数字でもありません。
短期間で急激に痩せるよりも、半年、1年と、じっくりと腰をそえて取り組んだほうが良い結果を招きますし、「チリも積もれば」ではありませんが、月にたった1㎏であっても、年間にすれば10㎏以上も減量できるのです。
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