和食焼物の基本  

焼物の基本

焼き物は、火で材料を炙るという極めて原始的で単純な料理です。
しかし単純だからこそ一つの料理として仕上げるには細心の注意が必要になります。粗雑なやり方だと、それがそのまま完成品に表れてしまうからです。

つまり、その人の料理に対する感性がそのまま出てしまうのです。
我々は魚の焼き物一つを見ただけで板前の腕が分かります。なので、板前の順位でも煮物を作る「煮方」に次いで「焼方」のポジションが重要なのです。

焼き方は2種あります。
☆直火をあてて炎であぶり焼く 『直火焼き
☆様々な物を媒体にして焼く 『間接焼き

(熱源と材料を媒介する物で名が変わります)
(鉄板・石・アルミホイル・植物の葉・木材・紙など)
(オーブン・電子レンジ使用も直火焼きではなく、後者の間接焼です)

この二種の焼き方を、目的によって使い分けるのが焼物料理です。

表面を火力で焼き固め、内部に旨味と栄養を閉じ込める。外殻のタンパク質を凝固させ香りを出し、余分な脂や臭みを排出させ、旨みだけを残す。このようなイメージを持って焼きます。

「表面に香ばしい焼き目」、「内部はジューシー、だが中心までしっかり火が入っている」
これが焼き物の特徴です。
この三つのうち一つでも欠けますと失敗だと考えてください。

 

塩焼き

焼き物は焼く前に味をしっかり付けておきましょう。
魚の塩焼きも同じです。

焼く20~30分前にバットや盆ざるなどに並べて、約30センチの高さから塩を振っておきます(尺塩)
焼き物用の乾いた塩をひとつかみ握り、手のひらを上に向け、手首を動かして指の隙間から塩を落とします。ムラが出ないようにする為にこうします。

塩の量は一般的なサイズの魚で約小さじ1(5グラム)ほど

※鮮度が良い魚は塩の量を少なく置き時間も短め
鮮度が落ちてるものは逆

※実は「塩焼き」とは塩魚を焼いたもの。
塩漬けにした魚を焼くのが本来の塩焼き。なので、塩を振るやり方はそれの即席版と言えます。焼く直前に塩を振るアユなどの塩焼きは「白塩焼き」と呼びます。まあ今はその区別も特にしておりませんが。

火加減は強火の遠火。
(現実的には中火の遠火、あるいは弱火の近火)
弱火だと身がぱさついてジューシーさを失います。
火に近すぎると一部だけ焦げて中まで火が入りません。

盛りつけた時に表になる面から焼き始めます。
しかしこれは熱源が下の炭火で焼く場合。脂などが下に落ちてススが立ち、魚が汚れる前に表面を焼いてしまうのが目的。グルリなど熱源が上の場合は裏側から焼いた方が良い場合も。あるいはホイルを敷いて表側だけ焼き、裏は火に当てる程度。

いずれにしても鉄弓も炭火も使わない一般的なやり方ならば、「強火の遠火」や「盛り付け表」にそれほどこだわる必要はありません。むしろ強火では外側だけ焦がしてしまう可能性が高くなりますので、中火(または弱火)を原則とした方がよいです。

魚は身が崩れやすいもの。
焼いてる途中であまりいじってはいけません。
表裏をひっくり返すのは原則一回だけです。
(照り焼きなどは例外)

串を打つ・炭火で焼く

姿焼きの場合、出来れば串を打って焼きたいものです。
プロが使う金串でも安いものです。バーベキュー等にも使えますので、魚料理をもっと深めたいと思う方は揃えておいて損はありません。


魚串3.0×540mm 20本入

扱い方は
姿焼きの串打ち
料理屋の串打ち
魚串の刺し方

※串打ちはそこらで売ってる木(竹)串でも出来ます
(タイなど大型魚は無理)
要は魚を波をうたせた形に固定すればいいのです。
はみ出した部分は焼けますのでホイルを巻いておきます。

鉄弓(鉄灸・ウマ)

単純な構造の鉄の枠ですが、串焼きで強火の遠火を実現できる道具です。

簡単に自作も出来ますが、ガス屋さんが作っている市販品もあります。

リンナイ業務用焼物器専用部品鉄弓
幅665×奥行10(mm)
長さ530(mm)

炭火焼き・七輪

最後は備長炭を使って本格的な焼物を。
アユの塩焼き・サンマの塩焼きはこれがトドメでしょう。

比較的商品が豊富で、安いものから本格的なものまで有り、手に入りやすい品です。遠火にならないと無意味ですので、あまりに底の浅いものは避けること。


ほんわかふぇ 新型長角飛騨コンロ

※炭は完全に火を起こし、炎が静まってから魚を焼きます。
網に乗せてガス火などでしっかり発火させるといいでしょう。
火力は七輪の下にある空気穴で調整します。

※魚の脂が落ちてススが上がりますのでウチワでススを防ぎます。
煙をからめる為にウチワを使う事もありますがこれは高度なテクニック。

姿焼き

アジぐらいの小型中型の魚は姿焼きがおすすめ。アジのさばき方を参考にゼイゴを取り、ワタとエラを出して、同じように表から焼いて下さい。
アジのさばき方

アユは串を打ちたいところですが、

金串がある家はほとんど無いでしょう。

スーパーに竹の串がありますね、あれでも結構です。串の打ち方を参考に、口の中から打ち、外に出さないうねり串を打って(露出させると焼ける。やむを得ない場合は露出部分をホイルで巻く)、あとはアルミホイルにのせて焼けばいいのです。
串の打ち方

※アユもそうですが、ノルウェーサーモン(養殖)など脂がある魚を焼く場合はアルミホイルに穴を開けておき、脂を逃がすようにすればいいです。
(アユの場合、焼くと内臓から余分な脂が落ちます)

※塩は好みで振ればけっこうですが、精製塩は避けましょう。
※焼き魚は餅ではありません。何度もひっくり返さず、返すのは1回だけ
※焼き上がりは
『切り身は自分が美味しそうだと思う色』
姿焼きは『魚の目が白くなっている』が目安です。

焼きあがり

☆焼き目が付いている(茶褐色・キツネ色)

(焦げは黒色で、こうなると焼き過ぎ)

☆姿焼きは魚の目玉が白くなっている

☆化粧塩が完全に固まって乾燥

☆切り身の場合は指で押してみる事も
・中が生焼けだとズブズブと指が入る感じ
・跳ね返るような弾力があればOK

焼き物の盛り付け

どんな器を使ってもよいが、姿焼き用の皿は長手皿(角皿)が多く、丸皿よりも引き締まります。

・魚の尾頭付きの姿焼きは頭が左になるように
・切り身の場合は皮が向こう側になるように
・尾が皿からはみ出してもかまわないが、頭は皿から出ないように盛ること

付け合せや掻敷(植物の葉など)は、ぽつんと端のほうに置かない。やや中央よりにまとめた方が引き立つ。魚との空間が三角形を描くように置けば美しく見える。

焼き物のあしらい・つけあわせ

塩焼きの魚にはスダチやレモン、大根おろしが添えてあります。
こうした添え物(前盛り・鉢盛り)は必ずしも必要というわけではありませんけども、有るのと無いのでは明らかに食味に違いが出るものです。

レモン汁は魚の臭みを消し風味を増す作用がありますし、ビタミンCが加わります。大根おろしは消化を助ける働きがあります。栄養的な実用効果もある訳で、ただの飾りではないのですね。

これに加えて「旬の野菜」などを添えれば完璧です。
野菜類は甘く煮たものでもかまいませんが、酢の物にしますと口中がさっぱりとして、後味を良くしてくれます。酢取りショウガ(ハジカミ)、菊花カブ、酢バス(花れんこん)などがよく使われます。特に決まりはありませんので、色々とお試し下さい。

菊花カブ
酢バス(花れんこん)

焼魚を家で上手に焼く最強技

焼き魚は食べやすい料理ですよね。青魚でも塩焼きにすると食べられるという人が多いです。魚を焼くコツは表側(盛り付けた時の表)を強火で4分焼にし、裏側を中火でじっくり残り6分を焼くというものです。

ご家庭ではガスレンジの焼き網を使用するため、この料理はなかなか料理屋のようにいきません。いまどき炭の七輪使ってる人もいませんしね。

ガスレンジの焼き器は下に水を入れる受け皿があり、上から加熱する構造になっています。焼く時は必ず下に水を入れておきましょう。後が楽です。

魚を焼く時困るのは焼き網に魚が引っ付いてしまう事でしょう。これは金属の網との温度差によるタンパク質の凝固などが理由で、ある程度は避けられません。避けるには網を熱しておき、魚を置いた瞬間その部分を固めてしまうという方法や、これに加えてサラダ油を網に塗っておくなどです。

が、これ等の方法も完全ではありません。
諸条件によりどうしても引っ付く時がありますし、何故か引っ付かない時もあります。つまり不確実性があるんですね。

『アルミホイル』を使ってみましょう。
魚の下に敷いてから焼くのです。アルミホイルで焼くポイントはアルミ箔に「シワ」をつけておくということ。そうしますとひっつき防止になり、焼いた魚を取り易くなります。

本当に美味しい焼き魚は、「串」を打って「下火」の熱源で焼き、煙をからめる焼き方で、これは脂を適度に追い出す事も出来ます。このケースですと「強火の遠火」という言葉も意味があります。だがこの方法は普通の家庭では無理。

これに比べれば「ホイル」など邪道でしょうけれど、そんな環境が整わない以上しょうがないってもんですよ。網に身をひっつけてボロボロって有様になるより断然こちらがおすすめです。

下は切り身を焼いているところです。


魚の切り方

この方法ですと、脂が強い魚の場合下に脂を排除できないという面がありますが、そのかわり「下からも火が回る」という利点があるので早いし、もう一つ、焼き台を汚さないという利点もあります。

熱を逃がさないので火加減を気にする必要はありません。
最初2分は強火あとは最後まで中火でいいです(中火よりやや弱め)
加減は「焼き時間」で調節します。

※「強火の遠火」が言われるのは魚の持つ旨味を逃がさぬためです。表面を一気に焼き固めて内部のエキスを逃がさないという事です。つまりステーキと同じなんですが、すでにステーキではこの理屈は通じなくなっています。「じっくり火を入れたほうが断然美味い」と考える料理人も多いのです。

魚の場合も同じで、昔はアルミホイルやらグリルはなかったって事です。確かに下から炭火で焼いた場合、強火の遠火が理想で、そうでなきゃパサパサになりますのでね。その名残りであり、今の家庭で炭焼きする人はいません。ガスレンジの小さな焼き器で強火の遠火は不可能なのです。

先に書いたように表を上に向けて焼き始め、きつね色の焼き色(黒いコゲではない)がつくまで焼いて下さい。自分が美味しそうな色だと思うまでです。次に裏返して、ここはあまり気にせず焦げにならない事だけ気をつければいいです。焼けたらそのままホイルごと持ち上げて皿の上で半回転させれば、崩れることなく盛る事ができます。

適度なサイズにカットしたアルミホイルをクシャクシャに丸めてから広げ、それをアミの上に置く。そこに盛りつけた時に裏になる方を上に向けて魚を並べて、「最初から最後まで弱火」で焼く。これが現在のところ家で焼き魚を成功させる最強の方法でしょうね
(盛り付け表の方を後で焼くのは、様子を見ながら仕上げられるので焦げ付きや崩れのリスクが減るからです)




ここまで読んで、あまりに長いノウガキにウンザリし、
作る気力が失くなってしまった方、スンマセン(~_~;ゞ

最初に書いたとおり、ただ裏と表を焼くだけの単純な作業です。まずは気楽に焼いてみましょう。失敗しても気にしない事です。そのうち上手になりますよ。










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