イカの種類  

【イカ】烏賊

英 squids, cuttlefishes
仏 calmar, seiche
伊 calamaro
西 calamar

全世界で500種、日本近海で約130種が生息。
数センチから20メートルを超すものまで多様である。食用としてはタコと同様不吉な生き物として食用としない国が多いこともあり(ユダヤ教などは食用を禁忌)、日本は全生産量の6割を消費しており当然世界第一位。マグロ、エビと並んで最重要水産資源である。

低カロリーで良質のタンパク源でもあり余すことなく利用され、刺身を筆頭に繊細な食味は日本人の食感によくマッチする。 かつてはコルステロールの害が言われたが、タウリンが豊富に含まれている事が分かった現在、その心配は消え、高タンパク低エネルギーのイカは、ダイエット志向の現代人に最適な食材かもしれない。

イカの語源は諸説ありますが正確には不明です。 ただ漢字の烏賊についての由来は、浮遊するイカを食べようとするカラスにとって逆襲してくるイカは賊のような生き物という意味の中国の言い伝えからだとされています。コウイカとツツイカの仲間の二種に大別でき、スルメイカ、コウイカ、アオリイカ、ヤリイカ等があります。



スルメイカ【鯣烏賊】

スルメイカ

ツツイカ目アカイカ科
[学名] Todarodes pacificus
[英]  japanese common(flying) squid
[別] スルメ、マイカ、ムギイカ、ツツイカ、マツイカ、ガンガゼ、トンキュウ

北海道から九州南端に生息。
春から晩秋にかけて各地で水揚げされる。夏場が旬と言える。
日本ではイカ類で最も漁獲が多く、年間30万t前後(戦後の最盛期は70万t)の漁獲量。東シナ海から九州近海に産卵場があり、黒潮や対馬暖流に乗って成長しながら北上する。

冬の初め頃交接して、産卵のため再び南下、日本列島を南北に往復回遊する事になる。三陸や北海道太平洋側で捕獲されるのは冬に生まれた群。日本海沖で捕獲されるのは秋に生まれた群が多い。春から初夏にかけて麦の穂が実る時期に獲れるスルメをムギイカと呼ぶ地方もある。

需要を賄いきれず、下記の同じアカイカ科のイカを代用に使うケースもある。


スルメイカの代用にされるイカ

アカイカ 赤烏賊

ツツイカ目アカイカ科
[英] neon flying squid
〔別〕 ムラサキイカ、バカイカ、クロイカ、メダマ、ゴウドウイカ

50㎝にもなる大型で外見はスルメイカに似ているが、第3の腕にタコ様に広い幕が付いているので見分けられる。熱帯性のイカで、北上してくる夏場が漁の最盛期。流し網で大量に獲られていたが、国際漁業協定でながし網が禁止されて以降は漁獲が激減している。

アルゼンチンイレックス

アカイカ科
[英] Argentine shortfin squid
〔別〕 マツイカ
これもスルメイカと酷似しているが、アルゼンチン沖産である。80年代に日本のトロール漁船が開拓したが、現在は減少傾向にある。

ニュージーランドスルメイカ

アカイカ科
[英] Wellington flying squid
〔別〕 ミナミスルメイカ

ニュージーランド沖産だが、ほとんどスルメイカと区別がつかないため、冷凍の物がスルメイカの名で販売されていたりする。触椀などに多少の違いは見られるものの、刺身になると判別不可能である。3万t前後が国内で消費されている。他に【すじいか】(兵長いか)というイカもスルメイカに似るが、水揚げは少量であり使用される機会はあまり無い。

スルメイカは、刺身、フライ、煮物、干物、利用は幅広く、年齢層に関係なく日本人に好まれている海産物である。スルメイカを成型して干して作るイカ徳利まである。熱燗を飲みながら少しずつちぎって食べる趣のある逸品。その他塩辛も有名。

ヤリイカ【槍烏賊】

ヤリイカ

ツツイカ目ジンドウイカ科
[学名] Loligo bleekeri
[英] spear squid
[仏] calmar
〔別〕 ササイカ、テッポウ、シャクハチ、サヤナガ、テナシ、ゲンカイビケン

北海道以南に生息。
産卵前の冬から早春が旬。
槍の穂先に似た姿からの名である。

5月~7月頃北海道南部以南の全国で産卵の為に沿岸に寄って来る。
沿岸漁の為に生きたままの水揚げが多く、冷凍よりも新鮮な生が出回る傾向。身は薄いもののスルメイカより味に甘みと品があり、寿司種として人気がある。これを干したスルメは「笹するめ」、「竹葉するめ」の名で高値である。栄養値はスルメイカとほとんど同じ。

ケンサキイカ【剣先烏賊】



ツツイカ目ジンドウイカ科
[学名] Loligo edulis
[英] swordtip squid
〔別〕 シロイカ、アカイカ、ゴトウイカ、メヒカリ、ブドウイカ、マルイカ

三浦半島以南に生息。
ヤリイカと反対に産卵期は夏場。
ヤリイカの産卵が終了した夏が旬。

東京市場ではアカイカ、山陰ではシロイカ、標準和名あかいか、市場名はムラサキイカという混乱振りで紛らわしいイカですが、ヤリイカよりも身が厚く、かなり美味なイカです。

これを干したスルメは「一番するめ」と呼ばれスルメの極上品とされる。形も良いので結納などの縁起物に使われます。

姿はヤリイカと似ているが、ヤリよりも大きな触椀(下足)で判別できる。東南アジアから日本にかけて分布し、捕獲される地方によってその姿が微妙に変化する。また水揚げ直後は紅い体色が一日後には真っ白になる。ために地方名が多く、紛らわしくなる要因。

ホタルイカ【蛍烏賊】

ホタルイカ

ツツイカ目ホタルイカモドキ科
〔学名〕 Watasenia scintillans
〔英〕 spaarkling enop squid
〔別〕 コイカ、マツイカ

体長6㎝前後の小さなイカで、発光する特徴がある。
命名は明治の渡瀬庄三郎博士によるもの。
日本海全域、太平洋側では北海道から土佐湾まで分布する。

普段は深海に住み、春の産卵期に沿岸に近づき捕獲される。よって旬は春である。富山湾の大群集は特別で、天然記念物に指定されるほど。

内臓ごと丸ごと食べるホタルイカの特性は、その栄養素にある。ビタミンAやEなど自然には摂り難いものも豊富で、ミネラルやアミノ酸のバランスも良い。

浜で茹であげる「桜煮」が本来の姿であったが、最近は生食の旨さが広まっている。栄養的には申し分ないが、本種には寄生虫の心配がある。寄生虫が気になる方は、ボイルするか完全冷凍(家庭用冷蔵庫なら1週間)をおすすめする。

アオリイカ【障泥烏賊】

アオリイカ

ツツイカ目ジンドウイカ科
〔学名〕 Sepiotenthis lessoniana
〔英〕 big fin reef squid
〔別〕 クツイカ、ミズイカ、モイカ、バショウイカ、シロイカ、イズイカ、アキイカ

北海道南部が北限で西太平洋からインド洋まで広く分布している。
初夏に産卵のために沿岸に寄って来るのを釣る。
夏が旬。この時期雌が抱く卵も美味。
よい値で取引される高級イカで、イカ類で最も美味だとも言われる。

コウイカ類

約80種が存在するが、日本近海に分布するのは20種ほど。
特徴は外套(胴体)の背に船形の石灰質の固い甲をもつ事である。
生食が旨いイカで、刺身や寿司種として好まれるが、近海物では当然足りず、大半は輸入である。


コウイカ【甲烏賊】

コウイカ

コウイカ目コウイカ科
〔学名〕 Sepia esculenta
〔英〕 golden cuttlefish
〔仏〕 seiche
〔中〕 墨魚烏賊
〔別〕 スミイカ、ハリイカ、マイカ

西日本ではポピュラーなイカ。肉厚で甘みがある。
房総半島から南に生息。
近海物の産卵期は2月~4月、従って旬は冬から早春。

他のイカ同様タウリンが豊富で、微量だがミネラルやビタミンのバランスも良い。またアミノ酸も多く、アラニン、グリシン、プロリン、などが旨味成分を助けて特有の甘みを作り出している。ただ高尿酸血症の人はプリン体が多いので食べすぎに注意。


近縁種

【こぶしめ】

コウイカ科
〔英〕 broadclub cuttlefish
〔別〕 クブシメ、クブシミ、モンゴウイカ
南西諸島以南の熱帯太平洋に生息。
珊瑚礁に住む世界最大のコウイカ。
沖縄や奄美では漁師が素もぐりで捕獲したりする。
旬は冬から産卵の春。
本土の市場に出る事は殆ど無く、産地で消費される。

【カミナリイカ】雷烏賊

コウイカ科
〔英〕 Kisslip cuttlefish
〔別〕 コブイカ、モンゴイカ、ギッチョイカ、マルイチ
現在はあらゆる種の甲イカを「モンゴイカ」と呼ぶが、本来の紋甲烏賊は本種である。(地方名にすぎないが)江戸前寿司の「モンゴ」である。背中に家紋の様な斑紋がある事から。高価になって品薄でもあるから他種も「モンゴ」と呼び始めたらしい。
この業界(水産流通全体)の困った慣習である。房総半島以南に生息。
冬から春が旬。

【ヨーロッパコウイカ】

コウイカ科
〔英〕Sepia officinalis
地中海からスカンジナビア、アフリカ西海岸に産し、スペインやイタリアなどの沿岸諸国で重要な漁業資源でもある。ヨーロッパでも食用として使用している。
昔は遠洋トロール漁船で大量に水揚げされもしたが、経済水域設定で現在日本は輸入するしかない状況。日本では、いわゆる「ムキモンゴ」、「冷凍モンゴ」として販売されている。

他に【テナガコウイカ】、【シリヤケイカ】などもいる。



大型種

ソデイカ【袖烏賊】

ソデイカ

ツツイカ目ソデイカ科
〔学名〕 Thysanoteuthis rhombus
〔英〕 diaondack squid
〔別〕オオトビイカ、ウルシイカ、タルイカ、セイイカ、アカイカ、ウシイカ

体長1メートル、重さは20キロにもなる大型イカ。
世界の温・熱帯海域に生息。
日本では伊豆以南から沖縄にかけて漁がされている。
身が分厚く、刺身でも食べられる。旬は秋。

クジラと戦う巨大イカの姿は決して伝説のみではない。
マッコウクジラの胃から巨大な大王イカが出る事も実際にあるという。今年(2007年02月)ニュージーランドで体長10メートル体重450キロのダイオウホウズキイカが捕獲されたが、これはダイオウイカとは別属だった。
ツツイカ目ヤリイカ亜目ダイオウイカ科ダイオウイカ属は8種ほどいるとされるが、詳しい事はまだなにも分かっていない。最大20mになるともいう。日本では山陰や五島列島で【入道烏賊】が稀に捕獲されるが、これはツメイカ科らしい。体長2メートルで食用として不味いという。


イカのさばき方

サバの種類

アジの種類


イカの栄養成分


するめいかの栄養成分

成分値(するめいか100gあたり)
エネルギー88kcal(368kJ)
水分79.0g たんぱく質18.1g 炭水化物0.2g 脂質1.2g
無機質 ビタミン 脂肪酸
マンガン 0.01mg ビタミンA 13μg 飽和 0.16g
0.34mg ビタミンC 1mg 一価不飽和 0.05g
亜鉛 1.5mg ビタミンE 2.1mg 多価不飽和 0.29g
0.1mg ビタミンB1 0.05mg
リン 250mg ビタミンB2 0.04mg
マグネシウム 54mg ナイアシン 4.2mg
カルシウム 14mg ビタミンB6 0.20mg
カリウム 270mg ビタミンB12 6.5mg
ナトリウム 300mg 葉酸 5μg
パントテン酸 0.54mg
コルステロール 270mg 食塩相当量 0.8g

コウイカの栄養成分

成分値(こういか100gあたり)
エネルギー66kcal(276kJ)
水分83.4g たんぱく質14.9g 炭水化物0.1g 脂質0.3g
無機質 ビタミン 脂肪酸
マンガン 0.02mg ビタミンA 5μg 飽和
0.45mg ビタミンD 一価不飽和
亜鉛 0.8mg ビタミンE 2.2mg 多価不飽和
0.1mg ビタミンB1 0.03mg
リン 170mg ビタミンB2 0.05mg
マグネシウム 48mg ナイアシン 1.3mg
カルシウム 17mg ビタミンB6 0.06mg
カリウム 220mg ビタミンB12 1.4μg
ナトリウム 280mg 葉酸 3μg
パントテン酸 0.52mg
コルステロール 210mg 食塩相当量 0.7g

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