蕗の薹味噌  

蕗の薹味噌

「ふきのうとう味噌作ったけど食べる?」

久しぶりに訪れた小料理屋の女将。

椅子に掛けるや、
「今日は電車屋のハゲはまだ来てないの?」
とか、
「いや~女将。いつだかの{すっぴん山菜めし}はGoogleのランクが付いちゃってググって来る人が多いよ。おかげさんで」 なんて事を言ってますと、
「意味の分かる言葉で喋ってよね魚ちゃん。何なのそれ?」
「いや、何でもねぇんだ。忘れてくれ(~_~;)」

そんな感じでふざけておりましたら、ぬる燗と一緒に小鉢。

「もう顔を出してたんだって。蕗の薹」
「沢山送ってもらったから半分は味噌にしてみたのよ」

「か~こいつぁいい匂いだ」
「いただきます」

「うん、旨いよ。飯が欲しくなる」

「ところで女将」
「酒がいつものおいらの奴と違うようだが?」

「米処の純米酒」
「ご飯が欲しいという反応は計算済ですよ」

「なるほど。流石に小料理歴80年の女将だ」
「負けた」

「私は魚ちゃんよりも年下です」
「むちゃくちゃ言うんだから、もう」




フキと蕗の薹味噌

フキというのは日本料理になくてはならない存在です。
蕗の茎の独特の「透明感のある緑」
これが「ちしゃとう」と同じく品のある色を出すからですし、その独特の淡い苦味を持った風味。その裏には「数少ない日本原産の野菜」って事情もある。
※石蕗(ツワブキ)は少し微妙

蕗の旬は5月ですが、これは露地の奴。
現在出回ってる蕗はそのほとんどが栽培物。
品種は愛知早生(尾張ぶき)です。

醤油で真っ黒に煮た「伽羅蕗(きゃらぶき)」は御飯のおかずにも酒の肴に良い昔ながらの味ですね。よく知られている巨大蕗、「秋田蕗」は2mにもなり、直径数センチになる茎の中にある水は甘露だと言われます。

秋田蕗を上回る巨大蕗もあり、これは北海道は足寄町の螺湾川に自生する「ラワンブキ」。なんと3m以上になるとか。こうなってくると『宮崎駿』とか『アバター』の世界ですな。

フキには毒性のあるピロリジジンアルカロイドがありますのでアク抜きの必要がありますが、塩を振って転がす「板ずり」と下ゆでで抜けます。

そのフキの花のつぼみが「ふきのとう」です。
凍てつく雪の下から春を待ちきれず顔を出す姿が可愛らしい。

fuki.JPG
出典:Fuki-Wikipedia

すこしアクはありますが水さらしで抜けます。
外の皮剥がし黒い部分を除いてボイル後水に浸けておくだけ。

栽培ものならそれほど長く浸ける必要もないでしょう。
天然ものなら重曹を加え軽く茹でて水に放てばいい。

「で、女将はどう作ったの? これ」
「茹でて刻んで、鍋で甘味噌を作ってそこに入れて混ぜただけ」
「うん。そのほうが苦味はとれるね」

生のを刻んで油で炒めて味噌をからませる方法もあり、こちらは少し苦味が残ります。炒め油はサラダ油でもいいが、においの無い太白ごま油がいいですね。

ふきのとうは刻むとすぐに切り口が黒くなります。
なので包丁前にすべての準備を済ませておくのがポイント。

茹でるなら湯を沸かしておく。
炒めるなら鍋に油を入れて予熱。
味噌は先に甘みを入れておく。
甘みは酒とみりんで充分ですがお好みで砂糖。

店で作る時はどうしてるかと言いますと、「モノ」によって作り方を変えますけども、天ぷらの温度よりも少し高温の油でさっと揚げます。

で、熱湯で油抜きして刃叩きし、田舎味噌に味醂、酒を加えて弱火で練り上げます。アクを残してアクを抜くにはこれがいいかと。

で、この後何か書こうと思ってたんですが、最近耄碌気味でモノ忘れが激しく、すっぱりと忘れちまいました(~_~;
もし思い出す事がありましたら後ほど書き加えるとします。

2011年02月19日

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