和食の献立・お品書き


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お品書きと献立

難しいものですなぁ物事って奴は。
サイトを始めてもう三年を過ぎてるっていうのに、だんだんと下手糞になっているみたいな気がするんですよ。文章を書くのが斯くも難しいとは埒外でした。

「語りおろし」って言うんでしたか、お喋りを編集者が文章にしてくれるのがありますよね。あの様なスタイルが羨ましくなったりも致します。頭の中にグーッとべらんめぇが浮かぶ、しかしそれを文字にする段で様々な躊躇が頭をもたげて来る、結局発想というものと「文章」は別で、それゆえに文章修行ってのがあるんでしょうかね。文豪さんは発想のみでは駄目で文章のプロでもある訳ですなぁ。どちらにしましても魚頭の板前ずれが、今更文章修行など不可能なのは確かな事です。これに比べたら「仕事は徐々に巧くなる」って類の話を書きます。

和食の献立

板前稼業を始めて五年も経ちますとね、「手がノッテ来る」時期が訪れます。地道な積み重ねの反復によって仕事を手が覚えてしまう頃合なんですよ。「このノロマがっ」って叱られつつ、それを辛抱して打ち物や剥き物を続けていると、ある時ふと気付けばスイスイスイってな感じでサクサク仕事が出来ている自分がいるんです。この時期に「勘違い」せずに、さらにあと10年仕事を続ければ「早さ」に開眼出来る事になるでしょう。板前としての大きな壁を越えるのです。一人前の「なべ」ですよこうなれば。

しかし板前ってのはもう一つの壁があります。それが献立書き。一人前の板ともなれば料理のメニューを組むことは問題ではありません。そんなもんは造作もない話。壁ってのは「文字」それ自体の事です。

もともと板の仕事はデスクワークとは無縁で、ペンを握る日常ではありませんので、簡単な漢字すら忘れるものなんです。それが突然『お品書き』や『献立』を書かされるとね、心中は恐慌をきたしますよ。縦書きの和食メニューなんぞ急に書ける訳がありません。

明治や大正の人達はね、小学校すらまともに出ていない人でも非常に達筆なものです。小さいときに墨で書き取りさせられたからでしょうが、それだけではないでしょうな。そんな大先輩板前達が書いた気骨のある字体を見ればもう恐ろしくなるんです。とてもじゃねぁが自分にはこんな字書けないってね。それでもやらざるを得ないので、習字に励むしかない訳ですよ。

ここでお品書きと献立の違いを簡単に説明しときましょう。

お品書きと献立

御品書き

お品書きはお客様に分かりやすく店の商品を紹介するものです
店にある品を値段つきで表示します。
料理人の気取りを出してはいけません。
どんなお客様にでも分かる様に書くのが良識です。

難しい漢字などは避けて簡潔に。
和食らしく、出来れば手書きで。
こんな感じでしょうか。


御品書き

献立

献立はセットメニューの詳細を書いたものです

板前が思うように書いて構いません。職人向け、お客様向け兼用ですが、書く人(料理の長)の世界を表現するものですから。ですから漢字に振り仮名しなくともよいし、分かりやすくしようとする必要もありません。

伏字ばかりで申し訳ありませんがこんな感じです。

会席献立


特に綺麗でなくても普通の字が書ける人ならなんら問題はありません。こうしたものは何でも「慣れ」ですから、そのうちまとまります。筆書きもそのうち馴染んできます。問題は「悪筆家」ですな。かくいうおいらもそうでした。まさに乱筆。悩みましたねぇ本当に。

今は便利なものでワープロソフトに「行書体」もあります。
例えばHGS行書体のfontfaceですとこうなります。
縦書きのStyleはwriting-mode:tb-rl。

※『日の出名よし』とは鯔の刺身の別名です※
※献立内容は2009/7の皆既日食を感謝した日の神へ捧げる主旨ですが、 →献立のヒント
あくまでも「例え」です※

なかなか便利なもので、どうにもならない時は使用してもよいかも知れませんが、やはり機械は機械、まとまりすぎて人間味がありませんわなこりゃ。

悪筆でもかまわないと思いますよ。
字も料理の味同様想起する人作る人の個性ですからね。
「習うより慣れろ」ですよ。



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手前板前.魚山人:The person who wrote this page筆者:文責=手前板前.魚山人