レンコンの煮物  

レンコンと料理

蓮根はお好きでしょうか?

「それほど食べたいと思う野菜ではない」
そういう方がけっこう多いのではないでしょうかね。

お嫌いではない人でも、あえて食べたいと思うほどではない。
印象に残らない、ぼやけた味覚。そんな感じかも知れません。

ところが、食卓に出ている蓮根料理を口にすると箸が止まらなくなる。
シャキシャキパリパリの食感と、「個性の無い個性という個性味」
そして、何故か残さず全部食べてしまうという、何とも不思議な食材。

【日本人の食卓(和食)という舞台に欠かせない《名脇役》】
自分はレンコンをそういうふうに考えています。

蓮根

レンコンの旬は冬。
晩秋から3月あたりくらいまででしょうかね。
7月ごろに早掘りの「新ばす」が出ますが、最盛期は冬。
栽培してる沼の水を切り、泥の中から掘り出すのですね。

原産地は大陸かエジプトあたりでしょうか。日本には1500年前には渡来していたようです。現在世界でもレンコンを食用にするのは日本と大陸の一部のみ。

蓮根は多年性水生植物「蓮(ハス科又はスイレン科ハス属)」の地下茎です。蓮は美しい花でよく知られ、蛙とか山の物の怪が傘にする(笑)蓮の葉は水滴が異様に美しく美味しそうに見えるため、杜で遊んだことのある人はこの葉っぱで水を飲んだことが1度は必ずあるといってよいほど。
(イモ類の葉も同様)
(葉の形が少しフキに似たものがありますが、フキはキク科の多年草)


蓮の花

はすね(蓮根)といっても、根から脇に延びる「茎」になります。水底の地中で、あのように肥大化します。いくつかの節に分かれ、内部の空洞が8個ほどの穴になっています。

この穴が「先を見通す」とされ、縁起良い野菜のひとつ。
正月のおせち料理とか、お祝いの席などでも使われる由縁になってます。この場合の切り方は、穴を残す輪切りが決まり。「花れんこん」がその代表といっていいでしょう。

持ってみて重く感じるもの、太くて真っ直ぐなものが良品。節付きなら節が短いものが良いでしょう。もともと地中深くのものですから、空気に触れると傷みやすい。泥付きの品は、その泥により空気・光線から守られているのです。
(穴の内側が黒くなっているものは変色ではなく病害品。駄目です)



蓮根の栄養

レンコンの8割は水分。
炭水化物15%、たんぱく質2%。脂質はほぼゼロ。
ビタミンC、カリウム、食物繊維が主たる栄養素。

ビタミンCは一般的に加熱調理に弱くて壊れやすいもの。
しかしレンコンの場合はデンプンがビタミンCをガードしている為壊れにくい。V.Cをあまり失わない煮物などが作れるということです。

注目されるのは、ネバネバ成分の「ムチン」
そして「ポルフェノール類」です。

ムチンは胃に良い効果をもたらします。
スタミナをつけたり、風邪予防にも。

ポルフェノールの一種「タンニン」は皮や節に多い。
老化防止、ガン予防、消炎や止血の効能。

そして、たぶんポルフェノールの一種だと思われる「レンコン独自の成分」 これが「花粉症」に効果があるという話も出ています。
(成分の特定などもうすこし研究待ちといったところでしょうか)

蓮根の料理


酢を加えた湯で茹でる

蓮根は褐色になりやすく、進行すると黒くなってしまいます。
これを防ぎ、色を白くするために酢が欠かせません。

剥いたらすぐ酢水に浸ける(浸け時間が長いほど白くなる)
これをさらに(皮だけ剥いたもの・切ったもの)、酢を加え茹でる。
こうすることで褐変を防止し、白い色をとめる事ができます。
加えてシャキシャキ感も残るのです。
(これをしないで加熱するとデンプン質が前に出てイモのような食感に)

上の処理をした後
・サラダ
ドレッシングでも美味しいです。
・梅肉和え
梅じょうゆで紅白の和え物に。

・酢蓮根(酢バス)
スライスしてさっと茹でたものを甘酢につけたもの。
寿司の彩りに使うほか、酢の物などに。
酢水でよく色をとめておくのがポイントです。

薄切りする前に紅色をつけてやれば「桜蓮根」に。
切った後に染めると全体が赤色になります。

おろしたもの

「しんじょ」、「すり流し」「れんこん饅頭」「蒸し蓮根」など
コロッケとか、ハンバーグ風にしてステーキも。

揚げる

・具を包んで揚げる「はさみ揚げ」
・スライスして「チップス」に

射込む

・穴に芥子をつめた熊本の辛子蓮根が有名。
・湯煎にかけた卵黄を射込んでも彩りが綺麗です。

煮物

和風の煮物には欠かせない蓮根。
・煮物各種  
厚めの輪切りや、乱切りにして歯ごたえを残すように煮ます
・きんぴら
牛蒡と同じように金平にもぴったりです。

簡単なレンコン煮


家庭で作るハス煮

上で紹介した酢水による下処理は「見栄え料理」と言えます。
これに加えて、アクで黒くなるのを遠ざけるため、
「皮を厚く剥く」 ※通常蓮根は縦に剥きます
で、酢を入れた湯で茹でたり、塩をふっておいたり。

たしかに「白く」はなります。
しかし、これではポルフェノール類やV.Cは消えてしまう。
食物繊維も皮の部分に集中してるのに捨てる。
(出来合いの漂白物は、さらに期待できません)

美白もいいが、この白さは食べ物としてどうなのか。

不自然かつ気色悪いというのが本音ですね。
でも、料理屋では「真っ白」が当たり前だと思われてますので出すしかない。

しかし、自家用で食べるものなら「真っ黒で上等」だと思います。
あの純白さの意味は、裏返せば「栄養素の全滅」
分厚く皮を剥いて、酢の力(または塩素系漂白剤)で強引に白くなった、そしてやたら甘い甘酢で味をつけたレンコン料理に、どんな栄養があるのか甚だしく疑問です。

まず、皮は剥きません。栄養的に当たり前のことだし、蓮根の皮は薄くて気にならないのですよ。

泥をタワシで落とすだけで終わり。

ざくざく輪切りにし、大きいのは食べやすく半分にカット(半月)
   

そいつを酢水ではないただの水にしばらく浸ける

蓮根の下ごしらえはこれで終了。

次はコンニャク。

長形に切って指でちぎれば良いのですが、今年は巳年。
蛇さんと似た「手綱」にしておきましょう。

5ミリ幅に切り、真ん中に縦包丁を入れる
(上下5ミリくらいは切らない)

下を持ち、切った穴にくぐらせる

両端を引っ張れば「手綱」に

最初に塩を振ってよく洗ってから切ったので、下茹でとか空炒りはナシ。
コンニャクの石灰臭は水洗いだけでとれます。
(気になる人はさっと下茹で)

鍋に出汁と醤油ベースで整えた煮汁を沸かす
そこに手綱コンニャクを入れて落しブタ

コンニャクに充分味がついた頃を見計らってレンコンを加える

今度は落とす蓋ではなく、鍋蓋をして約3分程度蒸し煮します

※レンコンは煮過ぎないことがなによりも大事
歯ごたえの無いレンコンは芋以下の仕上がりになります

盛り付ける段階で下茹でしておいた「えんどう」を加え青味に。
天柚子は二匹の蛇にでもして、
お惣菜のレンコン煮物です。

一度箸をつけると、鉢が空になるまで箸がとまりません。
なまっちろい漂白レンコンとは一味違いますので、是非お試しください。

※この後、キンピラ・土佐煮なども紹介しますが、レンコン煮物のコツは「味付けを控えること」です。だしがきいた甘辛味などが合うのですが、ついつい辛くしてしまうもの。
「箸がとまらなくなる」シャクシャクの食感が蓮根の特徴、味付けが濃いと、最初は良くても後から重くなるのです。

「出した分は全部食べられてしまう」ことを計算に入れて、全体量から逆算して味の濃度を決めるとよいでしょう。「最初は薄く感じるが、食べ終えた頃に味がきいてくる」という調味ができればベストです。

蓮根の切り方、土佐煮キンピラ>>

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