【板前のコツ】塩焼きと照り焼き


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焼き魚のコツ

『姥目樫』が原料の堅炭では白炭、その最高の品が、備長炭です。 焼き物はこれにつきると言っていいくらいですね。

でもそんな事いっても、ご家庭じゃなかなかでしょう。そこで、家庭で出来る料理を念頭においてこれを書いてみました。

塩焼き

大半のご家庭では、魚はガス台のグリルかオーブンを使って焼いてらっしゃると推察いたします。

駄目です。
理由は『上火』だから。

魚の旨味でもある水分を無駄に飛ばしてしまうからです。
スーパーで買える石綿(あるいはセラミック)入りの焼き網でも上等ですんで、『下火』で焼いて下さい。旨味を閉じ込めて見た目も美味しい焼き魚にするために、『強火の遠火』で焼き上げます。これを焼き台無しで、家庭で実現する方法は、焼き網を二つ用意し、二重に重ねて火力を上げればいいです。

焼く手順

◎どちら側から焼き始めればよいのか。
「海魚は身から、川魚は皮から」焼くなんて言葉がありますが無視してもけっこうです。盛り付けるとき表になる面から焼きましょう。ちなみに頭の付いた魚は、カレイ以外は頭が左になる様に盛ります。

◎網に皮が引っ付いてボロボロになるんですけど
焼く前に網を空焼きしておき、油を塗っておけばよい。

◎煙が出て困る
換気扇をぶん回し、窓をすべて開け放って下さい。煙で燻蒸しなければ、サンマなどの本当の旨さは出ません。煙は大切なんです。

◎他に気をつけるポイントは
表側を4、ひっくり返し裏側を6の割合で火を通します。
「餅は乞食に、魚は殿様に焼かせろ」と言いまして、モチみたいに、焼いてる途中でいじくってはいけません。(簡単に身崩れするので)焦がさない程度にですが、じっくり構えて。

◎尻尾とヒレが先に焦げてしまいます
ヒレと尻尾に塩をまぶしつけておく『化粧塩』をしておけばよい。 脂が落ちて火がつきますが、そのままにしとくとコゲます、うちわなどですぐに消しましょう。コゲと焼き目を見分ける視覚を身に付けて下さい。焼き目は食欲をそそりますが、コゲは不味いどころか発ガン性もあります。

焼き魚 上火焼きと下火焼きの違い

■魚山人から一言
サンマのハラワタ等、食べにくい部分。「ここが美味しいんだ」と、子供が嫌がってるのを、無理に食べさせるのはやめて下さい。トラウマになり、下手をすれば一生魚嫌いになります。魚が美味しいのだとの記憶があれば、今は食べれなくても、大人になり、味覚が変化したら自然に食べるようになります。食べ物は人間の心と体を成長させる物でなくてはいけません。

照り焼き

照り焼きと言うくらいですから、この料理はいかに食欲をそそる 照り を出すかが肝心になります。ハケを用意して焼きながら何度もかけ醤油を塗って焼き上げるんですが、なかなか料理屋で出る照り焼きの 照り を出すのは、ご家庭では簡単ではないかも知れません。そこで、家庭でも照りを出せる焼き方をお教えしましょう。

照り焼きは、最初に充分下焼きしてから、ある程度火が通った後、ハケでつけ醤油を塗っていく。こういう手順が一般的なようですが、それでは照りが出ません。

濃口醤油 1
味醂 1
(基本)
のつけ醤油を作り、20分程漬け込んでから焼いてみて下さい。

普通、魚の切り身を用いますが、もしご家庭に金串がありましたら串を打って焼くのが理想的です。『褄折り』という打ち方をします。手のひら大の切り身なら、片方をクルリと丸めて『片褄』に打ちます。もっと大きいのは、両側を丸めて『両褄』にします。串を打ちますとタレをつけながら焼いても身崩れしにくいので、出来れば串打ちをして焼きたいとこですが、無くてもかまいません。

串が無い場合は、つけダレに漬け込む時間を10分ほど長くして下さい。塩焼きで紹介した焼き網を二重にする方法で、強火の遠火にして焼きます。

白身魚は味がのりやすいのでつけ時間を短めに、マグロ、カツオなどの赤身はよく漬け込み、手早く焼かないと、身がパサパサになります。(水分が多いから)

焼き時間はおよそ10分。8分ほどで焼き上げて、残り2分で数回タレを塗り照りをつけます。裏表を返すのは一度にしといて下さい。コツは焼き終わりのときに火力を上げてやる事。

イカ等身が反りやすいものは、針で波縫いする感じで、串を三本くらい使い、『縫い串』を打ちます。これは普通の竹串でもできます。

基本のつけダレは 1対1 ですが、濃く感じたら、醤油の割合を減らし、ザラメや焼酎をたしてもいいですが、少し味に品が欠けます。

いずれの場合でも、必ず味醂は先にアルコール分を飛ばしておきます(沸騰させれば火がつき、火が消えればOK。*火がつかなくてもかまわない)照り焼きは味醂が決め手になります。できれば良い味醂を使いましょう。

フライパンを使う場合、照りの付け方はこの記事を参考にしてください
ブリの照り煮

姿焼き

簡単で難しいのが魚の塩焼きです。魚に塩を振って焼くだけの料理ですが、塩のしかた、串の打ち方、焼き方で仕上がりに歴然とした差がでてきます。代表的な『眞鯛の姿焼き』を例にしながら説明します。

塩振り

塩は食卓塩(精製塩)では美味しく焼けませんので、ミネラルがなるべく自然の海水に近い配合で含まれる天然塩を使います。もう一つ、湿った塩でも上手く焼けませんので、焼き塩か、粗塩を干して乾燥させるか煎ってからサラサラの状態にしてから使います。

串打ち

魚の裏側に数本縫い串を打ちます。魚をうねらせながら表面に串を出さない様にしっかり安定するように打ちます。

塩をするタイミング

小型の魚以外は焼く直前に塩を振る事はしません。塩が全体に回りきれないからです。300~500グラム前後の小ぶりな鯛でも、焼く1~2時間前に塩を振っておきます。1キロ以上の大鯛は3時間以上前に塩を振っておくか、海水濃度の塩水(立塩)に浸けておきます。立塩に昆布を加えておくと旨味が増します。鮮度の良いもの程塩が早く回りますし、脂の強いものは時間がかかりますので、魚の状態で加減します。魚、特に鯛は眼と目玉の周囲が旨いものです。塩を振るときに眼の上に塩を乗せておき、塩分を浸透させておきましょう。焼く直前に落とせばよいです。

針打ち

そのまま焼くと皮が膨張して、その部分だけが黒く焦げてしまいます。そこで塩をする前に数本の金串で魚をブツブツと刺しておく『針打ち』をしておきましょう。その後塩を振ると塩がよく回ります。これを『くい塩』と言います。

**この後卵白を泡立てて塩と片栗粉を加え、若芽や昆布で包んだ鯛を覆い、焙烙などに入れオーブンで焼き上げるのが【塩釜焼き】です。(焼き時間は約1時間)

焼く

焼きにかかる前に化粧塩をします。ヒレ(背、胸、尾)にたっぷりと塩をすりこんで焦げ付きを防止します。
背ひれの一番頭に近い側のトゲをハサミで切り取り、二番目のトゲの根元に突き刺して背ひれ全体を立てます。盛るときに表になる面の胸ヒレの一部を裂き、その部分をエラ蓋に入れて胸ヒレがしっかり立つようにします。その後エラブタが開かないように竹皮などで縛っておきましょう。

※火加減は強火の遠火
表側から焼き始めてそこを4、返して裏を6の加減で焼きます。盛ったときに表になる面を美しくみせる配慮からです。

※焼き時間は状態でバラツキがあるので一概に言う事はできませんが、途中で確かめようと魚を動かしてはいけません。焼き上がりの目安として化粧塩の乾燥状態を見るとよいでしょう。カラカラになればほぼ焼けています。

※鯛の姿焼きは、焼きたてを食べるということはめったにありません。食べるまでに時間が経過します。照りをつけておくのも工夫のひとつ。焼き上がり直前、卵白をハケでぬって照りをつける場合もあります。

※家庭で塩焼きを作る場合、殆ど上火になってしまうと思いますが、上火では魚の持ち味を堪能出来ません。美味い焼き物を食べるなら焼き網を使って下火で焼きましょう。焼き網を二枚重ねれば、「強火の遠火」で焼けます。

焼き魚その他

つけ焼きを【幽庵焼き】とも言います。
つけ醤油の基本は【酒1 味醂1 醤油1】
この地に香りつけの柚子を入れたものは『柚庵焼き』の字を当てたりします。切り身をこの合わせ醤油にしばらく浸けてから焼きます。脂の強い魚、青魚などはタレがのり難いので長めに浸けたり、霜降り等で脂を抜いてから焼くとよいでしょう。串の無いご家庭などでやる場合、ボール等にこのタレを入れて焼き網のそばに置き、菜箸などで数回このボールに切り身を戻しながら焼き上げるとよいと思います。

基本のタレに氷砂糖、ザラメ、焼酎等で甘みを増してやり「たまり」などを加えて濃度を強くして「照り」を強調するのが【照り焼き】です。脂の強い魚が適しますので、薄塩を当てて暫らくおいておき、脂と水分を抜いてからつけ汁につけます。ご家庭では焼き網よりも鍋の方が良いでしょう。テフロン加工等のフライパンで手早く作れます。(底浅鍋なら何でもよい)先の切り身(ブリやカジキ等)をつけ汁から出して、余分な汁をふき取って小麦粉を軽くつけます。両面に焼きめを付けたらつけ汁を入れからめます。いったん魚を取り出し、汁だけ煮つめ、煮詰まった汁に魚を戻して再びよくからめます。

穴子、ウナギ、ハモ、サンマ等は脂抜きに『白焼き』します。その後ハケで数回タレをのせる作業をして仕上げます。これが【蒲焼】になります。

酒と卵黄、薄口醤油少量でのばした味噌に木の芽、柚子、タデ等を加えた『田楽みそ』をのせて仕上げるのが、【魚田】です。薄めの塩で焼いた塩焼きの魚の表側に味噌を乗せて、軽く焼き目をつけるだけです。青魚は赤味噌を使うなど臨機応変にしましょう。

味噌を酒と味醂でのばし、魚の切り身を「どぶ漬け」にして焼くのが、【西京焼き】です。塩分の強くない白味噌を主に使うので「西京」の名を使うようです。クセの強いサメ、や赤エイ等は赤味噌が適してますが例外。焼く前に余分な味噌をふき取って焼かないとコゲます。どぶ漬けと言っても、ガーゼやキッチンペーパー等でサンドして漬けると、拭き取る手間が省けます。

カマス、エボダイ、サワラ、マナガツオ、アマダイ等は身に水分が多く刺身でも食べられますけども、干して水分を抜き、焼いた方が持ち味を堪能出来ます。一汐焼きですね。二枚か片袖に開いた魚を酒塩(塩をあて暫らくおき、酒で洗う)し、数時間日陰で干してから焼きます。

京都ではアマダイをグジと呼び、グジは若狭の名産でもあったのでこの焼き方を【若狭焼き】とも言います。グジのウロコは細かく、取らずにそのまま焼いて食べます。そのためこんがりと焼き上げましょう。※今では若狭焼きも醤油地を使う場合が多いです。

以上の基本的な焼き方が出来れば、変わり焼き【磯部焼き】【黄身焼き(黄金焼き)】なども応用で焼ける様になります。

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手前板前.魚山人:The person who wrote this page筆者:文責=手前板前.魚山人