カスベの「煮付け」「煮凝り」


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カスベ/赤エイ

カスベとは、北海道等でメガネカスベなどのエイ類を指した言葉です。
南日本ではツマリカスベが多く漁獲されるようですが、エイの仲間で食用に最も適し、美味とされているのは赤エイになります。


赤エイ

乾物の「エイヒレ」は酒肴として有名ですけども、アカエイはみそ煮、焼物、吸物、煮物、煮こごり等の料理にもされます。 利用する部分はヒレとその周辺で、軟骨を含みます。エイを捌く時は体の中央部分を残し左右のヒレ部分を付け根から切り落とすだけ。

エイ類の旬は夏場になります。
栄養的には特にみるべきものはありませんが、コラーゲンが多いのが特徴と言えるでしょう。重要なたんぱく質の一つですよね。

エイはサメと同じく軟骨魚類になりますが、これの特徴は尿素とトリメチルアミンオキサイドを体内に共存させて浸透圧調節をしている事です。

そのせいで死ぬと空気中の微生物&加水分解によって分解され、尿素がアンモニアになり、もの凄い臭気を放ちます。 従ってエイやサメの料理は、普通の人間は美味しいとは感じないでしょう。まれに「魚好き」を公私共に認める方がおりまして、これを非常に美味であるとする場合もございます。

魚の臭いについて

さて、かなり以前の記事にも同様の事を書いたんですが、「板前が魚好きでは話にならん」ってこと。それをもう一度書いておきましょう。

魚好きと称する人は90%の人が「臭い」と感ずる魚料理を「旨い」と主張し、あまつさえ「こんな美味を理解できんとは情けない」とグルメぶる傾向がございます。

こういった種類の人が料理人になれば、いかなる魚料理をお客に出す事でしょうか。少なくともその料理人の作るものを美味いと感ずるのは世の10%の人しかいないという理屈になります。

魚には「旨味」があります。
だからこそおいらも魚好きを自認し、このような魚ブログまでやっているわけなんですが、魚であれば何でも旨いと主張する気はまったく御座いません。魚の旨味は旨味成分の代表イノシン酸など様々な成分のバランスにより種によって彩りをみせています。

しかしながら魚というのは鮮度が低下しますとトリメチルアミンという物質が発現いたします。トリメチルアミンというのはアンモニアと並んで人間を不快にさせる悪臭の源と言ってよい物質です。

この二種が悪臭を放ち始めれば、もはやイノシン酸などの旨味成分など消し飛んでしまうほど強烈。そもそも人間にとって「悪臭」とは何かといえば、自然界に存在する危険物質から身を守る防衛本能だと考えていいでしょう。摂取してはいけない、または吸気してもいけない危険な成分を嗅ぎ分けるための重要な生存本能です。

魚の発する臭気はトリメチルアミンとアンモニア。これを臭みと感ずる90%の人は、その本能が正常に機能してるということです。
要するに、残りの10%の人は「壊れてる」と言えるんじゃないでしょうか。その種の人が板前とか調理師になった場合の危険性がお分かりですか。

「絶対に旨いから食べてみろ」は間違った行為です。

まぁ少々オーバーに表現してしまいましたけども、鼻が曲がりそうな料理とか、喉に入らない様な料理を「好意」で無理にすすめる料理人は多くいますので、釘を刺しておきたい気持ちもありました。

カスベの煮物

サメでも気仙沼港に行けば驚くほど大量に売られてますし、エイも臭みを抜けば立派な料理になります。できるだけアンモニアを水に溶かし出して煮込みにしてみました。(アンモニアは水溶性です)



これで温かい煮物として食べられますが、
このように煮汁ごと冷蔵すると【煮凝り】になります。





手前板前.魚山人:The person who wrote this page筆者:文責=手前板前.魚山人