鮎塩焼きのコツ


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アユの塩焼き

鮎の「背越し造り」なる刺身があります。
鮎を開かず、筒切り様にスライスして食べます。よく料理書などでも紹介されてますね。ガラスの器に氷を敷いたり、「カマクラ」を作ったりして、お造りを盛れば、涼しげで絵になります。

けど鮎は川魚だって事を忘れちゃいけません。重篤な症状は出ませんけど、横川吸虫という寄生虫がいる可能性もあります。生食はどうでしょうかね。今ではその心配はあまり無いのですが、鮎刺身、好みではないですね。

鮎は塩焼き これにつきますよ。

鮎は塩焼き

日本人に縁の深い魚って言いますと、海じゃ鯛、川なら鮎があげられます。アユは魚へんに占うと書きやすが、その語源は古語の【あゆる=川をくだる】でして、奈良時代に占いに使われた言葉だそうです。大昔からなじみの魚だった事がわかります。

こいつは「香魚」とも呼びまして、川藻を食べて独特の青臭い風味になりやす。その香りを引き立てる為に、板前は「焼き塩」や「蓼酢」にこだわるんですわ。

はかない一年魚の鮎は、食べ時が夏の間しかありやせん。旬の時期、鮎の香り高さと来たら、もう感動モンです。一度天然鮎の香ばしさを経験しますと、デブデブに肥えた肥満気味の養殖アユはもう食えません。ほっそりと美しい天然アユに失礼にならぬよう、精一杯料理します。

塩焼きにつきますわ、鮎は。そして魚の塩焼きは、「塩」が命です。最低でも「あら塩」まっとうな板前なら、天然塩に手間隙かけて細工して、「アクひき塩」を作ります。こいつは、魚の塩焼きを別物に仕上げる秘訣です。
アクひき塩

鮎塩焼きのポイントをいくつか

強火の遠火。(これはご存知でしょう)
上火はいけません。
焼き目は「コゲ」と違います。
盛った時、表になる面から焼いて下さい。
乾かすように、煙でいぶすように。
いじくってはいけません、返すのは一度。
強火で塩がふくのが2分ほど、その後弱火にし、表が10分裏が7~8分。腹も2~3分焼いて、脂を落とします。
べたついた塩ではうまく焼けません。
鮎もウロコがあります。引いて下さい。
焼いてる間、そばを離れちゃいけません。

天然鮎と養殖鮎

鮎漁の解禁は6月からですんで、出回っているモンは養殖って事になります。残念ですが、天然物が「香魚」の名にふさわしいシロモンだとしたら、養殖は香りのうすいクローンでしかない。

技術の向上で、かなり天然に近くなってきましたが、同じという訳にゃいきません。天然鮎のあの香りだけは、他の養殖魚のように本物を超えて旨くなるって事は無理ではないでしょうか。


天然鮎

肥満体型の養殖は一目で分かります

塩と串

塩焼きで大事な点は【塩振り】と【串打ち】
「おどり串」や「登り串」(うねり串)などで、躍動感のある姿焼きになります。これは「縦串」ですが、小さい魚はまとめて「横串」を打ちます。【筏】と言います。特に鮎は、料理屋でおなじみの泳いでる姿そのままの躍り串がつきもの。しかし、串は家庭料理の場合それほど重要ではありません。有るにこしたことはない、くらいですね。簡単に串打ちを紹介します。

口、又はエラブタから打ちはじめ、尾を御覧の形にして中骨を縫う様な感じで尾下まで貫きます。
 

安定させたいときは、もう一本「そえ串」を打ちます。

これは数本まとめて焼く場合の横打ち。横からのそえ串です。

のぼり串の打ち方

塩振り

鮎塩の肝は塩。
乾いた塩を一尺の高さから振る【尺塩】

最近は焼き魚に適した乾いたサラサラの塩なども簡単に入手できるようになりました。問題は塩の振り方です。板前は掌を上に向けて、指の間からムラ無く振りますが、簡単にこれの真似はできゃしません。

日本料理でも、最も肝心な部分ですし、これが出来ない板は、焼き方をさせられません。細かくやり方を書いたとしても、場数と経験を重ねなきゃ身につくものではないですね。

塩辛く感じない塩味。
鮎の香りを損なわないで、それを引き出してやる塩味。
この為に、むら無くまんべんなく均一に塩を振るんです。家庭で上手く塩振りするには、【茶漉し】を使うとよいですね。あるいは適当な網目がある漉し器ならなんでもいい。まんべんなく塩を振れますよ

見た目の飾り気を考慮して、ヒレに塩をまぶす【化粧塩】をします。(ヒレと尻尾を焦がさない為でもあります)一般的に広まってしまってますけど、これは誤りですね。こうするものだってのが広がって、みんな当然の様に化粧塩をしてます。

活けの鮎は自然にヒレが張りますし、活けじゃなければ焦がせばいいんです。そもそも鮎は焦げるほどの時間をかけて焼きません。

ヒレは(頭も)食うもんなんですよ。ほどよく焦げた魚のヒレは美味いんです。化粧塩をすれば、塩辛くて食えなくなっちゃいます。

大型鮎になるとそうもいきませんけど、ヒレをホイル巻きなどして化粧塩は回避できます。やるにしてもべったりまぶすのはやめましょう。店で出す料理は見た目も大切だから仕方ないにしても、家庭で食べる時や、鮎の味を知ってる客の場合、化粧塩はやめといた方がいいです。

これでは塩辛くて食べれません。

★塩は控えめに。
(馥郁とした香りを失くさない様にです)
★焼く前にウロコをとっておく。
(鮎もウロコがあります。取ると仕上がりが良いです)
★ヘソを数ミリ切り、砂袋を竹串等で出して焼く。
(砂袋以外は全部食べれます)
★盛る時に腹を皿に接して魚を立て、背を上に向ける。
(川魚は海魚と逆に、背が美味しいからです。美味しい部分を向けるのが作法ですから。そのための登り串です)

蓼酢

さて、鮎塩ときたら付き物なのが【蓼酢】
簡単に作り方を書いておきましょう。 強い辛みと香りがある蓼。
食用には柳たでを用います。その芽が紅たでと鮎たで。

柳たでの若葉【鮎たで(葉たで)】を鮎の蓼酢に使います。

たで酢の作り方


あゆたで

◆みじんに切った蓼の葉をすり鉢であたる。
◆そこに塩を少々。たでの緑を出す為なので微量で。
◆残り飯を加えてペースト状になるまで擦る。
◆酢を適量加えて仕上げる。

もっと早い簡略版として
酢8 水2
これに塩少々と蓼のみじん切りを加えこれで出来上がり。
ちなみにおいらは蓼酢は使わず、塩だけで食べます。

ついでに、鮎のワタを塩辛にしたやつを【ウルカ】といいます。卵巣の【子うるか】、内臓の【苦うるか】、精巣の【白うるか】、身を混ぜこむ【切りうるか】珍味ですよね。
ひうお

鮎塩焼の食べ方

鮎塩は必ずしも箸を使う必要はありません。
手でつかんで食べるしかないものを、無理に箸でちょこまかやるのは、動作の美がないとも言えます。小型の鮎は、つかんで頭から丸かじりしたほうが美味いし、決して無作法でもないんです。

少し大きい鮎は、身をほぐして尾を折り、頭をひねってひっぱりますと、中骨がするりと抜けます。

こうするとまったく無駄なく食べれます。
女性などで丸かじりは出来ないという方は、ここまでは手でやって、この後箸を使用すればよいのです。


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