魚の皮を上手に引く  

銀皮を出す引き方

銀皮を付けて包丁で魚の皮を引く方法を、もう少し詳細に書いておく事にいたします。これは本職の板前でも上手に出来ない方が大勢おりますし、上手い板前でも集中力を切らせば失敗する、そういった種類の庖丁技です。難易度の高い「フグの皮引き」に匹敵するか、それ以上の集中力が必要になります。

フグの皮引き

この皮引きは感覚的な作業が多い板前仕事の中でも特に感覚的でして、言葉及び文章で表現するのは非常に難儀な話なんですが、4年も『てまえ、板前、男前』なんて板前魚ブログを書いてきた経験でもって、どうにか文章にしてみましょう。

 

庖丁で銀を付けて引くとは

まず「銀」の説明
「銀」とは例えばサンマの薄皮を剥いた状態の、あの青の絡む輝く銀白色のことを指しています。

これはアジ

アジ・サバの薄皮引き

ですので、言葉の意味においてはアジやサバやブリ系の「青魚」の背の色が正しいのですが、「銀皮」と言う場合は白身の魚も含めています。『薄皮の下の模様を完全に残して皮を引く』 そういう意味になります。

詳しくは前のページで
<< 銀皮を残した刺身

銀皮造りではない

一般的に【銀皮作り】と言うのは、カツオとか太刀魚などの皮を付けたまま刺身に引く手法であり、ここで説明している事とは意味が違います。


カツオの銀皮造り

この場合の銀皮は一番外の皮を意味し、ようするに皮を引くことなく完全に残したまま刺身にしてしまう切り方です。これは鱗のない魚(カツオ、タチウオなど)、もしくは鱗皮の引けない魚(コハダなど)でしか出来ない刺身です。

魚の皮は4層になっている

「魚の皮は一枚だけで外皮を引けば良い」そう思っていると、この銀皮引きは失敗します。

鱗を除去したあと、手で剥ける薄皮がありまして、この皮が1番外の皮になります。これは銀は出るのですが筋を残してしまいます。

この筋を外して引くのが2層目の薄皮で、これは庖丁で引かなきゃいけません。

つまり3層目が「銀皮」になるのですね。

4層目が血合い皮(もしくは身皮)で、ほぼ肉と同化しており、一般の料理ではこの皮を引くことはありません。特殊な魚種のみ、それを刺身に切る時だけ引く必要が出てくるくらいです。

魚をさばく場合には「魚の皮は4層」と考えて臨みます。いや、別に普通に皮を引く場合は2層構造だと考えてかまいません。「板前の仕事」を身につける必要の無い方はそれで結構だと思います。

ザザーっと引いて、血合い皮がむき出しになろうと、血合いと皮がマダラになろうと、身を多少削ってしまっても、皮が引ければそれでいい。

しかし、和食の板前というからには「それでいい」は通じません。
デコボコの皮目を客に向けて向付に刺身を盛るなどありえない。

銀皮を付けていると下のように保存状態も良くなりますし、切り付けたときに銀と血合いの赤と身の色でメリハリが出て刺身自体が美しく見えます。

これは皮を引いて翌日のサク。

銀がなければ血合いの色は飛んでしまいます。

では、銀を残す引き方のコツを説明しましょう。

ハマチ・カンパチの皮引き

カンパチの銀皮

カンパチは「外引き」で説明します。

端を刃でめくり、銀の層の上に包丁を入れる

鱗下の層と、銀皮の層が見えますね

位置を決めたら庖丁を強く固定し一気に引きます。

   

ハマチの銀皮

ハマチは「内引き」でやってみましょう。

腕を交差させて庖丁をまな板に押し込むくらいの感じで包丁を入れる。
これも最初が肝心です。始めに包丁が銀の上に正確に当たってないと、成功させるのは無理です。

やったことのない人は、信じられないほど強い抵抗を感じて包丁が止まってしまうくらいです。かなりの力が必要です。

 

このように血合いの赤を出さずに、白色(ハマチの場合)になるのが銀をつけた皮引きです。

※凍結したハマチ、サーモン、それにカツオの節は、手で剥いて銀を残すことが可能です。しかし、この手の魚の皮を手剥きにして銀をつけると、必ず「すじ」まで残ってしまいます。これは皮の層が断裂・分離しているだけで、繊維が残るからです。銀皮層の上の層まで残っているというイメージですね。これは「剥ぎとっている」のと同じで、皮引きとは言えないのです。中型魚は包丁で銀を出さねばいけません。

※カンパチは頭側から外引き、ハマチは尾から内引きにしていますが、これはあくまで例にすぎません。自分がやりやすい引き方でけっこうです。

シマアジの銀皮

シマアジは手剥きでもあまり筋が残らないので、手で剥いてしまう板が多いのですが、難しくても板前ならやはり庖丁で引きたいもの。

これは外引きでやっている例です。

うまく銀が出せました

銀皮出しのコツ

銀皮出しの成否は、最初に端を庖丁でめくる時に決まります。
上に書いたように、包丁を入れる層を間違えると銀など出ません。

これは銀を付けるのがかなり困難なキンメダイですが、こうして庖丁を入れる時点で最外側の薄皮(1層目)を庖丁の刃を立てて選り分けておくのです。

包丁の位置を決めたら、まな板を梳き切ってしまうくらいの力で包丁を押さえ、そのまま引き手をきかせて引き切ること。

成功すると綺麗に銀を残して引けますよ。

<<クロムツとキンメの銀皮を出す

外の皮は薄くて切れやすいですから注意しましよう。
かなりの力と集中が必要ですので気をつけて。

蛇足かも知れませんが、手入れのなっていない庖丁(切れない庖丁)と凹んだまな板ですと、まず絶対に失敗いたします。










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