【水洗い】と【水晒し(脂抜き)】の違い



セイゴを捌いて水でさらす

セイゴ

セイゴがよく釣れている様です。
東京湾には元々スズキが多いのですが、千葉側がやはり良いという話です。友達が釣りウンチクと同時にセイゴを持って来てくれました。木更津沖でルアーによる釣果だそうです。

スズキは冬場に産卵する為、寒くなると比較的釣りやすくなります。冬にけっこう見かける事が多いのはそのせいですね。ですが冬のスズキは痩せておりまして、それほど旨くはありません。身が肥えて美味になるのはやはり夏場です。

手で身を引き剥がすおろし方

すずきタイプ独特の「ひき剥す様」な三枚おろし

スズキは腹骨の付け根が堅くて太く、しかも湾曲しているため、通常のおろし方をすると身を傷つけてしまう可能性があります。

そんな理由もあり、周囲に切り込みだけを入れておいて、あとは強引に中骨から引き剥がすようにおろす方法があるのです。

庖丁で押さえて身をベリベリと剥し取る

※これはセイゴサイズに適します。ガンバラの付け根を完全に切らず、手で引き剥くやり方で、活の身に限ったおろし方。魚のサバキに慣れた人以外はやらない方がよいです。

スズキのさばき方は前項を御覧頂くとして、今回は水洗いについて書きます。スズキの語源が「濯ぎ洗いしたようなきれいな身」からだと引っ掛けるつもりはありません。せっかく釣った魚を少しでも美味しく召し上がって頂く為のちょっとした工夫です。



【水洗い】と【水晒(脂抜き)】の違い

魚の処理はまずウロコを引き、エラ内臓を出したあと血合いと汚れを洗い流します。ここまでの一連の作業を所謂『水洗い』と申します。

この後は水気を禁止とするのが、一般的な板前魚料理のセオリーと言うか決まり事になっています。魚の身に水気を移して水っぽくなるのを嫌うからです。まな板も魚も充分に水分をふき取って作業します。普通はこれでかまいません。この後は注意深く身から水分を拭うだけです。

ところが、このやり方では臭みが残ってしまう場合が多いんですね。最近は申し分のない魚というのは少なくなりましたし、養殖魚も多いですから、魚の臭みと余計な脂は簡単に抜けないんですよ。

ましてや娯楽の釣りですと締めませんし、血抜きもしてない訳で、おまけに狭いクーラーにぶち込んで曲げてしまうのが普通です。
それに、なにしろズズキですから。
これでは倍速で生臭みが出ても仕方ありません。

水さらし

そこで『水洗い』後におろし身にしたやつを、水にぶち込んで流水でさらします。

ここで言う水洗いは、先ほどの料理用語としての『水洗い』とは別です。

『脂抜き』や『晒し』の範疇になりましょうか。
さらし過ぎると身に水分を吸ってしまい、ズブズブになって旨味も抜けます。どのへんまで晒すか難しいところではありますが、とにかく長時間やってはいけません。

臭みや脂を抜くための【おろし身の洗い】といったイメージ。
洗いの作り方

そして水分を拭き取り、徹底的に水切りしなければいけません。その後乾いた布巾などではさんで水切りの用の二重バットに入れ暫く冷蔵庫に寝かせれば完璧です。

余分な脂や臭みが抜け、刺身も含め美味しい料理材料になってくれる事でしょう。刺身の場合は外側の水でふやけて白っぽくなった部分を少し包丁で掃除してやると素晴らしい身が現れますよ。

このやり方は、ボラや鯛類などにも適しますが、赤身魚や貝やタコなども含めあらゆる魚貝類にも適応できます。必須というわけではないので料理書などには書かれないことが多いですが、「現場での隠し技」として頭に入れておくとよいでしょう。

※上で紹介したのは、主に【臭みを抜き、身を〆て美味しくする】ための「水さらし」ですが、すし屋において、さばいたコハダを冷凍保存するケースで、この「水晒し」をすることがあります。これは脂を抜くことで「冷凍焼け・脂焼け」を回避するのが目的です



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手前板前.魚山人:The person who wrote this page筆者:文責=手前板前.魚山人