板前と包丁と砥石  

板前と包丁と砥石

板前になってよかったと、今はそう思っています。
もともと好きで選んだ職業ですが、順風満帆トントン拍子に進んできたわけではありません。紆余曲折、散々な目にも遭いましたし、何度も凹んだことがあります。「才能がないのかな、もう辞めるか」と悩んだことも一度や二度ではないです。

はたからどう見られていたかは、分かりません。「あいつは順調にうまいことやってんなぁ」などと思われていたかも知れませんけども、自分自身の内部ではいつも葛藤していましたねぇ。

ヘタレではないつもりでいましたが、勢いで突き進んでは壁にぶち当たる。これがまた強烈でね。「何回やっても出来ない。俺には無理だよ、こんなの。できるわけねぇだろ」そんな感じで途方に暮れる。

「絶対に無理だ」
そうとしか思えなかったことが、いつ、なぜ、出来るようになったのか、正直よく分からないです。でも、できるようになっていた。

困難だったのは技術だけではありません。
「心の折れ」。むしろこちらの方が難しいといえるでしょう。

社会に出れば敵だらけですよ。
うかうかしてりゃ自分の芽を出すことなど永遠にできない。
毎日が戦い。そういうのは心の芯が疲れてしまう。
おそらくコレを乗り越えるのが一番やっかいでしょう。

こうした問題を解決する理想的な形ってのはね、実は一つしかありません。ある事に気づけばいいんです。

【周囲の人々は敵ではなく、一番の敵は自分の傲慢さ】
この事実に気づけばいいんですよ。

これを理解し、心機一転できたらね、嘘のようにモノゴトが進行して行きます。なにもかもが好転するのですよ。

おいらの場合、それを教えてくれたのは包丁と砥石でした。
包丁は、磨けば磨くほど、自分の心が映るんですよ。
自分のツラがよく分かるようになるんです。

今日もまた、外に咲く秋の花まで映り込む程の鏡に磨きあげました。

さあ、刺身でも切ってきましょうかね。
板前という仕事を選んだことに、至福を感じる瞬間です。

2014年09月12日

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