霞焼き紋鍛錬(包丁)の波を出す研ぎ方  

霞焼き紋鍛錬(包丁)の波を出す研ぎ方

紫陽花が褐色に色あせ、その代わり毒々しい程のグリーンや極彩色の植物が目立つようになりました。生き物を焼き尽くす凶暴な紫外線から身を守るために「UVカットモード(葉緑素モード)」になってきた自然界。

ま、夏の太陽光線にゃ当たらぬようにしましょう。昼間は出来るだけ外出しないことです。昼日中にビーチで日焼けなんぞ気違い沙汰ですよ。

「健康的な小麦色の肌」(笑)
バカなセリフですな。火傷のどこが「健康」なんだか。

皮膚修復の労が必要ないにしても、メラニン色素を作んなきゃならないっていう余計な負荷を受ける「体内システム」により「ツケ」が増えるだけのこってす。

砂浜が恋しいのならば、太陽が落ちてから出ればいいことですよ。ま、やりたい人を止めるのは無駄なんで放っておけばいいですが、いい歳をして日焼けなんぞ愚の骨頂なので、健康でいたい人は自制心を働かせましょうね。

所要で少し外に出ておったのですが、帰国すると毎度の事ながら真っ先に食いたくなるのが蕎麦です。
十割だけは、やはり日本じゃなきゃ駄目。
店で、あるいは自宅で打つ場合が多いんですけども、時々は外食します。

今回は美味い地ビールを出す蕎麦屋まで足をのばしました。
少し遠いが、一応都内。
さっそく地ビール。

「うめぇ~」
「なんでぇ、こりゃ。本場の味と変わんねぇよ。旨い」

「いや、本場というか、”プリニー・ザ・ヤンガー”なみじゃねえかコレ?」
「なんで国内4大メーカーはこんなビールを造らないのかねぇ」
「作んのは簡単だろうがボンクラ。銭儲けしか頭にねぇ・・」

「ま、いいや」
「さあ、カモナンカモナン」
「冷たい鴨南」
「北海道玄君ナンカモ。ヘイカモーン」(←西洋カブレ&時代錯誤 笑)

で、帰り道に馴染みの鮨屋へ寄り道。
(いつになったら包丁研ぎの話になるのやら 笑)

「ひさしぶり***ちゃん」
「相変わらずボッタクリやってんの?」
「今時ぼったくり鮨屋は流行んねぇよ」
「よく潰れないねぇ、ココ」

「暖簾くぐるなりその言い草はなんだよ 笑」
「変わんないね魚ちゃんは」

鮨屋にかぎらず、職人には3つのタイプがおります。
不機嫌なツラをしてカウンターに座り、鮨をつまんで「シャリが熱いんじゃないの」
何が気に入らないのかそういう文句を言い、ふて腐れてしまう困ったお客さんに遭遇。
どう反応するか。

A;へいこら謝って機嫌を直してもらう

B;「ってやんでぇ!こっちは人肌で出すために神経使ってんだ。それを 熱い だと。この野郎。冷たいオマンマが食いたきゃコンビニか回転寿司に行きやがれ。こちとら江戸前鮨なんだよ。イナカモンが来る場所じゃねぇ!!」

C;黙って冷えたシャリを一握り持ってきて、それで握って次を出し、カドを立てないように接客を続ける

さて、魚山人はどのタイプでしょうか(笑)
千葉と神奈川の地魚しか握らない頑固オヤジと、そんな話をして帰宅。

本題に入ります。

本焼包丁の刃紋を出す研ぎ方ってのをこの前書きました。
今回はそれを霞焼き包丁でやってみます。

 

霞焼き包丁の波紋を出す

包丁は全体が鋼の奴(本焼)と、鋼と鉄材を鍛接して張り付けた奴の二種類がメインで、後者の包丁が和包丁では一般的です。最近はクロム含有の多い錆びない系の材質が多いですが、それも含め基本的には鍛接の方が多いです。

この張り合わせ包丁はメーカー等によって色々呼び方が異なりますが、大体は「カスミ焼き」で通ります。しかし今はこの名称を使う包丁屋が減りました。何故かと言えば「霞焼き」は炭素系和鋼の黄紙・白紙・青紙を使っている「さびる包丁」をそう呼ぶのにふさわしく、ステン系を「霞焼き」と呼ぶのはおかしいからです。

もちろんステン系であっても張り合わせた境目はあるわけで、「刃境」は存在しますので、そう呼べないことはない。しかし炭素鋼に比べればかなり無理があります。

ステン系包丁「銀三」の霞(刃境の上部)

炭素鋼「青紙」の霞(刃境の上部)

鍛接は鍛造の過程で地鉄に刃金(鋼)を酸化鉄などを糊にして「はっ付ける」ということで、ふたつの金属の境目がはっきり出るのが特徴です。この境目を、刃表では「刃境」と言い、刃裏では「地あい」と呼びます

この「刃境」と「地あい」は通常の場合直線的。
しかし境目を「波状」にして鍛造・鍛接した霞焼きもあります。
これが【紋鍛錬】と呼ばれる包丁です。

紋鍛錬の「地あい」

しかし、ただでさえ鍛造は大変な作業であり、通常の場合でも手間が掛かります。なにしろ焼いて叩いて張り付け包丁の型にしていくわけですから。なので芸の細かい紋鍛錬は非常にやっかいで面倒。そして難しい。

「地あい」は兎も角、「刃境」までを完全な波にするのは厳しい。
その他の理由もあり、紋鍛錬でも刃境は直線的か乱れ刃紋。

だけど、包丁を使う人としては、この刃境こそ「紋」であって欲しい。
「なんで?」
それは刃物を愛する者には野暮な問いかけってモンです。
なんでもかんでもなく、刃境は波を打っていて欲しいのですよ。

それで今回は「できるだけ波を出す研ぎ方」を。 いつぞや書いた 霞焼の霞を出す研ぎ方の続編みたいな感じですが、今回は少しばかりやっかいで、難易度がかなり高くなります。

使う砥石なんですが、この用途には天然砥の内曇りが適しております。 ですが、内曇は粒度が選べるほど多くは出回らない。

中よりやや硬めで、研削と研磨のバランスが良くなきゃいけない。
そんな天然砥はコッパでさえ探すのが難しい。

 

なので、どこにでもある赤の人造砥(1000~1500)をメインにしましょう。

この研ぎ方は変則であり、まず最初に仕上げから当てます。
4000で切刃を研ぎ、6000で裏を押して刃をきっちり付ける。

その後でメインの中砥で霞を入れましょう。
下の画像のようにシノギ筋の裏を押さえて研ぎます。

普通の研ぎ方をしては駄目です。
【完全に縦移動。全体を上下にのみ動かす】
※包丁を垂直にしたまま縦に動かすという意味

この段階で刃を研いではいけません。
(つまりカエリを出してはいけないということ)
鎬から切刃全面を砥石にあて、小刃にはノータッチ。

これで霞が入り、刃境の紋が湾曲します。

しかし、これで終えてしまえば、刃金部分(光った鋼部分)がたちまにして錆びて来ることになります。点々の赤サビが浮き出すのは間違いない。

※錆びない系の包丁は除外してます。青か白のみ。ステン系(特殊鋼系)の刃境はまず無理。

そこでサビを少しでも防ぐ為と、輝かせていっそう紋を際立たせる為に、最後に再び仕上げ砥を使います。
ここが少しばかり難しいところですが、切刃全面を磨いてしまえば霞が薄れるので、「鋼だけ」を仕上砥にあてます。 下のように左指でコントロールします。


※指先の裏だけを砥石に密着させ、指の圧を強くする

小刃を合わせて終了。
仕上砥は人造でも天然でも、どちらでもかまいません。

手磨きによって刃境の霞を出す「地紋かけ」

・プロが使う『チャメ粉』の例
内曇など数種類の砥石コッパを粉にしたものをチャメ粉と呼んでいて、これを水で練り、泥状にしたものをゴム板などにつけて霞を出す方法があります。仕上げ石の砥汁を乾燥させても同じように使えます。

刀剣師は内曇と鳴滝を薄く小さくしたものを『艶』と呼びます。
このような石があれば、刃境をダイレクトに磨いてみるといいでしょう(紙片ではさみ、それをさらに布に包んで狙いの箇所に当てる)

・魚山人流
先に書いたように「地紋かけ」には内曇がベストなんですが、人造砥でもできない事はありません。練り物(マグネシア砥石)の中仕上げなどが良い感じです。
おいらは吸水ラバーをそのような砥石の下に敷き、砥クソをそのまま吸わせるというやり方が合理的だと思います。使用した後、放置しておくだけです。何度かやっていると吸着した汁が粉になっておりますので、そのゴムを折り曲げて切刃を磨くわけです。ラバーではなく、布でも同じことで、この場合は裏や平などを磨けばいいわけです。


砥石の基本知識

※当然ながら鋼のカスも混入しておりますので、出来れば砥粒だけの粉や汁がベストです。しかし一段下の工程とかなら十分に使えますよ。

2012/07/23

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