包丁のサビ(錆)  

包丁のサビ

 

若いのが一生懸命ゴシゴシやっております。

「おっ、やってるね」
「どら見せてごらん」

「う~ん輝いてるじゃねぇか」
「形もだいぶ良くなってるよ」
「研ぎが上達したねぇ」

ところがものの10分もしましたらこの通り

裏に錆が出てます。
拭き上げが足りなかったみたいですな。

包丁錆を最も誘発するのは『酢』と『塩』です。
ところが海水濃度の塩水(立塩)は和食の板場で欠かせません。
そして寿司屋では酢がつきもの。
錆落としの消しゴムが手離せない辛さですなぁ。


包丁の磨き方と消しゴム

酸素の無い状態ってのはほぼ無理なんで、とにかく包丁を錆から守るには「水分」を残しておかない、使ったら必ず拭く。必然というかそれくらいしか術が無いですねぇ。

そのサビについて少し書いておきましょう。

赤錆と黒錆

サビは金属に生じる腐食生成物です。
高炉により鉄鉱石は炭素の作用で鉄になります。しかし放置された鉄はやがて酸化して行きます。安定した状態へ戻ろうとする自然現象で、人の手が入らない限りサビは避けられません。

主に「赤錆」と「黒錆」があり、いわゆる「サビ」とは赤錆を指しています。何故かといえば赤サビは金属を完全に腐食させてボロボロにしてしまうからです。

悲惨な赤錆

一方で「黒錆」は四酸化三鉄という成分で構成されていまして、自然な状態で出来る黒錆はたんなるサビに過ぎないのですが、人工的に形成した黒錆は保護皮膜として防食効果を発生します。

わざと錆びさせる

例えば濃硝酸などを使い急激に鉄を酸化させますと、腐食を防ぐ皮膜になります。腐食速度を遅らせる効果があり、これを『不動態』と言います。
不動態皮膜状になった黒錆層でサビを防ごうというわけです。

中華鍋などの鉄製鍋は意図的に煙を上げる程空焚きして使います。これは油を馴染ませるというよりも、鍋の表面に『黒錆び』を発生させるのが主目的です。表面を黒錆で皮膜して内部の腐食を防いでいるのです。

これと同じ目的で包丁にもわざと黒錆びを付けて錆を防止する方法がありまして、これを「黒包丁」「黒仕上げ」「黒打ち」などと呼ぶ事があります。

そして、クロムが空気酸化(空気中の酸素と結合)して不動態皮膜になっている鋼が「ステンレス」です。つまりステンは最初から錆びているとも言えるのです。

ステン系の和牛刀

ステンレス包丁の錆

ステンレス鋼は「不錆鋼」とも言いまして、サビを寄せ付けないのが大きな特徴ですが錆びない訳ではありません。

ステンレス包丁で柑橘類(レモン等)などを切ってそのまま放置しておいたりとか、そんな使い方をしていましたら、そのうち錆びます。

ステンレス包丁も錆びる

錆防止の注意点・ステンレス包丁の場合 (ステンでない普通の包丁でもほぼ同じ)

・体液(汗・血液など)を付けない
(手で触れたら必ず洗剤で洗い流す)

・アルミや鉄など異種金属と接触させない
(電蝕を起こし錆びる)

・高温高圧に注意
(特に調理場では熱湯に注意。煮沸消毒などはせず、殺菌剤を使用しましょう)

さらに、磨き粉(洗剤)を使わず水洗いのみにしておくと、徐々に『もらい錆』します。これは水道水の中には鉄錆が含まれている為です。ステンだけではなく鋼全種に言える事ですが、『錆は錆を呼ぶ』のです。

ちなみに銅製の調理道具には『緑青』(ろくしょう)が発生します。緑青は毒物だとされて来ましたが最近では毒性はかなり低いということが分かっています。しかしながら食べ物屋での発生はもってのほか。常に磨き上げておけば発現する事はありません。

さて、錆びるのは何も包丁だけではない様です。
つい此間まで頑健そのものだった身体が、ある年齢を境に「ギシギシ」軋むようになってきました。少々大袈裟な表現だとしても、若い時の動きが出来ていない事はおそらく確実でありましょう。

「そろそろ潮時なのかな」
そのような想いに捉われる瞬間でもあったり致します。

しかしたとえ身体は錆に覆われようも、魂だけは抜き身の包丁みたいに光っていたいなぁ。
そう思います。

【新調したばかりの包丁。刺身を切ると秒速で薄サビが浮いてしまう】
このようなお便りを何通か頂きました。

一言でいうと鋼の包丁はサビから逃れる事はできません。「できるだけ錆びない様に面倒をみる」しかないのです。

おろし立ての包丁に薄サビが出るのは、防錆の皮膜が取れたあたりが一番錆びやすいからです。つまり数回使ったあたりですね。

鏡面仕上げの包丁だとこれが先送りされるわけですが、いずれにしろ使っていれば錆びるようになります。理由は、「表面が粗くなるからです」顕微鏡の世界ではね。

それプラス、刺身など食材には鋼の酸化を促す成分が含まれておりますので、ますますサビやすくなるのです。

まずは食材を切り終えたら速攻で包丁を拭く。
これを徹底させなきゃいけません。

あとは「使い込み」です。
要するに「使って研ぐ」を繰り返すことです。

ただし目の粗い石ばかり使っていては無意味です。
「包丁の肌理が粗いと錆びる」からです。

中砥で刃を出したら必ず仕上げを入れること。
これによって薄サビが徐々に出にくくなって行きます。

しかしどんな風にしようと、刺身を切った後布巾で拭かずに放置してると必ず薄くサビが浮いてきます。

★一回切ったら拭く
★なるべく番数の多い石で磨く
これが嫌なら鋼をやめてステン系にするしかありません。

さらに包丁は熱と冷気に弱いという事も憶えておきましょう。熱を加えると焼きが戻るケースもあるし、どちらにしても堅固さを失います。

冷凍食品で包丁が欠けやすいのは、対象が硬いからだけでなく、普通の包丁は冷気に弱いからです。

酸・水・熱・冷、これらを極力避けて大事に扱ってください。
鋼を焼いた包丁はデリケートなのです。

2009/09/27

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