ペティナイフ・源助久  

ペティナイフ・源助久

読者投稿の包丁画像〔#19〕 

名前:sokube
職業:教育公務員


「こういうおもちゃを知っている子はね、一時テレビゲームにはまってもまた戻ってくるんですよ。」

 近所に、北欧の木のおもちゃを中心に扱っているお店があります。田舎にしては珍しいお店で、品揃えも好きなのでたまに顔を出すようにしているのですが、ある時のオーナーのおばあさんの一言が今でも忘れられません。

 確かに、ゲームしか知らないで育った子と、創造性を育んでくれるようなおもちゃで育った子の間には大きな違いがあるでしょう。

 それ以外にも、子供の頃に様々なことを体験しておくことがいかに大切かということ、そして「知っている・経験がある」、「知らない・経験がない」の違いのその大きさを実感させられることは多いです。仕事柄もありますが。


 子供の頃、近所に刃物屋さんがありました。
包丁だけでなく、鉈・鋸・鉋と刃物や大工道具を何でも取り扱っているお店で、開いているのか閉まっているかわからないくらい薄暗い店内に入ると、奥からおじさんが出てきて、親切にあれこれ説明してくれます。

 そのお店で大工道具や刃物を買ってもらうのが、我が家での誕生日の恒例行事になっていました。誕生日プレゼントが大工道具だったってわけです。

 今でも覚えていますが、小学校低学年で初めて鉋に触り、木ってこんなに薄く削れるものなんだと感動したものです。切れなくなった鋸を持ち込んで目立てをしてもらい、その切れ味に驚いたこともありました。
 大したものは作れませんでしたが、そこで買った道具ではずいぶん遊んだものです。

 やがて、興味は他に移っていき、当時普及し始めたパソコンで遊びだす頃には道具達にもうっすらと錆が浮き始めるのですが、当の本人はそんなことに気付きもしませんでした。

 店にも全く足を運ばなくなり、やがて大学で地元を離れ、記憶の中からもすっかりその店のことは抜け落ちてました。

 思い出したのは、就職して地元に帰ってきてしばらくしてからのこと。

 一人暮らしを始めるときに、このブログにも何度か登場している堺一文字光秀でステンレスの牛刀を買いました。軽く、切れ味よく、錆びない。
 包丁って面白いな。道具好きの血が騒ぎ、今度はペティが欲しくなります。

 そこで、ふとあのお店のことを思い出しました。時おり店の前を通ることはあったのでまだ店を続けていることは知っていました。

 そういえば包丁も置いてたな…
 十数年ぶりに覗いてみると、変わらぬ店構えと変わらぬおじさん。ペティが欲しいんですが…と言って、どういうやりとりがあったのか覚えていませんが、店を出るときにはこの「源助久」スウェーデン鋼15cmペティナイフを手にしていました。


 ステンではなく、いまどき鋼の洋包丁。んーメンドクサイ。こまめに拭けばいいのですが、ちょっと油断すると錆が浮いてきます。
 和包丁ならそういう物だという頭があるので気にもなりませんが、洋包丁に気を使うのはなぁ…と包丁選びに失敗したかと思った時もありました。

 でも今、素人ながら10本以上にも増えてしまった手持ちの包丁の中で、好きな包丁をあげろ言われたら、真っ先にこのペティが浮かびます。
 確かにステン系の包丁に比べたら手入れは一手間かかります。
 けれど、食材に吸いつくように切れこんでいく感触は、ステン系の洋包丁では得られない気がするからです。研いでいても楽しい。


 これはド素人の感想です。
 理屈を説明する事もできませんし、プロの方々には笑われるかもしれませんが、私には使っていて気持ちがいいし楽しいのです、鋼の方が。

 手入れの簡単さより、切れ味や研ぎ味を取った自分。きっとそこには子供の頃に触れたあの店の道具達が関係しているに違いありません。
 あんなふうに鉋の切れ味に感動した経験がなかったら、包丁の切れ味のことなんて考えもしなかったかもしれません。

 そう考えると、子供の頃に両親がそんな経験をさせてくれたことは、両親が考えている以上に子供に影響を与えていたんだなと、そう思います。

 ですから、世の中のお父さんお母さん、その時は興味を示さないかもしれない、すぐに飽きてしまった。たとえそれでも、子供達にたくさんの経験をさせること、中でも手を使って何かを作り出す作業をさせることには、本当に大きな意味があるということを、心の隅にでも置いておいてください。
2011/02/14

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