漬け

 

すし屋ではマグロの赤身のことを「ヅケ」と呼ぶ事があります。
醤油漬けにしたマグロはほぼ赤身だった名残です。

醤油漬けがされなくなった現在でも、言葉だけが残って赤身をヅケという習慣が河岸や鮨屋にあるわけです。

元々江戸期にマグロが大量に出回った時期に、腐敗防止、つまり保存を目的にヅケが始まったといいます。

しかし今は冷凍冷蔵の技術がありますので、大きなマグロでも腐らせてしまう心配なく刺身で頂くことが出来るようになりました。

ですから昔ながらの「醤油漬け」はほとんどされておりません。
おてしお(銘々皿・小皿)に醤油を入れて使うのが現在です。
握り種は新鮮な生が好まれるご時世ですからね。

しかしながら適度に醤油を吸った鮪の赤身は独特の旨みがあり、昔の江戸前仕事を続ける一部の鮨屋では変わらず漬けを出しているところが結構あります。

作り方を書いておきましょう。

づけ鮪の作り方

漬けとは言っても、そのまま漬け込んでおくと液は醤油ですのですぐに塩分で固くなり、醤油が回りすぎてしょっぱくなってしまいます。塩辛いのが平気だった昔の日本人ならともかく今の日本人には食べれません。

それでミリンを一割ほど加えて浸け込み、この漬け液を少し煮詰めて握った後ハケで種の上に塗ります。これが『煮切り』と呼ばれるもの。

現在はミリンよりも酒で割るほうが主流です。
これに昆布も加えるところも多いですね。

それでも直漬けは辛くなるので、浸透をおさえる為に身の表面に「膜」をしておきます。沸騰湯に通して『湯霜」にするわけです。表面の色が変わればOKです。すぐに冷水にとって内部に熱が回らぬようにして下さい。サクは手ザクでも長ザクでもかまいません。

酒を加えて一度沸かしたものを冷ましておいた漬け液。
こうすると醤油のカドがとれますので生醤油より柔らかい。
これに漬けます。

つまり昔とは順序が逆になり、先に作った「煮切り」にマグロを着けるわけです。正確には漬けるというより浸けるになるでしょう。たっぷりの液に漬ける必要はありません。ひたひたに液を張りキッチンタオルなどを一周させておけば全体に醤油が回ります。

人の好みにもより、関東の年配の人は真っ黒で味が濃いヅケを好みますけども、一般的には鮪の鮮紅色が残っていたほうが食欲が湧き美味しくも感じるものです。従って漬け過ぎはよくありません。

表面に醤油の色がついたあたりが食べどきでしょう。

握ってから出す直前に煮切りをぬります。

ヅケを霜降りにする理由

表面を湯霜にしてるのは醤油の浸透のことだけではなく、こうしないと握り鮨にはしにくいからです。
マグロ丼》なら生をそのまま浸けても問題なく食べられますけども、表面が醤油でベトベトしてしまうので握れないって訳です。

漬け込みには細心の気配りが必要で、もし翌日まで寝かせるなら「塩分の浸透」と「色食い」に気をつける必要があります。考え方としては、「醤油は火と同じ」と知っておきましょう。マグロの生身に対して「焼くような早さ」で作用するのです。いつまでも醤油を残しておけば必ず「まわりすぎ」になります。

どの程度まで浸透させるのか、そのへんを注意深く判断してください。

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