和食用語「包丁」



包丁(ほうちょう)

和食で使用する包丁は、特別の仕様を除けば、すべて片刃である。素材を引き立てる日本料理において、切り口が鋭く角が立つ片刃包丁は必然的でもあろうが、後述するように日本刀の流れにも関係があると思われる。

和包丁を材質で大別すると、全鋼の「本焼き」と、鋼と地鉄を張り合わせた「かすみ」の2種に分かれる。

本焼きは切れ味が鋭く、その切れ味が長持ちするのだが、高価であり手入れに手間も掛かる。

本焼包丁

「かすみ」は刃のみが鋼であり、それ以外は軟鉄であるため、本焼きに比べて非常に研ぎやすい。(簡単に刃がつく)裏をみると、かすみの場合は鋼と地鉄の色が違うので、すぐに見分けることができる。

かすみ(紋鍛錬)

本焼きは全鋼であるため全面の色が均一である。

※近年は特殊ステンレス鋼の包丁が多く、そうした特殊鋼や、また、安価な鋼材を型抜きした包丁なども、全面同色なので、表面色だけで本焼を見分けることができない。

一般の和包丁は殆どが「かすみ」であり、これも2種に分けることができる。手打ちで作った「鍛錬」と、プレスハンマーで打ちぬいた「型ぬき」である。
これは外見から見分けづらく、慣れない人は値段で判断するしかない。もちろん型ぬきの方が安い。

用途別に分けると、和包丁は約40種ほどになる。
それぞれの材料に合わせて特化しており、数種の例外を除くと、その全部が片刃包丁である。

・出刃包丁
厚みがあり、魚を捌くのに欠かせない包丁。
大、中、小があり、それぞれに目的に合わせたものが数種類ずつある。また、柳刃と合体させたような「相出刃」などもある。

・刺身包丁
大別して「柳刃」と「蛸引き」の2種がある。
蛸引きは刃先が垂直に落とされおり、この部分が使用できないのに比べ、柳刃は刃先まで使えて扱い易いため、現在は柳刃が主流である。

柳刃の名は、その形が柳の葉に似ていることから。
同じ意味で「菖蒲」とも呼ばれ、「正夫」などの文字を当てることもある。

刺身包丁には他に、上の2種を原型にカスタマイズした「剣型」などもある。

・薄刃包丁
野菜用の和包丁であり、厚みをおさえて鋭い切れ味を持たせた包丁。先が垂直な「関東型」と、丸みを持たせて刃先まで使えるようにした「関西型(鎌型)」の二種がある。

その他、柳を元に薄く鋭く仕上げた「ふぐ引き」、鱧やアイナメの小骨を切断するための「骨切り」、うなぎ専用の「鰻裂き(四種ほどある)」、すし専用の「すし切り」など、その種類は非常に多い。

 

包丁の種類

伝説(荘子)では、古代中国の牛料理が得意であった「庖丁(ホウテイ)」という料理人が、包丁という言葉の起源とされる。庖は料理を意味(もしくは役職名)し、丁が人物名であったという。後に料理人のことを庖丁、庖丁人と呼ぶようになり、やがて調理道具の包丁に転じた。

我が国は千年以上、あるいは「記紀」などの記述からその遥かに前より、「刃物大国」であったという見方が可能である。

武士国家に変容していく時代には明らかに「武器輸出国」になっており、当時の先進国である中国においてさえ「日本刀」は抜きん出たブランドであった。

青銅器や鉄器などと共に、刃物類も伝わったと思われるが、当初は大陸式の諸刃だった刀剣類が、切れ味重視の片刃に転じた頃がターニングポイントであろう。

剣が日本刀に統一された時代に、和包丁の原型も完成したのでなかろうか。

初期の和包丁は「刀子」という、包丁というよりも小刀に近いものであり、上は宮廷仕様から、庶民が使う雑刀まで、この形が長く続き、出刃が出現したのは戦国期頃。現在のような形に多様化するのは江戸時代になってからである。


奉書焼き 棒燻 棒寿司 包丁
棒煮 焙烙焼き 干し鮑 乾飯
干し蝦 干し貝 星形切り 干し水母
干し海鼠 牡丹作り 牡丹鍋 骨切り
骨酢 骨煎餅 ほろほろ 法論味噌
本味 本膳 本煮 ぼんぼり



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