精霊を迎える江戸の街  

精霊を迎える江戸の街

全国的には盆に入りまして、迎え火でご先祖様を招かれてらっしゃる事でしょうけども、手前どもは7月盆ですので、亡父や祖父母とは先月すでに逢わせて戴いております。

隅田川の下流も随分と趣きが変わってまいりました。
大川端に立ち並ぶ無骨で味気の無い高層マンション群にはこの国のセレブ達がお住まいなさっているそうな。北斎に見せて現代建築家の仕事ぶりの感想を訊いてみたもんですな。月島や佃周辺には古い町並みが多く、風情を残していたんですが、今ではまるで安っぽい三文漫画の世界です。

隅田川には色々な思い出が御座いましてね、ガキの頃吾妻橋あたりから、何に夢中になったのか定かじゃありませんが、どんどん上流に向かい、荒川から入間川まで遡行して母や祖母に散々叱られた記憶などがあります。帰るに帰れなくなり、埼玉の巡査さんに泣き付いたってあんばいでして。

供養の折に、久しぶりに勝鬨橋から湾に向かい徒歩で散策してみました。
近年念仏でも唱えるように「流入する河川の環境が回復した。東京湾もキレイになった。だから江戸前の魚もずいぶん増えた」と言われます。
確かに透明度はよくなった気がいたします。
だけど東京の街並み眺めてみて、この海の魚なんぞ食う気になりますかね。
例え70年代のドブ臭い記憶の無い人でもですよ。
それに埋め立てをやめる気持ちなんぞ役人にはこれっぽっちもありません。
漁師だって跡継ぎがいないのが事実でしょうよ。お年寄りばかりで、しかもまったく商売にならない。

多摩川に鮎が来たからどうなんだっておいらは思うんですよ。
そりゃ水質改善に努力なさってる皆さんには頭が下がりますよ。少しでも後世によい環境を残そうとする行動は立派です。口だけではなく実際に地道な努力をしてます。なかなかできるもんじゃありません。


日本列島を人体に例えてみましょう。生き物ですからね国も。
東京は「脳」ですな。
そこに各種の細胞が血流に乗って流れ込む。
脳は沢山の栄養が必要だから血も沢山脳に向かう。
しかしそのままじゃパンクするんで人体には関門があります。フィルタです。
でもそいつをすり抜けてくる輩もいて、それが脳の病気を起こします。
日本ってのはどうでしょうか。どう考えても病気じゃないでしょうか脳の。
いくら首都だからってこんなに何もかもが一極集中するのは異常ですよ。

そこで、
霞ヶ関はどうせ縦割りなんだから全国に分散する。
国会は北海道と沖縄に置き交替で開けばいい。
東大は閉鎖する。
大企業は過疎県に本社を移転する。
「こんなもんでどうかな?ばあちゃん」
そう祖母に問いましたところ、こうです。


「馬鹿だねおまえは」


味も素っ気も無いアスファルトの歩道から立ち昇る熱気の中、祖母の蜃気楼を無理やり拵えてみたんですが・・・
祖母は今の東京が気に入らないのか、輪郭をはっきりと見せてくれません。


でも本当のところは祖母たちはこの地に変わらず愛着を持っており、変わってしまったのは擦れてしまったおいらなのかも知れないと、そう思います。


Posted by 魚山人 at 2007年










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