忙中閑あり、和食に寒なし  

忙中閑あり、和食に寒なし

昔の冬は半端なく寒かった気がします。
特に京都の冬は厳しかった記憶が鮮明にあります。赤切れした掌を擦りながら仕込みに入ります。冷たい氷入りの海水に入った魚貝を触らなきゃいけない。氷に塩ですから氷点下。明石あたりの小さな漁港からの直送便はデカイ樽入りですから、手を突っ込むしかないんです。気合い入れる為に思い切って氷水の中に手を浸してから仕事にかかりますが、手は感覚が無くなってました。裂けた傷は痛く、手は絆創膏だらけ、それでも若さがカバーしてくれました。

そんな関東者を気の毒に思ってくれたのか、近所に住まいを持ってる先輩が「温うせなあかんで」と言って寮に差し入れてくれた料理があります。
それは京都産の蕪で作ったふろふき。
その美味かった事。身体の芯から温まる心地でした。
その夜は明け方まで寝れなかったもんです。板前になって初めて料理が何か分かりかけて来たからです。技術だけを求めていた自分を反省もしました。

ふろふきは大根でも作りますが、蕪で作ると滋味が深く、何故か京都風になります。作り方はいたって簡単。
面取りした蕪を昆布の出汁でじっくり煮込み、
白味噌を酒と蜜で練り上げ卵黄を加えた玉味噌を作り、
その味噌を熱々の蕪に被せて、
天にはへぎ柚子を乗せて出来上がり。

ところがそのふろふきは一味違ってました。
翌日お礼と同時に先輩に尋ねました、
「酒の香りが効いてましたが・・・・」

「ああ、暖とり用の賄いやからな、酒粕使うたんや」

暖まったやろと笑う先輩板前の顔を見ながら、料理のなんたるかを思い知らされた気がして深い感動を覚えました。

酒粕の話が出たついでに、寒い冬に美味しい粕汁をさらに美味しく頂くコツを。粕で作った汁物は、仕上がり直前に酒を振り入れてみて下さい。確実に旨味が増します。

Posted by 魚山人 at 2006年










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