黄身返し  

幻の卵料理 黄身返し

秘伝【黄身返し】
なるものが日本料理に存在します。

何故秘伝かというと、昔からそういう料理が存在するらしいって話は聞いても、それを実際にお目にかかった板前が殆どいない。
挑戦してみても大体失敗する。からですね。

そもそも江戸は天明年間、『万宝料理秘密箱』なる本に書かれてまして、実際に考案されたのはもっと昔だと推測出来ます。
昔の料理人の知恵にはただ驚くばかりですわ。

地たまごの新しきを
針にて頭の方へ一寸ばかり穴をあけ
籾能糖味噌へ三日ほど漬おきて取り出し
よく水にて洗い 煎貫にすれば
中身の黄身が外へなり白身が中へ入
これを黄身返しといふ 
『万宝料理秘密箱』より

おいらもひよこのうちからこの話は聞いてましたんで、いつか作ってみたいと考えてまして、ずっと後の20代半ばにチャレンジしてみました。
書いてある通り糠みそに漬け込んだりして何回もやってみたんですがね、
成功しません。ぐちゃぐちゃですわ。
「無理なのかなぁ」って感じでしばらく放り出してました。

ちょうどその時期は栄養学に興味を持ち始めた頃でしたんで、色々本を読んでたんですが、玉子の栄養的な面を調べてますと、卵白に含まれる「アビジン」って物質が、貴重なビタミン「ビオチン」を不活性化してしまうから、生卵を食べると、このビタミンが欠乏する。従って卵白中のこのアビジンだけを破壊するタマゴ調理が栄養的に優れている。って記述に興味を惹かれました。

卵白だけ固めて、他の栄養素、酵素はそのまま・・・・
これは半熟卵がそうだ、いや和食の温度玉子(温泉玉子)がそうじゃねぇか!へぇーそうだったのかって感じ。

温度的には卵白が80度で固まり、卵黄は60~65度、この範囲内で調理をすれば卵の栄養を失くさない。

「じゃあアレも温度がポイントじゃねぇのか!」

おいらは忘れてた黄身返しに別の視点からまた挑戦してみました。
電子レンジ、コーヒーメーカー、ポット、ひよこ孵化器までペットショップで買ってきて、思いついた方法を色々試し、成功しました。

卵はビタミンCとビタミンB3(ニコチン酸)の欠落はありますが、それを除けば驚異的な栄養源です。食卓に欠かせませんが、あまりに調理に便利な面がありすぎて、加工の度合いがひどすぎますね。
ケーキを筆頭に洋菓子類全般がそうだし、和食でも厚焼き玉子等があります。美味しい物ですが、栄養が全て破壊されてますので、大量の砂糖で味を補佐してるって事を忘れてはいけません。
そういった物を食べるのは結構ですが、体内の栄養バランスが狂うのは必然ですので、栄養的な玉子料理も食べてバランスをとっていただきたい。
上に書いた理由で生卵はおすすめ出来ません。
温泉玉子と落とし玉子が理想的ですね。
蛇足ですが、卵は気泡がある面(尖がってない方)を上にして保存しましょう。

和食で使う簡易な黄身返し  文銭卵の作り方

この記事へのコメント

Posted by 魚山人 at 2006年










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