砂糖有害論を考察  

砂糖考〔1〕

 

おいらが料理の世界に入る前と後で、まったく逆転しちゃったのが砂糖に対する考え方です。

ガキの時分にゃ甘い物が大好きだったもんですわ。
わた飴やどら焼き、人工甘味料や着色料でドギツイ色した菓子やジュースにまで目が眩んだりしてましたねぇ。小遣いの無い時は、水飴舐めたり、ともかく甘いもんに餓えてました。

板前になっても最初のうちは、何も考えず上白糖の一キロ袋をガバガバ鍋に放り込んでましたね。疑問は無かった。

ある日大先輩の板前がこんな事言ったんですよ

「日本料理は吉宗公が砂糖を奨励しだした頃から狂ちゃった」

意味が分からねぇんで
「どうしてですか?」訊ねたんです
そしたら

「お前、砂糖なしの煮物食ったことあるか?」

おいら「いや、そんなもん食えませんよ」

そう答えたら

「だろうな」

「世の中、おまえみたいな料理人しかいなくなるんだろうな」

その人は高齢だったんで、それからすぐに引退して居なくなったんですが、何故かその言葉が頭から離れませんでした。

暫らくしておいらの仲間が病気で入院したんですよ、20代前半で健康そのものだってのに。郷里から親まで飛んできて、なんと危篤状態にまでなっちまった。病名は【糖尿病性ケトアシドーシス】

この時からおいらは、料理と砂糖の因果関係に関心が深まりました。

この友達はね、一日に缶コーヒーを5~6本、その他に清涼飲料水一リットルを飲んでました。毎日です。『ペットボトル症候群』だったんですよ。

人が1日に必要とする糖分は20g~40g。こいつが飲んでたドリンクを計算してみたら、一日それだけで約200g強。ドリンクだからピンときませんが、コーヒーのスティックシュガーだと、なんと100本分。

おいらは空恐ろしくなりました。自分のしてる仕事がです。
一斗鍋に上白糖を10キロぶち込んで作った料理を当たり前の様にお客に出してる世界。

その後色々考えた挙句、和食をもっと習いたくて、関西で修行する為、店をあがりました。


血液を含む体液を重くし、血圧が上昇その他、腎臓にも負担。
そんな塩のとりすぎにゃ、うるさいくらい注意を呼びかける世の中ですが
砂糖に関してはひどく寛容なのは何故なんですかね。

砂糖はたかだか数千年、広まってからでは数百年。
人間が誕生する以前の太古から生物が必要とした塩とは、重要度は比較になりません。人体の体液が海水に近いのがその証拠です。
専売制が無くなったのは、ついこないだ、2002年です。

砂糖が人体にとって異質な物である事は、血糖値が50mg/dl以下の生命に危険な低血糖状態に対する防衛機構はあるのに、180mg/dlを越える高血糖に対しては術が無いってことが語ってます。

南太平洋の島々がサトウキビの原産、その後インドに伝わり、アレキサンダー大王遠征の記録なんかにも書かれ、日本には奈良時代、鑑真が持ち込んだって説が有力です。
それ以前はどうしてたかっていいますと、平安の『延喜式』によれば葛の樹液や蜂蜜が甘味の主体でしたが、庶民には無縁の献上品でしかなかったみたいですね。塩と酢が調味の主体だった事は「塩梅」って言葉に残されています。

昨今はバイオテクノロジーが進化してるみたいでして、オリゴ糖やら、アスパルテーム、ステビア、それに果糖類。甘さだけ引き出してカロリーを抑えるって事ですが。

いっそ『塩の時代』にはならないんですかね。
おいらは良い食材さえあれば、塩だけで十分甘みを引き出せると思うんですよ。意外かも知れませんが、砂糖を生産するときも、塩を使います。

おいらは、砂糖そのものに問題があるって考えてるわけじゃありません。
病気になるくらいの使い方がおかしいと思ってるんです。

砂糖考〔2〕

曰く
食を豊かにする
子供の成長に欠かせない
スポーツに不可欠
記憶力を良くする

食育の多くのテキストに、砂糖に関して上のような文句が並んでます。
信じがたいですな。
砂糖教の新興宗教ですわ、まるで。


高等教育機関で栄養学を修めた偉い方々がこんな事を書いてるんだから、一般の人は何の疑問も抱かずにガバガバ砂糖を使うって寸法でしょうか。
食生活に注意するって心ある方は極めて少数派なのが現状でしょうね。

あと三温糖なんですが、原料はカンショ(サトウキビ)で、不純物を取り除き、何度も遠心分離した純度の高い結晶である点は上白糖と同じです。グラニュー糖や上白よりやや純度が低く、強い甘みと特有の風味があるんで、煮物なんかに適します。糖蜜を再三加熱結晶させる過程があるので「三温」といいまして、その際カラメル成分によりあの黄褐色の色になります。
基本的に上白糖と成分的な差はありません。

上白糖、黒砂糖、和三盆、白ザラ、中ザラ、グラニュー、中白糖、三温糖、角砂糖、氷砂糖、粉砂糖、顆粒状糖。
これらはカンショから。
あと、サトウダイコンから作るテンサイ糖がありますが・
精製された極めて純度の高い薬品なみの結晶である点は、全部同じことです。

冒頭に戻りますが、
人が健全に育まれ、健康な生活を送るに不可欠な栄養素は約40種。
人体内で合成出来ないので、食物から摂取する以外無いので、必須栄養素ともいいます。

必須アミノ酸
十数種のミネラル(微量には百種ちょっと)
二十近いビタミン

これらを全て含有した食品を「完全食品」といいますが、
母乳以外に存在しません。
やや完全に近い食品が、レバー(新鮮な)、貝類、卵、牛乳、です。

必須な栄養素を満たす為に、バランス良く多種の食品を「少量」ずつ食べるのが望ましく、これは別段難しいことではありません。
天然の食材を上手く取り合わせれば、別に意識しなくとも自然に摂取できます。

その場合、結論から言えば、まったく、「砂糖」を摂取する必要はどこにもありません。
砂糖の有用成分、ブドウ糖やミネラルなどは他の食品から摂る方が良く、
あとの成分は、カロリーを上昇させるだけのもので、むしろ害の方が大きい。


さらに言えば、砂糖を使用しなければ味が整わない食品=料理は、調理の根本が狂っていると考えてよいでしょう。
何故なら
食材自体の栄養素がすべて抜け去ってしまい、それは食材本来の味が無くなっているという事であり、だから砂糖や化学調味料を加えないと食べれない。そういう事です。

考えてみたら異常としか思えない料理は、和食にも沢山あります。
わざわざ、野菜の栄養素を搾り出してスカスカの状態にした挙句、栄養と一緒に去った味を補うために、砂糖で味をつける。こんな調理法はいっぱいあります。

偉い栄養学の先生が書いてる、「食育」のために、砂糖は不可欠、元気になり、頭が良くなります。なんてのを読みますと無責任さにあきれます。
そんな成分は天然食材にいくらでもあり、化学薬品の砂糖から摂らなきゃいけないって意味が理解出来ません。

砂糖考〔3〕

砂糖の事をおもに批難してきやしたが、現実に存在してる事実を、ただ批判するだけってのはおいらの性分にゃ合いません。

実際の話が、小さい頃から舌になじんだ甘味はそうそう忘れる事が出来るもんじゃねえですね。たとえ身体に良くないと分かってもです。
おいらだってそうですわ。

でも砂糖が身体に良くないってのは事実です。

おいらはね、現代人の殆どが、慢性的なストレスと疲労感を持病みたいに抱え込んでる原因は、食生活だろうと考えてます。確信を持ってます。
その大ボスが砂糖だと睨んでるんですよ。(本質的には競争社会への疲労でしょうが、ここでは食に限定して話しております)

自分の身は自分で守るしかありません。健康な体が人生の基本ですよ。
若くてピンピンの健康体の時はそんな事考えないものですが、人間、歳をとります、病気もします。そうなって初めて健康の大切さを知るってわけでしょう。

対処を考えなきゃいけなんですが、指導ってガラじゃありませんのでおいら自身を例にしてみましょう。体験談ですな。

最初に言わなきゃならないのが、糖が足りないいわゆる低血糖状態になりますと、元気がなくなり、ヘロヘロになってしまうのは事実ですが、砂糖に取り巻かれて溺れそうな世の中で、そんな心配をするのはあまりにも馬鹿げた話って事を認識しましょう。

砂糖断ちを意識した食事を始めて三ヶ月経過しますと、吃驚するほど身体が軽くなってるのを実感します。ただ動きのキレが良くなっただけでなく、ダイエットなどを狙った訳でも無いのに、腹回りの脂肪が取れて、実際体重も落ちました。

甘いのが嫌いじゃなかったおいらが、どうやって砂糖を断ったかって言うと、ただ単に、砂糖を果糖に切り替えただけです。

自然の糖は血糖値を安定させます。
どういう意味かって言うと、甘さへの異常な欲求が治まるんですよ。

純糖をとると、結果としてインシュリンが出過ぎちゃう。そいで血糖値が下がる。下がると甘いものが食べたくなる。このサイクルの繰り返し、これを断ち切らなきゃいけません。

自然の糖ってのはね、すい臓を驚かせないんですよ。
精製糖と違い、緩やかに体内に吸収されるんで、適応して代謝の安定が狂いません。おまけにその代謝を助ける栄養素も含有してます。

一番のおすすめ自然糖がメープルシロップで、おいらはこれを使ってます。
安いとは言えませんが、結果的に使用量が激減していきますんで、たいした出費の差にはならなかったですね。

グリセミック指数ってのがありまして、
摂取した時の血糖値の上昇度を示すモンなんですが。


       白砂糖 99  蜂蜜 57  白米 88


そして


       メープルシロップ54

ただアメリカ製はよくありませんね、メープルシロップって書かれてても、香料と着色料だらけの砂糖液ってシロモノが多く、そんなものは砂糖と一緒です。
添加物が入ってるのは駄目です。代表的産地のカナダケベック州の品が良いでしょう。ただカエデの樹液を煮詰めただけの品物です。

 

詳しくは
砂糖と甘味料

 

メープルシロップはちょっと・・・
そんな場合はフルクトース(果糖)がよいですよ。
甘みが強烈で、水によく溶けますので料理に使用するのに適してまして、
使用量は砂糖の半分以下ですみますし、砂糖のように急激に血糖値を上げる事もありません。安いですし。使い方によっては砂糖以下の出費で収まります。

こんな事を続けて、具体的に変化したのはね、変な話ですが、これをやる前には確かにあった口の中のネバネバ感ってんですか、なんかネチャネチャして嫌な感じの奴、あれが無くなりましたね。今じゃ市販の砂糖水みたいな缶コーヒーに口をつけますと、一口でむせ返ってしまい、とてもじゃないが飲めません。

無礼を承知ではっきり言いますと、
生物としての人間が飲むモノではありません。

Posted by 魚山人 2006年11月
この記事へのコメント


※補足

この記事を書いたのは2006年ですが、その後欧米を中心に研究が進み、「砂糖必要論」は完全に破綻しています。

今、先進国の栄養研究者のコンセンサスは、
「砂糖は有害以外の何物でもない」です。
(※日本のセンセイ方はどうなのかよく分かりませんが)

欧米で脂肪分のとりすぎが反省されるようになってから、もうずいぶん時間が経ちました。過剰な脂質の摂取はかなり改善されています。

しかし、不思議なことに肥満は減るどころかさらに増加しており、アメリカなどは男女共に人口の過半数が肥満というありさまです。

そこでボストンの研究機関が詳細に調査し直してみたところ、肥満になる人の大多数が「甘いもの」を好んで食べることが分かりました。

さらに詳しく調べると、肥満度の高い人ほどグリセミック指数が高いものを食べている事実が判明しました。

・砂糖が脳に良いは完全にウソ

一例ですが、MITのシャウス教授の研究によると、白砂糖をたくさん摂った子供たちのグループが、そうでない方に比べてIQが25%も低かったそうです。

落ち着きのなさ、集中力の欠如、記憶力の低下、短絡的で攻撃的な性向などがみられたそうで、これもやはり、明らかにグリセミックスインデックスの高さゆえだと結論したそうです。

糖尿病を招く、血糖値の激しい上下動を左右する食品のGI値は、肥満にも脳にも悪影響をおよぼしていたわけです。おそらく心臓病や主な生活習慣病にも深く関わっていることでしょう。

そして、脂肪肝の主原因は砂糖の過剰摂取であることも証明されています。(体内で果糖になり、肝臓や骨格筋にインスリン抵抗性を引き起こす)

AGEsの問題も浮上し、こうしたことがガンや老化認知症などに関係しているのもほぼ間違いないでしょう。少なくとも、血管障害との因果は明らかです。


自分は「砂糖そのもの」を攻撃する気はまったくありません。
塩分の害は異常なくらい「キャンペーン」するのに、砂糖に対しては妙に擁護的だった風潮に、情けなさや気味悪さを感じていたのです。

日本の厚生省(当時)が、ポストハーベストを「問題なし」とした不透明さに通じるものがありますね。結局「長いものには巻かれろ」みたいな国民性が背景にあるのでしょう。

 

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砂糖①
砂糖②
砂糖③
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