漬物と天然塩の話  

漬物と天然塩の話

梅干の塩分量が10%前後になってしまいましたねぇ。昔は18%~20%が普通でしたが今や減塩の世の中ですから。白菜漬けも3%くらいですか、ほとんどの漬け物が数パーセント塩分を減らしていますね、市販物は。

正直言いまして美味しくなくなりました。
塩分を減らす分、アルコールや保存料など添加物を増やす必要がありますからそれも不味い。けど一番の問題はやはり塩を減らした事でして、美味しい漬け物の条件をクリアできないんですね、ある程度の塩分がないと。

塩が足りないとどうなるか
漬け液が上がらない、野菜が締まらない、熟れない。
要するに「美味しい漬け物の条件」をみんな満たせないんですな。

こういった減塩傾向はもちろん「健康の為」なんですが、漬け物なんかのように塩分を減らした分添加物が増えたり、ナトリウム純度が極端に高い化学精製塩を使ってたんじゃ何が健康なんだか分かりませんな。

*漬け物塩には並塩や荒塩が良いです。結晶が細かく材料全体にむらなく行き渡ります。精製塩はおすすめできません。また漬け物専用塩はクエン酸や旨味成分が入っており野菜の旨味を押さえてしまう可能性があります。
*塩水を差したり焼酎を差したりするのは効果的です。

話は変わりますが、ミネラルバランスの良い天然塩は塩辛いだけの精製塩と違い、なめると丸みがあって旨いものです。それはいいとして、時々天然塩をペロリと味見して(なめてみて)、「これは良い。旨い塩だ。だから料理に使おう」なんていう料理人がいますが、ちょっくら待っておくんなさい。

天塩がいかせるのは、「刺身」や「天ぷら」です。
その理由は上の記述でお分かりになるかと思いますが、結晶が溶けてないからです。溶けてしまえば結局塩は塩、ナトリウムの塩辛さだけになるんですよ。
ですんで、なめて美味いからってそのまま料理に使ってもほとんど無意味。
塩を料理に入れるには「溶かす」からですね。

天然塩の旨味はナトリウム以外のミネラル分の味でして、もろナトリウムの精製塩からしたら「雑味」でしかありません。これらの成分ってのは塩の結晶の表面にあるものなんです。ですからペロリと味見した瞬間はミネラル分の配合いかんでは甘くすら感じたりもしますが、表面をなめているだけなんです。

調理に向いた塩は塩の大部分を占める「立法結晶」ではなく、結晶が壊れやすく溶けやすい塩で、「フレーク」という平釜で作った塩です。
*海水を平釜で煮る所謂せんごう塩の1種。
【あらしお】(荒塩)のことです。
濃度の高い海水を平釜で熱すると表面に結晶が出来ます。このガサガサの荒い塩を「あらしお」と言い、京料理で「あく引き塩」とはこれを指していました。


少し体調を崩して以来、何故か若い頃の気の短さがぶり返したような気がします。最近の記事にもイラツキが現れてしまってるような感じもします。
色々と考えてしまいますが、なんのこたぁありません。「年をとった」だけでしょう。気持ちがそれに追いついてないと言うか、認められないから色々遠回りして考えてしまうんでしょう。認めれば次の段階に移行して矍鑠たる生き方にシフトするんでしょうが、ここが一番きつい年頃なのかもしれませんなぁ。
喧騒で陰鬱な都会で残りの齢を重ねていくのでしょうか。
緑の稜線を眺めながらブナの大木の様に風に吹かれながら朽ちていく。そんな情景が頭の何処かに棲み始めているようです。

がらにもねぇのはやめて、もうじき始まる祭りで汗だくにでもなってみましょうかね。汗は多分塩の味でしょう。砂糖のように甘くはなってないはずです。まだ。

Posted by 魚山人 2008年05月02日

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