汚れた厨房  

汚れた厨房

飲食業界は「はけ口」になりやすいという事を知っておく必要があるように思います。

事例を挙げれば、

「交通事故で死ぬ人は毎年数千人(5000人前後)であるが、これによって自動車産業が世間から責られることは皆無である」

「食中毒で死ぬ人は平均すれば年間1人ないしゼロであるが、不幸にも死者を出した業者はマスコミを筆頭に世間から袋叩きにされてしまい、経営母体が無傷であることは皆無である」

消費税が増税されても利益を確保できるように配慮された大企業と、モロに影響を受けて営業が困難になりかねない食べ物屋。

ようするに、ホンネの部分では飲食業界など「ふきだまり」だとでも思っているんでしょうな。仕事や産業だとみなしていない役人の心を、実際に何度も感じたことがあります。もちろん表向きは絶対にそう言いませんけどね。

数十年来続く、「不自然なほどしつこいグルメブーム」は、もしかしたらピラミッド社会の固定化と産業の空洞化対策の一石二鳥を目論んで「上の連中」が操作してるんじゃないか、そんな疑念すら湧いてきます。


ともあれ、ややこしい事は別にしても、「目をつけられやすい業界」であることは心得ておくべきでしょう。

衛生観念ゼロのバカ写真投稿で炎上。
その騒ぎが収まる間もなく、「メニューの偽装表示」


偽装表示についてはね、正直に言うと「大昔からあること」です。
どんだけこの目で見てきたか分かりません。

大別すると二種類ありますね。
① ついつい流れでやってしまう
② 最初から意図的にやっている

②は確信犯であり、料理長も経営サイドも承知の上でやってます。
最悪であって話にならんのですが、皆さんが想像するより遥かに多く、この手の店はあるのです。

①は微妙なところで、本当に知らずにやっているケースもあれば、言い訳できないタチの悪いケースもあり、線引が難しいところがあります。

どちらにしても、「ダメ」ですな、料理人として。
「知らなかった」で済めばプロは必要ないからです。

ハッキリ言いますとね、エビの種類の言い違いなど、テレビでも大手新聞でも堂々とやっていたのをおいらは知っています。プロの料理人でさえ、「蝦」と「海老」の違いが何か分からないのが普通であって、何で素人が詳細な違いなど分かるっていうのか。

だが、「学者やマニアの分野」と「市場に流通する食材としての魚介」には明確な線引があります。後者をキチンと把握できているのがプロ。

皿洗い小僧にメニューの料理を作らせ、仕入れも任せていると言っているのと同じで、通用しません。

こうした現象は、「長年続くデフレと競争の激化」などと評論家風の理屈を付けようと思えばいくらでも付けられるでしょう。

しかしそんなもんは「ヘリクツ」でしかありません。
「人間の心」の問題ですよ。明らかにね。

だって「そんなことは出来ません」の一言でしょうに。

それならクビって言われりゃ、そんなクソ会社など辞めりゃいい。
それがなぜ出来ないのか、そこでしょう。

偽装の件は根が深いので、数年ごとに騒ぎになるし、今後も出てくるでしょう。規制が強まったとしても、単純な問題ではありませんので(例えば一つの魚に何種類もの名前があり、どれが正式和名なのか不明になっているモノもあったりする)、今後も思い出した様に騒ぎになると思います。

 

これから先、飲食業が注意すべきこと

懸念されるのは「次」です。
次は食中毒関連の騒ぎが広まる可能性がある。

「この数十年で明らかに人々の免疫機能が低下
殺菌済みの衣食住環境が当たり前になり、細菌に対する抵抗力が著しく落ちていると思われます。

「自分が子供の時はこんなモン平気だった」
これはもう通用しなくなりつつあり、またそれに逆行するように調理仕事に従事する者の意識が低下傾向。

この線がクロスしつつあります。
完全に重なると、想像したくない現象が多発するでしょう。

食中毒には様々なタイプがあり、なかには「分類不明」などという厄介なものまであります。

つまり、100%の予防策は無いのですよ。

・原因を持ち込まない(付着させない)
・増加させない(繁殖させない)
・殺菌する

できるのはこの3つ(三原則)ですが、これだけでも90%以上発生を防げます。

キチンとした板場なら、仕事が終えたら隅々まで掃除し、まな板も包丁もキレイに洗います。包丁は水気を拭き取り、まな板は立てて乾燥させておく。中には夜中に紫外線を当てておく厨房もあります。

そうやっても、翌朝まな板をセットしますと、そこは雑菌だらけであり、さらに使っていると水分を吸収してしまい、まな板から布巾から包丁まで爆発するように目に見えない小さな連中が増加していきます。

ましてや、こんなふうに清潔にしていない厨房も山にように存在し、都内の忙しい店などはあまり想像したくない様な実情でしょう。

殆どが職人というよりサラリーマンなので賃金の出ない残業などしたくはないし、店も営業優先でもって時間ギリギリまでお客を入れるから、掃除を丁寧にやる時間が無いんですな。これはカウンターなどオープンキッチンスタイルの店で顕著になります。調理場が完全に裏方にあれば、掃除の時間も取りやすい。

防御策というのは、いくらシステマティックにしても決定的な効果を得られません。人間がタッチする範囲が多い仕事ほどそうです。

「人の意識」
それを高めるしか具体策はないと思います。

意識や気持ちとは何かと言いますと、
「プロ意識」と「緊張感」です。

このどちらか片方だけじゃ駄目なんですね。
プロ意識だけならいつしか傲慢になります。
緊張だけしてしてもプロにはなれません。

いかにプロであってもこんなのは「失格」です。

いくら本焼の包丁を磨いても、こんなサビだらけのロクに掃除もしていない包丁差しをそのまま使っているのは「緊張感」がなくなっている証拠なのです。

我々の業界は、いつスケープゴートにされるか分からず、社会にフラストレーションや格差感情が広まるほどに狙われやすくなると考えておくべきです。

不満をぶつけて攻撃させやすい「弱さ」があるんですよ。人々の本音は「あれは底辺の仕事」であって、一部の持ち上げられているマスコミスターの方々を見て幻想を現実と混同してはいけません。
あくまでも本質は基盤の弱い「水商売」なのです。

だからこそ、そこをわきまえてしっかりと足元を固めておく必要があるのです。

「浮かれ騒がずコツコツとやるべきことをやる」
それしかないんだと思います。

自分の板場・厨房くらいは、ピカピカにしておきたい
いつでもそういう気持ちでありたいものです。


2013年11月05日

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