料理人の離職、飲食業の合理化(衰退)  

料理人の離職、飲食業の合理化(衰退)

・飲食の離職率約5割~なぜすぐに”あがる”のか

今時の飲食業の「働き難さ」については、過去の記事にチラホラと挿入しておるんですが、今回はニュースを引用しながら、この事をメインに考えてみようかと思います。

NHKのサイトにて、以下のようなリポートを拝見しました。
一部内容を省略・要約して引用します。

辞める若者 業種によって大きな差 (NHKーウェブ特集  11月1日)

厚生労働省は先月31日、初めて業種ごとの離職率を公表しました。
結果は6%から48%まで業種によって大きな開きがあることが分かりました。
背景には何があるのでしょうか。

「7・5・3問題」と呼ばれてきた若者の離職率は、いわゆる就職氷河期が終わった平成16年ごろから減少傾向にあります。
専門家は十分なキャリアを積まずに離職した場合、正社員としての再就職は難しいと指摘しています。
このため、厚生労働省は、離職率が高い業界に改善を促すため、先月31日、初めて業種別の離職率を公表しました。
それによりますと、3年前の平成21年に大学を卒業した若者の離職率は、

▽「教育、学習支援業」が48.8%
▽「宿泊業、飲食サービス業」が48.5%
▽「生活関連サービス業、娯楽業」が45.0%
▽「医療、福祉」が38.6%
▽「不動産業、物品賃貸業」が38.5%
▽「小売業」が35.8%
▽「サービス業」が33.9%
▽「学術研究、専門・技術サービス業」が31.7%
▽「建設業」が27.6%
▽「卸売業」が26.8%
▽「情報通信業」が25.1%
▽「運輸業、郵便業」が20.8%
▽「金融・保険業」が18.9%
▽「複合サービス事業」が16.4%
▽「製造業」が15.6%
▽電気やガスなどの「ライフライン産業」が7.4%
▽「鉱業、採石業、砂利採取業」が6.1%。

業界によって6%から48%まで大きな開きがあることが分かりました。

なぜ多くの若者が離職するのか。
離職率が48%と高かった飲食サービス業を例に見てみます。

・1年で離職した飲食業25歳の若者

おととしの春、「将来、独立できる能力が身につく」という説明にひかれて、大手居酒屋チェーンに入社しました。
都内の居酒屋に配属され、接客と配膳の仕事に当たりました。
土日や深夜の勤務が多く、給料も月に手取りでおよそ20万円だったということです。
待遇よりも予想と大きく違ったのは、自分の成長を感じられなかったことでした。
ノウハウを学ぶ研修はなく、教えられたのはアルバイトと同じマニュアルばかりだったということです。
男性は「昼夜逆転で、夕方から店にたって働き始発前に終わって家に帰るという毎日の繰り返しだった。その一方で、社員じゃなきゃできない特別なことを教えてくれているわけでもなかった」と話してくれました。
男性は自分の将来を見通せず、1年で仕事を辞め、今はアルバイトをしながら自分で会社を興そうと勉強を続けています。

飲食店の業界団体に取材すると、離職率が高い原因は「給与の低さや厳しい労働条件に加えて、研修などをする余裕がなく将来のポストも限られ、自分の将来像を描きにくいことがあるのではないか」と話しています。


・対策に乗り出した企業

こうしたなか、対策に乗り出している会社もあります。
ラーメン店や焼き肉店を全国展開する正社員およそ500人の飲食チェーンを取材しました。
この会社では、これまで新卒で就職した人のうち、3年以内に離職したのは4割、半数以上の人が辞めた年もあったということです。
そこで店舗当たりの社員を増やして残業を減らすなど、働きやすい環境を整えましたが、若手社員の離職は食い止められず、去年から新たな対策に乗り出しました。
人材育成のプランを成長が実感できるものに見直したのです。
「3年で店長」を合いことばに、身につけることを接客から店舗管理まで8段階に分けました。

この会社で働く入社2年目の男性は、今、店長から「店の経費」の内容を学んでいます。
経費は高熱費からアルバイトの求人広告費まで、50種類にわたり、いずれも店長には欠かせない知識です。
男性は仕事の合間に、店長から細かく仕事について教わったあと、3か月に1度、本社での研修に参加しています。
本社で研修の後は店長と店で実践して成長を実感できるようにします。
こうした取り組みを進めた結果、去年入社した新卒社員53人のうち、1年半で辞めたのは6人。
離職率を10%余りにまで減らすことができています。

男性は、「自分で目標を決めて、日々、それに向かって仕事をしているので、毎日、達成感があって仕事が楽しい」と話していました。

会社の研修担当者は「店長が二人三脚でマンツーマンで指導してくれるというのが一番のメリットだと思います。若手社員一人一人にきめ細かくアドバイスして、成長を感じてもらえるよう、これからも取り組んでいきたい」と話しています。

こうした状況について、専門家は「離職率が低い製造業などは一人前の技術を身につけるまで企業が時間をかけて育てていくのに対して、離職率が高い飲食業などのサービス業は入社直後から現場に出て自分で経験を積んで学ぶということが多い。このため、なかなか成長を実感できず、悩んで辞めてしまうケースが多いのではないか」と分析しています。
そのうえで「多くの若者がキャリアを積まないまま辞めてしまう状況が続くと、企業にとっては将来、中核となる人材が育たないことになるので、日本の将来にとって危機的な状況だ。企業側も若手社員の定着に努力することが重要だ」と指摘しています。

・将来像描ける仕組みを

ステップアップのための前向きな理由での離職であればよいものの、入社したあとに「話が違う」とか「こんなはずではなかった」という後ろ向きな理由での離職では、若者にとっても、企業にとっても大きな損失です。
若者の離職を減らしていけるのか。
社員が将来像を描けるような仕組み作りが、今、企業に求められていると思います。

nhk社会部 厚生労働省担当記者のリポート


トップの教育、学習とほぼ同じの48.5%という離職率もさることならが、全体的に違和感を感じるのは、このようなリポートも含め「社会全体が飲食業を完全に企業とみなしている」点です。

つまり飲食は「サービス業」というカテゴリに属する「企業」であると。

この位置づけは巨視的な統計上などからはその通りでしょう。
しかしその「括り」ですと、見逃してしまう面があるのです。

飲食業の大半は企業かも知れないが、そこで働く者を「社員」とするのはおかしい業種が多いのです。

社員を育てるのではなく、「料理人=職人」を育成する業態なのです。

歪みが生じるのは、企業が「料理人=職人」を、無理に社員と位置づけるからなのですよ。

何を言ってるのか分かり難いと思いますので、上の記事から例えます。

>店長から「店の経費」の内容を学んでいます

このケースでは2年目ということですが、実際のところ1年目からこうした「マニュアル」を教え込む会社が多く見られます。調理の仕事も数字の把握もマニュアルの一つにすぎない、同じ程度のもの。その根底にあるのは「合理主義」です。


おいらはどうしているか。

最低でも3~5年はみっちりと「料理修行」だけをさせます。
1人前に仕事をこなせるようになった者の中から「適正者」が出る。

その適正者には運営上の数字や店舗管理のノウハウを教える。
つまりね、数字などはメインではなく、あくまでも料理が先なのです。

だって、そうしなきゃ「料理人」なんてモンは育てられませんよ。

5年で料理のおおよそは把握できるが、「職人と呼べる人」になるにはやはり10年の時間は必要なんです。

1年や2年で店舗管理者・店責を育てようとするのは、まさに「企業の発想」

料理人の場合は、「離職」を後ろ向きに捉える必要はない。
ある意味で「旅立ち」なのです。「独立」や「調理長への栄転」としてね。

こうした「1人前の料理人」は、企業の社員となっても独自の「ニッチ」がある。つまり確固たる地位を獲得できうるのです。

こうした伝統を企業は「無視」しているのですな。

素人をいきなり「料理人兼運営者」に仕立てあげようとする訳です。
経費の削減、人件費の削減、そんな言葉を並べ立ててね。

早い話が「1人前の料理人」などは必要ないと、そういう事です。

そのくせ「会社としての体裁」には金を使う。

本来の飲食業には背広を着たSV(スーパバイザー)など要りません。

魚や野菜の名も知らぬ「仕入れ担当部長」なんてモンはムダなんですよ。

「経済成長神話」のもとで、こうした風潮(拡大路線)に誰も疑問を持たぬ。店舗数をいたずらに増やし、売上を倍増させた企業を成功者とみなす。

これが招くものは、間違いなく【粗製濫造】

家電業界のソニーやPanasonic、サンヨー等が苦境に陥っているそもそもの原因もこれと同じですよ。製品は粗製濫造ではないが、時代と合わない。なのに過剰投資し失敗する。

こうした事の始まりは、社員や技術者を「粗製濫造」したからなのです。
「育てる」という基本戦略を捨てたからです。

家電製品も料理や飲食品も、もうある意味で飽和状態です。
食べ物も、テレビなども、来るとこまで来て、壁に突き当たっています。

そういう時代は、「発想の転換」や「アイデア」や「デザイン」がものを言う。テレビの解像度を上げる事に意味はなく、iPhoneの斬新さに人々は流れます。

アップルの成功はね、「シンプル」によるものです。
新しいモノや、それにともなう複雑さに、現代人はウンザリしている。

ここらへんに、これからの料理が目指すべき道も見えましょう。

 

将来像を描ける飲食業とは

法人の顧客に重きをおきますと、景気の良い時には見返りが大きいのですが、そうでない時には厳しいことに相成ります。

逆に個人のお客に焦点して商いをやっております店は、そうそう景気に左右されるものではありません。

分かりやすい例を挙げますと、長く続く不景気にて、同じ高級店でありながら、料亭は軒並み苦しい財政状態に陥る傍ら、すし屋は比較的安定した売上を維持しているという事例がありますね。

これは、カウンターがメインとなるすし屋独自の事情から、「店を大きくしにくい」という点と、どうしても「個人」にターゲットを合わせざるを得ないという点があるからでしょう。

ようするに「キャパシティ」の問題ですね。
つまり無駄な過剰投資を抑えられるということ。

料亭などはそうはいきません。
信じ難いほどの「維持管理費」をかける必要があるのです。

これを回収するにはどうしたってある程度の法人客(社用族や団体客など”自腹”を切る心配がない方々)を持っていることが前提になりましょう。

こうした例が示すのは「キャパ」、「店構え」などに力点をおくべきではないということですね。

そして、ヘタに拡大を狙って「大口」への営業をかけたりしない事。まぁ、何を目指すかは十人十色であり一概に言えることではないですけどね。


一番大事なのは、「場所」と、その場所に適合した業態なのです。この二つが欠けていると、どのような店を作っても長続きしません。逆にマッチしている店は、長年にわたりコンスタントに売れるでしょう。

そのような店で、「職人を育てる」気持ちを、オーナーや店責が持ち続ける。料理を売る店に料理人がいて、その卵が居るのは当たり前なんです。

そんな店で「1人前の料理人」になるまで修行する。
それが「将来像を描ける」ってことなんだと思いますよ。


料理の業界に入って料理人になれなきゃあ、
(もしくはハンチクにしかなれなきゃ)
いったいぜんたい、「何になる」つもりなんですかね?


2012年11月04日

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